第22話 賞金
その翌日。ニアはメリッサの宿で再び働き始めた。
僕は昨夜宿を訪れたチェノスから、ギルドにくるように伝言を受けたためギルドを訪れた。
二階のギルドマスターの部屋に通されて、そこで賞金を受け取った。
「こんなにですか?」
思わず尋ねたら、
「ギーグだけでなく、幹部の分の賞金も入っていますからね。それよりフロー君、新しくパーティーに入るつもりはありますか? ギーグを倒したという話を聞きつけた人たちから、結構な数の問い合わせがありましたよ」
という答えと、今のギルド内での僕の評価を教えてくれた。
特にレベル10前後の冒険者パーティーからの問い合わせが殺到しているとのことだ。
僕がその辺りのレベルだということは、多くの人が知っていることだから妥当といえば妥当なのかもしれない。
実際のレベルは13になるけど、十分組めるレベルだ。
「……すみませんが止めておきます」
話を聞くに、僕のことを見下していた人たちの名前もあった。
見事な掌返しだ。
レベルが低くても、それだけの腕を持っているなら使えると思われたんだろう。マジックリングもあるし。
ギルマスもそれが分かっているから、
「そうですか。また組みたくなったらシエラに相談するといい。彼女なら悪い様にはしないでしょう」
と言ってきたから、それには素直に頷いておいた。
そのお金を持って向かったのはニアと以前訪れたお店だ。
レベルが上がって身体能力も上がっているみたいだから、重さなど、振った時にしっくりくるものを探して二本の剣を購入した。
普段使う物と予備の物だ。
そして今まで使っていた予備の剣はその時売却した。
お金のない時に購入して大事に使っていた物だけど、さすがに体に合わない物を取っておいても仕方がないと思ったからだ。
他にも野営に必要な装備や備品を新調したけど、それでもまだお金は残った。
ただ何が起こるのか分からないのが冒険者稼業だ。残りは何かあってもいいように貯金することにした。
魔石を購入して取得ポイントを稼ごうかと迷ったんだけどね。
その後はもう一度ギルドに戻って、武器の使い勝手を確かめた。
一度目の来訪時は人が多くて変に注目をされたけど、二度目の時は人が減っていて静かに過ごせた。
数人鍛練所についてくる人はいたけど、素振りを三十分も続けていたら飽きたのか帰っていった。
事件が起きたのは、それから三日後のことだった。
捕まえた盗賊全てが牢屋で死んでいるのが発見されたのだ。
調査の結果自殺ということが判明したけど、これに怒った人たちがいた。
領主より派遣されてやってきた者たちだ。
その中には領主直属の騎士団長の姿もあった。
怒ったのには理由があって、盗賊たちから拠点などの情報を聞き出すことが出来なくなったからだ。
ただこれに不満を洩らす者が警備隊の人たちの中にいた。
盗賊が自殺したのは領主から派遣された者たちが取り調べをした翌日で、またその日の夜の警備は半ば追い出されるような形で、騎士団の人たちが代わりにやっていたからだ。
「まあ、残念ながら調査はここまでです。盗賊団の拠点が分からなかったのは残念ですが、頭領のギーグをはじめ主だった幹部の死も確認されているからね。生き残りがいても、すぐには活動することはないだろうね」
副隊長がメリッサのお店を訪れた時に教えてくれた。
頬がこけていたのは、ギーグとの戦いで負傷した以外にも原因がありそうだ。
顔馴染みの門番も、領主から派遣された者たちの横柄な態度には憤りを覚えているようだったからね。
僕はその話を聞いて、正直どうするか迷っていた。
実はギーグの記憶の中で、拠点の情報もあった。
ただ正確な場所は分からないのと、不確かな情報のため言うのを
何より何故僕がそんなことを知っているか聞かれると困るというのもある。
この街の警備隊の人たちは大丈夫だと思うけど、領主が派遣した者の耳に入ったら盗賊の仲間だと疑われる危険もある。
あとはギーグの記憶が本当のことなら、彼らを信用することは出来ない。
むしろ盗賊の死だって、口封じの可能性だってある。警備隊の人たちが疑っているように。
「まずは
目的の場所はライルラスの街からだと離れているから、行くなら一度ナーフの街に行く必要がある。
まさかナーフの領主も、自分の住んでいる街の近くにギーグ盗賊団の拠点があるとは夢にも思っていないだろうな。
問題はソロ活動だから体は自由になるけど、一人だと野営が大変だということだ。
ライルラス周辺なら地形も魔物の分布も分かっているから、注意すればある程度回避することが出来るから一人でも行動出来たんだよね。
それに……ニアを一人残して行くのも少し心配だ。
当の本人はメリッサたちと仲良くなっているし、大丈夫だと思っているかもしれないけど……。
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