第9話 ビッグイベント
照
「ただいま」
あの後、大量の薬をもらい、俺は家に帰った。
玄関まで良い匂いが届いていて、お腹がぐるぐると動き出す。
あぁ今日は何かの煮物かな?
そう思いながらリビングへ入った。
「あ、照!おかえり!」
「ただいまあ」
「あ、照、帰ってたんだ、どうだった?」
「あぁ、まぁ普通かな、」
「普通ってなんだよ。笑 どうだったの悪くなってなかった?」
「まあね。」
俺は適当にあしらって、自分の部屋へと行った。
たくさんの薬を机に置いて、制服をハンガーラックにかけ振り向いたとき、
「照……」
はるくんが立っていた。
「びっくりした…、何?どうしたの?」
「ほんとに悪くなってなかった……?」
心配そうに、はるくんは俺に聞いてきた。
はるくんは元々心配性で、俺が体調が悪くなると、決まって心の不調が現れる。
ママが死んでしまって、人の死と言うものを、極端に恐れるようになったんだ。
幼い頃から入院している俺にとって、死というものは結構身近に感じてきた。
昨日までベッドの横にいた友達が、朝には亡くなっていることも珍しくなかった。
単刀直入に言うと、人の死と言うものに慣れてしまっているんだ。
……でもはるくんは違う。
ママの死しか経験したことがなくて、
そして、ママを殺したのは自分だと思っているから。
死と言うものに過敏に反応するんだ。
「嘘じゃないよ?悪くなんてなってない。まぁ、発作は起きちゃうこともあるけど、いつも通りだからね?笑」
不安にさせないように、俺は……また嘘をついた。
「……そっか。よかった。」
はるくんは肩を撫で下ろした。
「……ごめんね?笑 どうしても不安になっちゃって……。」
「んーん。ありがとう。」
「じゃぁご飯食べよっか!もう用意できてるから!」
「わかった。すぐ行くね?」
そう言うとはるくんは先にリビングに行った。
俺はぼーっと、さっきおいた薬の袋を見つめて、
「……嘘ついてごめん。」
そうつぶやいて、俺はリビングへ向かった。
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今日も寝不足のまま登校して教室に行く。
もう9月になると言うのに、まだまだ暑さが残っていて、体にじっとした汗が流れる。
幼い頃から、ずっと冷暖房完備の病院にいた俺にとって、極端には、暑い日と寒い日は苦手だ。
そして、もうすぐビックイベントが待ち受けていて、
それに向けて、みんなは大盛り上がり。
そのビックイベントは、体育大会と呼ばれる、各々の身体機能を見せびらかす一日。
俺には、生まれた時から無縁であり、今後も縁を結ぶ事は無いとおもう。
自分に関係のないイベントを決めるために話し合う時間なんてつまらないのなんの。
クラスのリーダーが楽しそうに、黒板の前に立って、仕切りながらみんなの意見を聞いていた。
「次の人ー、ひかる……あ、…悪い悪い、じゃ次ー」
急に意見を求められ、今までの話を聞いていた感じ、B案いいんじゃないかなぁと思っていた俺。
B案のびの字も言わせてもらえず、次の人への順番となった。
…………聞きもしないのかよ。
心の中で、そのリーダーに突っ込んで、俺は窓の外を見た。
いつの間にか、そんな話し合いもおわり、みんなは準備に取り掛かかる。
俺は…と言うと、蛙の外で、ただ席についてぼーっとしとくだけだった。
授業中じゃなかったら、保健室に行きたかったところだ。
「ひっかるーぅー!」
「何」
京介が横に来て、何か高いテンションで絡んでくる虫の居所が悪い俺はちょっと迷惑で冷たく返してしまった。
「……ひかるが悪い訳じゃないんだからさ!」
さっきよっぽど顔に出ていたのか、京介がわかりやすく慰めてくれた。
「……別に気にしてねえよ。」
俺は、大見得を張って、もう一度外を見た。
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