第11話 初仕事は突然に

一だというのに店内には沢山のパンが並べられていた。

クリームパン、メロンパン、塩パン、クロワッサン、食パン

定番のパンに加えコロッケパンなどの惣菜パンも何種類か並んでいた。

店内をしっかり見るのはこれが初めてで驚いた。

この店の広さにここまでの多くのパンが、それも一人で・・

「これ笑美さんが一人で朝から・・・」

「うん、前日に結構仕込みをするから、朝は焼くほうがメインけどね」

「それでも一人でこの量を・・」

その時、店に老夫婦が訪れる。

笑美さんはすかさず「いらっしゃいませ」と言ってレジ前につく。

「美心ちゃんは、一旦店の奥で自由に見学してて!」

今の私には何もできない、おとなしく店の奥に留まり、パン屋の様子を眺める。

笑美さんの接客は丁寧だった。丁寧な接客なんて当たり前だろと思うが、ただ丁寧なわけじゃ無い。

老夫婦がレジに持ってきたパンを袋に詰めながら。

「今日は暖かいですよね」「あ、そうなんですか! ありがとうございます!」など相手の目を見ながらたわいもないコミニケーションをとっていた。

笑美さんは綺麗な容姿をしているから笑顔がとても綺麗に見える。

まるで笑顔を伝染させていくように店の空気ができていく。

老夫婦が店に訪れたのをきっかけにお客さんがどんどん訪れていく。

このパン屋にはモーニングサービスとして開店から二時間は

通常よりパンが安かったり、ドリンクを一杯無料でもらえるサービスを行なっている。

店内に貼られた大きな張り紙にもわかりやすく掲示してあった。

笑美さんはパンを買うお客さん一人、一人に笑顔を絶やす事なく見せる、その姿は店の奥でただ眺めている私にもとても大きなものに感じた。

開店から一時間もしないうちに店内は混み始めた、パンも早々に売れ始め、残り数個のパンもチラチラと目に映る。

笑美さんは店の様子を見ながら、工房に戻り、タイマーをセットして大きなオーブンを動かす。

「美心ちゃん!頼み事があって、あのオーブンのタイマーが止まったら中から焼けたパンを取り出して欲しい!思ってたよりも混んできちゃって」

「は、はい!」

笑美さんは私に軽く説明をしてレジに急いで戻っていった。

急な頼みで不安なのかそれとも興奮なのか私の心臓は高鳴っていた。

笑美さんに言われた通り、手を洗ったり、帽子やエプロンをつける。

もう時期タイマーが鳴るのは分かっていた急いで取り出す準備をする。

チラッとレジの方を見るが、店内はまだ少し混雑している。

忙しい中でも笑顔を絶やさない笑美さんを見て私も負けじと自分に与えられた初仕事をこなす。

オーブンから取り出したメロンパンはとても綺麗な焼き色と甘い香りがして、見ただけでよだれが垂れそうだった。


タミングを見計らって笑美さんが取り出したメロンパンを見に来る。

「ありがとう!美心ちゃん!・・それで他にも頼んでいい?」

「はい!なんでもやります」

次々と来る笑美さんの指示に従い私は仕事をする。

ただ何も考えずひたすらと目の前にあるパンと向き合った時間をすごした。















   

   




 


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