第12話 一蓮托生:総理は、前線に立つ

「ベイグン・・・何?」


 マーカスは顔をしかめながら問い返した。


「トモダチ・・・援軍は来ないということです。孤立無援こりつむえん


 そう言いながら、トマホークの残弾を放ち、シールドに迫る敵を牽制けんせいする。しかし、敵軍の数は、その反撃力を上回って肉薄してきた。


「ああ・・・だめだ、もうすくシールドが破られる」


 バヌスがおろおろしながら言う。グロリアがその背中を強く叩いた。


「腹をくくりな、死ぬとしても、戦って死ぬんだよ」


 大柄な女聖騎士が、剣を抜き放った。陽光を受けて、その剣が一瞬輝きを放つ。


「もちろんだとも!」


 マーカスも剣を構え、正面を向く。


 それを見た藤田は、また目頭が熱くなる思いだった。最近涙もろくなったのは、歳のせいだろうか・・・


 若者を死地に追いやり、自らはぬくぬくとするような政治家にはなるまい・・・政治家としての汚れなき若いころの理想を、彼は思い出していた。


 有事には、自らも前線に立つ、と。


「この状況を覆すには、敵の本陣に乗り込み、大将の首を取るしかありません―――――すなわち、魔王のもとへ乗り込み、討ち取るのです」


 藤田は、強い決意に満ちて言った。


 グロリアは、いぶかしげに藤田を見た。


「数万の敵の大軍が目の前にいるのに、どうやってそれができるの?」


「できます、恐らく・・・」


「恐らく?」


 グロリアはあきれたようにつぶやく。その腕に、マーカスが触れた。


「やろう、どのみち、ソーリに賭けるしかない」


 マーカスが力強く言い、仲間たちを見る。バヌスも、カールゲンもうなずき、最後にグロリアも渋々うなずいた。


 藤田は、苦笑を浮かべた。


「私の国では、こういう状況を『一蓮托生いちれんたくしょう』と言いますが・・・悪い気はしないですね」


 藤田健一――――64歳にして、青春真っ盛りの気分だった、命がけの青春ではあるが・・・


「では、みなさん。準備はいいですか?」


 藤田の呼びかけに、仲間たちはめいめいに戦いの態勢をとった。


 巨人の投げた岩がシールドに当たり、ついにシールドは崩壊した。それを、合図とした。


「試作品の極超音速ごくちょうおんそくミサイルで敵巨人を攻撃。H3ロケットを兵器に転用、通常弾頭を乗せて敵本陣に打ち込むこと」


 どれだけ実現するか不透明だったが、藤田は全てを賭ける覚悟で言った。


「さらに、特戦群とくせんぐんの出動を要請します。我々、勇者たちが魔王の元にたどり着けるよう援護、第一空挺団くうていだんに側面支援を依頼!」


 それらの言霊は、ただちに実現された。

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