弁当箱

飛鳥部あかり

弁当箱



俺は花奈かなを屋上に呼び出した。


「花奈……好きです!!俺と付き合ってください!!!」

「……え?」

「俺さ、昔、花奈の誕生日に弁当箱あげただろ?……それを使ってくれているのが凄く嬉しくて……。なんて健気なんだ……!!」


花奈は戸惑ったように辺りを見渡す。


「……あ、あの……ごっ」

「あ、もし断られたら、俺ここから飛び降りるから」

「えっ!?」

「さあ、選んで。断るか、俺が死ぬか」

「ぅ……ぅえ?」

「さあ!選んで!!」

「……じゃ、じゃあ……付き合います……」

「……!!よっしゃーーー!!花奈って結構物好きなんだね~」

「あ、あはは……」




付き合い始めて一週間後。

俺は花奈にあるお願いをした。


「花奈、明日俺にさ弁当作ってきてよ!!」

「え……どうしても?」

「うん!どうしても!!……じゃないと俺飛び降りるよ」

「……はい!わかりました!!作ってくるから!!」



次の日。


「こ、これ……」

「うおおおおおおお!!!ありがとう!!これで俺は生きられる……!!」


花奈は苦笑いをして俺から離れていった。

俺はわくわくしながら可愛らしい水色の弁当箱を開けた。


なんとそこには、黄色い弁当箱が入っていた。


「あれ?」


黄色い弁当箱の蓋も開ける。

そこには、また別の弁当箱が。


もしかして、弁当箱のマトリョーシカ!?


そこから何個も何個も弁当箱を開けた。

そして、最後と思われる小さい弁当箱を開けると……


「マジか」


可愛らしいたこさんウィンナーがひとつ入っていた。

俺は箸でつかんで口の中に入れる。

うん。ただのウィンナーだ。


俺は弁当箱を洗って帰すという脳はなかったので俺はそのまま花奈に返した。


「あのさ、なんで弁当箱でマトリョーシカしてるの?」

「え、嫌……だったかな?」

「うん!もっと内容濃いご飯が食べたい!!」

「えっと、ごめんね?」

「明日もよろしくね!!」

「え?」




次の日。


「これ」

「ありがと」


俺はピンク色の弁当箱を開ける。

……もう一つ弁当箱が入っていた。

もう一つも開けてみる。

……まだ、弁当箱が入っている。

………デジャヴ。


最後の弁当箱を開けると、次は卵焼きが二個入っていた。

少し形は崩れているけれども、手づくりらしくて俺は急いで口に入れた。


「……まっずぅ……」


臭い・不味い・謎のとろみ・べたつく甘さ……。

そして、大量の弁当箱……。


俺は弁当箱を持って花奈に近づいた。


「花奈」

「な、なに?」

「別れよ」

「……!!!ほんとに!!」

「うん。……一応聞くけどさ、なんで弁当箱多いの?」

「えっと、たくさんあって選べなかったから、全部使っちゃえって……」

「ふーん。まあ、別れよう」

「うん!!」




弁当箱をめぐって、俺と花奈は付き合い、別れた。

ちなみに、花奈は俺があげた弁当箱を使ってくれていたわけではなくて似たやつをただ持っていただけだったらしい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

弁当箱 飛鳥部あかり @asukabe

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ