第13話 モテないって

「やばい寝坊!」

私は鳴りっぱなしのスマホのアラームをなんとか止め時間を確認する。

いつもより四十分以上も寝過ごしてしまった。

急いで階段を降りリビングに向かう、テーブルに置いてある朝食にはラップがかかっていて、お父さんもお母さんも

仕事に行ってしまい家には誰もいない。

都会とは違って電車の本数は少ない、次の三十分後に来る電車に乗り遅れれば、私は学校に確定で遅刻する。

急いで必要最低限の身支度を済まして、家を出る。

疲れが溜まっているという実感は自分が一番理解している。

バイトを始めて早々に一週間が過ぎようとしていて、

早く色々覚えたいあまり今週は火水木と三日間連続で放課後に二十時過ぎまでバイトをしていた。

笑美さんには「そんなに頑張らなくて大丈夫」と何度も言われたが私はそんな言葉そっちのけで遅くまで『笑顔のパン屋で』働いていた。

そのおかげでレジ打ちや商品の種類や値段を覚えるなど

基本的な事は少しだけ分かる様になった。

始めてお客さんの前でレジ打ちをした先週の日曜日はテンパリすぎてまともにできなったりして笑美さんにもお客さんにも迷惑をかけた。

それが嫌だったのか自分でもこの一週間心にプレシャーがかかっていて上手く眠りにつけなかった。

笑美さんは優しく「ゆっくりでいいよと」と言ってくれるがやっと自分の意志で見つけた『やりたいこと』すらも上手にいかないのが嫌で嫌でたまらなかった。

「美心じゃん?」

なんとか乗り遅れることなく学校の最寄りについて安堵していたその時後ろから健斗に声をかけられびくりとする。

「健斗?珍しい・・朝練は?」

「今日朝練ない日でさ、朝ぐだぐだ寝てたら結構ギリギリでやばくてさ」

健斗とは同じロッカー掃除なってから学校でちょくちょく目を合わせたり軽く言葉を交わす様になった。

去年告白される前ほど、アクティブなわけではないがいつも健斗から私に声をかけてくる。

「美心が遅刻ギリギリなんて珍しいな、お前だいぶ几帳面だし」

「色々あって、あんまり眠れてなくて・・・」

バイトの事とかあんまり深く話して詮索されるのは少し面倒だ。

『笑顔のパン屋』で働き出した事は比奈と尚くらいにしか伝えていない。

二人は私がバイトしてる事を家族と同様にびっくりしていて「今度買いにいくから!」とか言っていたが正直、まだレジ打ちも正確にできない情けない姿を見られるのは嫌だった。

「彼氏と深夜まで電話してるとか?・・」

「は?ちょっと変な事言わないでよ、彼氏なんていないから」

「なんだよいないのかよー美心可愛いからモテそうだしさ」

変わってない、健斗はサッカー部なだけあってそこそこ陽気なやつだ、周りの女子からだって一目置かれる存在なのは間違い無い。

むしろ健斗の方がモテるはずだ・・なのに人を揶揄ったような発言を気楽に言ってくる。変わってない。

「前にも言ったけど私モテないし好きな人もいないから。信号変わるよ、もたもた歩いてたら普通に間に合わないよ」

私はそう言って、一人横断歩道を早歩きで渡る。

健斗は何か言いたそうにしていたが、黙り込み、私と一定の距離を保ちながら学校まで向かった。

今日は金曜日でバイトは無い、帰ってゆっくり休めば大丈夫、そう自分にいい聞かせて学校への坂道を登る。















   

   




 


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