第17話 それでいいんだ 後編

私は死ぬほど焦っていて、自分を追い込めば、変わることができると信じていた。

焦って、追い詰めて、変わりたいと思って飛び込んだこの場所でも私はいつもと同じ様に必死でもがいているだけだった。

『運命』という言葉は便利で、みんな自分に都合のいい時ばかりこの言葉を使って自分の人生を肯定する。

嬉しいことも悲しいことも、逃げてしまった事も、踏み出した事もその全てが本当の『運命』という物ではないのか?。

都合のいいことばかりを信じるのはただの傲慢だ。

そして私の『運命』もまた傲慢さの果てに何もないまま朽ちていく・・・

嫌だ、全部受け入れるんだ、これから始まる全てを辛くても不安でも逃げたくても受け入れるんだ。

目の前に私を信じて手を差し出してくれる人がいる。

私の心の中を知って、それでも「大丈夫」って言ってくれる人がいる。

ゆっくりでも遅くても良い少しずつ私は進んでいくんだ、

良い事も悪い事も乗り越え受け止めて『運命』を変えていくんだ。

「笑美さんごめんなさい、迷惑をかけました。もう無理はしません、少しずつ『笑顔のパン屋』の店員として

胸を張れるように頑張りたいです。

だからこれからもよろしくお願いします」

「うん!こちらこそ改めてよろしくお願いします!」

車の中から流れる音楽は相変わらず平成の懐メロで流行りの曲が流れる気配は微塵もない。

でもそれで良い、どんな音楽を聴くかそれを決めるのは誰でもない自分なんだから。

私と笑美さんは元気よく曲の歌詞をを口ずさむ。

気づいたら体のだるさや熱っぽさは薄れていて、涙と一緒に私の中から消えていったのだろう。

 

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