第12話
前書き
いつもお読みいただきありがとうございます。
適当に書いていたら、内容と作品名の乖離が看過できないレベルになりました。
そのため、改題しました。
記念に書きすぎたストックを1話のみ残してすべて吐き出します。
応援いただけると嬉しいです。
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「ただいま」
「おかえりなさい」
始業式と入学式があった日。新入生は案内だけだったようで、しろちゃんは先に帰宅していた。可愛い女の子にお帰りって言われるシチュエーション、あまり心臓に良くない。挨拶は大事だから惰性でするけど、返事をされたのはいつぶりだろう。今までは一緒に出掛ける以外は部屋でゴロゴロしてたけど、学校が始まったから、今後はこういうことが増えるのかもしれない。
「おにいさま、お話しませんか」
「うん、いいよ」
しろちゃんがこうやって声をかけてくることは多い。最初のほうは身構えていたけれど、話の内容は世間話とか、しろちゃんのことを教えてくれたり、逆に僕について聞かれたり。
「中学校から仲のいい子と一緒のクラスだったんです」
「へぇ、僕も友達と同じクラスだったんだよね」
「えっ」
お、これは僕に友達がいないと思っていたな。一人だけの友だから大きく違うこともないけど。
「その……」
「友達いないと思ってた?」
「友人の話を全く聞きませんし、春休みに遊びにもいきませんから」
まぁ、確かに一般に想像する友人関係とは異なるかもしれない。あれ、千尋のこと友達と思っているけど、僕だけだったりする?
「でもほら、ここ先輩……本屋にいた人ね」
「先輩は友達にカウントしてもいいものか悩みます」
「うーん、たしかに」
「その先輩とはどのような関係なのですか?」
なんてことのないような声で聴いてくるけど、顔を合わせて女性との関係を問いただされているという状況だけで緊張してくる。やましいことがあるわけじゃない、でもここ先輩との関係をどのように形容すればいいものか。
「よくわかんないけど、一人で昼ごはん食べてたらいつの間にか増えてたんだよね」
「妖精か何かなんですか」
というか、一人でご飯食べてたんですね。小声で言った言葉は聞こえなかったことにしてあげよう。いや、かわいい義妹は変な子だけどそんな事実を突きつけてくる子じゃないから、きっと僕の気のせいだ。
「ははは、本人に言ったら喜ぶかな」
「言ったのは私ですが、それで喜ぶ女性はあまりいないと思います」
それには同意するけれど、ここ先輩ならもしかしたらと思ってしまう自分がいる。ギリギリ失礼か?
「おにいさま、登校なんですけど」
「うん」
「一緒のクラスになった友人が、この家が近くだそうで」
あぁ、なるほど。その友達と一緒に登校したいから、おにいさまは一人で登校してくださいということか。世の妹は兄を友人と接触させることを嫌うという情報を僕は得ている、これで今日から気を遣える兄になるんだ。
「じゃあ僕は一人で―――」
「一緒に登校してもいいですか?」
「……僕は兄に向いてないかもしれない」
「では、今日から私が姉ということにでもしますか」
何度同じ過ちを繰り返すのだろう。人に気を遣うなんて僕には向いていないのだから、慣れないことをするべきじゃないと知っていたはずなのに。
「それでおねえさま、それはちょっとお断りしようかと」
「やはりそうでしたか、友達には申し訳ないですけど、断っておきますね」
「なんでそうなるの」
ここに新たに生誕したしろおねえさまは、なんと中学校の友人より僕を優先しようとしている。いくら新しくできた家族と仲良くすることを重要視しているとはいえ、大事であろう友人と仲良くすることを優先してほしい。なんか僕が悪いことしてる気分になる。
「光くん、私より早くは起きないじゃないですか」
「まぁ、うん」
姉のロールプレイが思ったより楽しいのか、慣れない呼び方をしてくる。最近は早く起きる、というか起こされて朝食をみんなで食べるのが日課になっていた。起こしてくれる人はその日によってまちまち。みやみやさんが多くて、次点でしろちゃん。ごくまれに父が起こしに来ることもある。どういう法則になっているんだろう。
「家に光くんを置いて先に出るのも心配ですし、それなら一緒に登校するしかないので」
「ぐう」
「ぐうの音は出ましたね」
「そんな心配してもらわなくてもいいんだけど、毎日起こされていたら説得力もないから」
一人の時は、ギリギリに起きても頑張って学校に行っていたが、人型の目覚ましに慣れてしまってる今どうなるかは自分でもわからない。その友達と一緒に登校するか、マジめっちゃ頑張ってしろちゃんより早く起きるか、天秤にかけてみてもどちらを取るか悩ましい。
「私としてはどちらでも構いませんが、私より早く起きたら起こしてほしいです」
「しろちゃんを?別にいつも一人で起きてるじゃん」
「おかあさんに起こしてもらっているんです。そろそろ母に起こしてもらうのが恥ずかしくなってくるころ合いかな、と」
別にそれ恥ずかしいわけじゃないじゃん。恐らく義兄に起こされる、というシチュエーションに興味があるのだろうけど、その願いは叶えられそうにない。
「それは無理かな、起きれないし。その子一緒に登校しようか」
「わかりました、では迎えに来てもらいますね」
「ちなみに、どんな子なの?」
「静かな子なので、気が合うと思いますよ」
しろちゃんもどちらかというと静かなほうだし、なんというか納得できる。
「でも、なんていうか」
すごく歯切れが悪そうに、しろちゃんが口を開く。
「一般に言われる、変な人の特徴を備えています」
「そんな遠回しに言ってもつまりは、変な人なんだね」
安心してほしい。変な人のほうが仲良くできるから。
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