神様は間違いなく性格が悪い

 何というか書かれている内容がそう、すごい。異世界転生の小説とかで一回は見たことがあるようなものが全部詰まってるみたいな……いやほんとなんだこれ。


「えっと、なんで名前ないんですか? あと体重分かってないのは? この身体ってあなたが創ったんじゃないんですか?」

『元の名前だとその姿と合ってないからねー。なんであれ君自身が好きにすべきだと判断したからとりあえずはなしってことにしといたよ。体重に関しては、女性の体重を知るのは失礼だと思ってね。あとその身体はぼくが創ったわけじゃない。ある女性が創ったよ。最高の出来じゃって言ってたね』

「なるほど、お気遣い感謝します……じゃあ、ハイエルフって何ですか? 普通のエルフと何が違うんですか?」

『エルフの中でも滅茶苦茶長生きした個体が稀になるって感じの種族だね。この世界には君一人しかいないんじゃないかな?』

「もしこれが、他の人にばれたりしたら?」

『間違いなく面倒なことになるね☆』

「……そうですか。では、創造魔法って何ですか?」

『思い浮かべたことを、実現する魔法だね。さっき鏡が出たのもこれだね。君ができると思ったことは基本出来ると思うよ。逆に君自身がどうすればできるのか分からないことはできないね。この世界で君しか持ってない魔法だね』

「……これも他の人にばれたりしたら?」

『もちろん面倒なことになるね☆』

「…………不老不死って言葉通りの?」

『そうだね。君は老いないし死なないよー。当然これも君しかいないね』

「…………つまりは」

『ばれたら面倒なことになるね☆』


 十秒ほど沈黙する。確信した、この人、いやこの神様確実に性格が悪い。


「なんですかこれ? わたしに一生一人で過ごせとでも言いたいんですか?」

『いや、そういうわけではない。確かにそんな力を持っていると一人で生きた方が間違いなく楽だ。それでも君には、可能な限り人と交流し、その縁を大切にしてほしいんだよねー』

「そう、ですか……というかそもそも、どうして私を転生させたんですか?」


 そう聞いた時、顔が見えないのに、神様が笑ったような気がした。文章もなぜか楽しそうな雰囲気を感じた。


『君が転生することになったのは正直言ってぼくの気まぐれさ。何人か候補がいた中で偶然君が選ばれた、それだけさ。ただ、こうやって人を転生させてることにはもちろん理由がある。ぼくはヒトの可能性を知りたいんだよ。時に特別な力を与え、時に苦難な人生を与え、そういった中で生まれる可能性ってやつをね』

「なるほど、です。では、私は何かしなきゃいけないことがあるんですか?」

『君にはその人生で大切な何かを見つけてほしい。永遠の人生の中で、永遠以上の何かをね。特にこれをしなきゃいけないとかそういうのもないから、基本的には自由に生きて構わないよ。ただ、さっき言った通り、可能な限り人と交流するようにねー』

「……はい、わかりました。あ、この世界ってどういう感じの世界ですか?」

『まぁ君たちが思う定番の異世界って感じだね。中世っぽい街で、いろんな種族がいて、魔法がある。王様とかがいて、種族間の差別とか奴隷制度もあるって感じのね。ちなみに今君がいるのは、その世界でも最大級の森林だね。周囲にいくつか国があるから、好きな方に行くと良いよー』


 なんというか、優しいのか優しくないのか本当によくわからない神様だ。特に前情報とかなしで異世界に行かされたりするよりは大分優しいのかな? いやでも、厄介すぎる性質ばっかり持たされてるし……なんなんだろう、本当に。


『質問がないのなら、これでお別れになるけど、問題ないかい?』

「あ、はい、大丈夫です。えっと、ありがとうございます。たとえ気まぐれだったとしても、面倒なことになりそうな人生でも、もう一度生きることができて、本当にうれしいです」

『そうかい。ならよかった。なんであれ、ぼくのことなど気にせずに人生を楽しむといい。それじゃあね』

「はい、さようなら。これから、どうしようかな――ってあれ? また、文章変わってる? えっと、『言い忘れてたことがあった。君があることを成したとき、ご褒美がある。とは言え、狙って成し遂げられることでもないから気にせずに生きて、もらえたときに、あぁ、こんなのもあったなーって思う程度でいいよ。今度こそ最後だよ。好きに生きたまえよ』……なるほど、ご褒美ですか」


 鏡から目を離し、周囲を見渡す。変わらず一面緑色であり、どのくらい歩けば外に出れるのか見当がつかない。


「とりあえず、わたしに何ができるのか、確かめてみよう」





あとがき

 ここから本格的に異世界生活スタートです。お楽しみに。




 

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