実行者と名乗る者。

「黄昏時に見られる、紫と赤のグラデーションを水彩画ならではの、唯人クンならではの画風で描かれた絵なのでス。それを背景として、手前に落ちていく男子校生を写し出していまス。そして、その絵の最大の魅力といえば、空を描いているのにも関わらず、水中のように感じることで……」

「ふぅーん」


ベンチに座ると、稲荷はどんな絵なのか問いたが、藍の説明が面倒くさくなってきたので早々に切った。


「それで、さっきなに話してたの?」


喧嘩にならないように、と唯人から無理やり2人の間に座らせられていた。


「急に唯人くんから「来い」って言われたのですヨ。わたくし、告白かと思って、どうやって断ろうと考えていたら、まさか「そろそろ警察沙汰だぞ」って……酷いですよネ」

「いや馬鹿か。しかも断るって……。残念だったな近藤」

「は?好きとか思われてても気持ち悪いわけだし」


藍も唯人も外側を向いて拗ねている。


「私が嫌われてるみたいだからやめてくれる?依頼キャンセルさせたって良いんだからな」


最終奥義・稲荷からの依頼キャンセルを繰り出すと、唯人も流石に堪忍したようでぐっ、と声を出した。

すると、不服そうな顔をしていた藍が、コロっと表情を変えて、はーと言う。


「わたくしは、実行犯なのですヨ」

「は?実行犯?」

「実行犯っていうか……指示役でも主犯でもないってことでス」


真顔で言うものだから、近藤はゾッとした。

それから、一つ思いたつ。


「お前1人の犯行じゃないのか?もしかして、この前、呼んでた……」

「この前?昨日の放課後の……ああ、そうでしたネ。彼女からの依頼を受けていたのでス。まあ、わたくしも彼女の意見に大賛成したからなのですけどネ」

「おい藍‼︎いますぐ教えろ。そいつの名前‼︎‼︎」

「それはできませン。守秘義務がありますのデ」

「なんだよそれ」


稲荷を間に挟みながらもこの攻防。

稲荷は呆れながら立つ。


「そんなにイチャイチャしたいんだったら私を巻き込まないでくれる?」


腕を組み、仁王立ちで構えている。

身長も高いのに睨んでいるので、よっぽど怖かったのだろう。

藍と唯人がバツが悪そうに視線を外す。


「別に、イチャイチャしたいわけじゃないんですけど。それに、彼女の考えに賛成したからといって、唯人くんを認めたという意味じゃあありません」

「は?お前……。どう言うことだよ」


語尾のカタコト感を無くした藍に戸惑いながらも尋ねた唯人。


「わたくしだって普通の人間なのですよ」

「それってどういうーー」

「ああ、それから。わたくしもコンクールに絵を出すので。言わないのは卑怯でしょうからね」

「はぁ?」












「ーーーそれでは」

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