第18話 私の青春なんじゃないかと思う。
「お会計は千三百二十円になります!」
忙しかったゴールデンウィークが去った五月の中旬、私は今日も笑顔のパン屋でアルバイトをする休日を送っていた。
バイトを初めてもう時期一ヶ月が経とうとしている。
あの日以来、私は気持ちを入れ替え学校とアルバイトを無理の無い範囲でこなす日々を送っていた。
熱を出した日はお母さんとお父さんにもこっぴどく叱られ反省した。
人間はやっぱり心と体に余裕がある状態が何よりもベストらしい。
無理せず余裕を持ってバイトに臨んだおかげでレジ打ちや商品の名前や値段、掃除のやり方も今ではなんの問題もなくできるようになり笑美さんにも表を任される事が多くなった。
ピクニック日和のゴールデンウィークには限定の『ピクニックセット』と言う商品を販売して、インスタグラムでも大々的に告知したおかげも相まって店はかなり繁盛していた。
インスタのフォロワーもこの一ヶ月でかなり伸びて来ていて『笑顔のパン屋』の名前が少しずつ広まる様になって来た。
再来週には地方テレビの取材もあるらしく、この店は開店2ヶ月にして「かなり繁盛した!」と笑美さんは喜んでいた。
また私は今週から二週間に一回土日にこの店に住み込みで朝から働く事にした。
笑美さんは「そこまでしなくて良い」と言ったが、私からすれば朝早く起きて電車でこの店に来る方が身体的にきつかったので、何とか親と笑美さんに交渉して二週間に一回土日で住み込みでバイトをする事になった。
気持ちを切り替えて以降、『働く事』がどう言う事なのか少しだけ分かって来た気がする。
この店ではお客さんとの接客が大切で、一人一人の目や声を聞きながらコミュニケーションをとる。
笑美さんに比べれば私の手はまだまだゆっくりだし、出来ない事の方が多いが、それでもこの一ヶ月で私も『笑顔のパン屋』の従業員として、そして人としても少しは成長できた気がする。
比奈や尚にも「最近美心、少し明るくなった?」と聞かれ、ましてやあの健斗にも「寝不足治ったのか?顔色いいじゃん?」と言われる様になった。
学校とアルバイトの日々、ぶっちゃけ高校生みたいな青春を送っている訳では無いが今この時間が私の青春なんじゃないかと思う。
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