第2話 私の名前
私は長野県の上田に住んでいる。
長野県自体田舎で何もないイメージが強いが上田はあの有名な『上田城』があり長野県の中では名所な方でそこそこ栄えている街だと思う。
電車に乗って少し移動すれば隣の市にある大きいショッピングモールにもいくことも出来る。
そんな不便でも便利でもない中途半端な街を眺めながら毎日15分自転車を漕いで最寄り駅に向かう。
「花澤美心」高校2年生 誕生日1月12日。
兄弟はいない完全な一人っ子。これが私の基本ステータス、それ以外は特に何もない。
一つ言うことがあるなら・・・私の名前は田舎を飛び出て東京で人気女優として活躍していてもおかしくないくらい綺麗な名前だと言うこと。
「美しい心を持って生きて欲しい」私の父と母はそんな純粋な思いで私にこの名前を与えた。
「美しい心?」そんな綺麗な気持ちで生きるなんて到底できない、毎日やりたいことも、生き甲斐も特に何も感じない。
「好きなアーティスト?好きなコスメやブランドは?」と聞かれるといつも流行しているモノの名前を出して逃げてしまう。
私には「自己」、国語の先生が言っていた現代で言うとこの
『アイデンティティー』と言う物が欠落している。
周りや流行りに流され意思がない、お手本のように今の現代社会の欠点を存分に詰め込まれ生まれてきたのが私だ。
父と母はどちらも会社や周りの人からの人望が厚いようで「沢山の人と友達になりなさい」と小さな頃から無自覚に私にプレッシャーをかけてきていた。
もしかしたらそれが呪いとなって今の私ができてしまったのかもしれない。
まあそんな理由探しなんて死ぬほど頭の中でやってきた、今更考えたって私の気持ちは一ミリもずれないと思う。
まだ私は自分の名前を嫌いだと思うには達してしない、でもいつか「美心」この名がコンプレックスになる日もそう遠くない。
駅につき後数分で来る電車をホームの真ん中で待つ。
イヤホンを耳につけ、取り敢えず流行ってる曲をまとめたプレイリストを再生する。
二日連続シャッフルで最初に流れる曲が同じだった、まるで同じ毎日を惰性で過ごす私を体現しているように感じため息が出る。
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