第11話 一日。一日。
陸人
まだまだ暑いなぁー。
九月下旬になるのにまだ猛暑日とか言っちゃって。
コンクリートからの放射熱で倒れそうになるほどに蒸し暑く、逃げ場がない。
今週末くらいに来ると言っていた台風でもうそろそろ暑さを持っていって欲しいところだ。
外回りの仕事をしてる時に、照の学校の近くを通る。
運動場の土が反射し目を細め、なんだか賑やかで黄色い声に口角を上げた。
部活かなー?大会かな?って思って少し寄り道を。
【第62回 体育大会】
そんな看板が立っていた。
たくさんテントが張ってあって、今、まさに閉会したのか生徒が楽しそうに校舎へと入っていっていたのだ。
……え?体育大会……?
え、聞いてないけど、?
今日は……、、、体調悪いって……、、
……あぁ、嘘か。今日きたくなかったから。
俺は沢山あった仕事を見ないふりをして、家へ帰った。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
家に帰れば顔色のいい照がいて、すっげぇ腹が立った。
俺が問ただせば、ばつ悪そうに逃げていく。
……逃がすかよ、
俺は照の手を握り強く引っ張った。
「なぁ、なんで言わなかったんだよ、」
「…………元々行くつもり無かったし。」
「なんでだよ、体育大会なんて年に1回しかないんだよ?高校生活だって3回しかないんだよ?」
「……」
そう言っても照は下を向いたまま何も言わなかった。
「ねぇ、照、なんで黙ってたの?」
「…………体育大会出たところで、何ができんの?」
「何って……応援とかさ、 、」
「誰の応援すんの?」
低い声で珍しく俺に反抗した言葉はさらに続いた。
「休みがちで、馴染めてない俺がクラスのやつ応援するの?」
「それは……」
「行って何が楽しいの?」
「みんなで行ってさ、お弁当とか作って食べて、」
「体育大会じゃなくてもいいでしょ。また4人で行けば、」
「……」
「…………”惨め”なんだよ。」
吐き捨てるようにそう言うと、照は思いっきり手を振り払って部屋に消えていった。
「惨め、か……、」
樹が腕を組んで少し笑いながらそう言った。
その言葉に足を取られ俺は追いかけられなかった。
「でも……行きたかったよ、俺……。だって来年は入院してるかもしれないじゃん、もしかしたら3年になっても体調悪いかもしれないじゃん、、」
「……パパ……きっとね、当事者は……一日一日が……必死なんだよ。」
亮平が涙目になりながら俺の服を握った。
「………必死なんだよ。」
当たり前に参加するもんだろって言う俺になんもわかってないよパパは。
とばかりに言葉を続けた。
「…………みんなと…同じことが出来ないだけで……人生終わった気がするんだよ……。」
陽翔に反抗期とやらは無く、いつでも従順でYESマン。
そんなはるが若干の敵意を俺に向けて、
「……ごめんね、言い過ぎちゃった、……照の所行ってくるね、」
と言って去っていった。
この雰囲気に似つかわしくないバライティ番組が空気を読まずに騒ぎ立てる声だけ響く。
俺は立ち尽くし、樹は腕を組んで下を向いたまま動かぬ時間が長く続いた。
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