第5話 高校生活


朝からうるさい親を追い払い、俺はゆっくりと学校に向かった。


2学期が始まったのに真夏かよと思うほど暑い。

校門をくぐるとランニングの掛け声や野球部のキャッチボールの音が聞こえる。

あとはみんなが仲良さそうに話す声と。

そんなか俺は誰とも話さずに教室に足を進めた。


1学期よりか2学期になってクラスがうるさくなったような気がする。

多分、共通の部活や一緒にいるメンバーと思い出を重ねていくことでどんどん仲良くなっている証拠だと思う。

夏休みを挟むと、みんなの距離は一気に近くなった。

そして、もうすぐある文化祭や体育祭のためにみんなはいろんなアイディアを出し合って、話し合って時にぶつかって青春しているようだった。


そんな姿を教室の1番奥の最後尾に座って、ぼーっと眺めていた。


「おっっっっはよぉぉ!!!」


「……うっさい。」


「ごめん!身体に響いた?」


「いや、シンプルにうるさい。」


「え、それ、シンプルに傷つく。」


そう言って、大きな声で笑ってるのは、同じクラスの長谷川京介。

京介は小学校からの幼なじみ。天真爛漫で、明るくて人懐っこい性格だ。

俺とは全く違うキャラクターでもはや尊敬に値する。


…………とか本人に言ったら調子に乗りそうだからやめとこっと。


俺は座り直して、体を前に倒し寝る体勢に入った。


「え――――――、、寝るのぉぉぉ?」


「まじでうるさい。寝るの、ほっといて。」


「もぉ……昼は、、相手してよぉ?」


そう言ってすねながら自分の席に戻った京介。


……お前と付き合ってねーよ。心の中でそう突っ込んで、俺は目を閉じた。


授業開始まであと20分はある。


ちょっとでも寝よう。



――――――――――



眠くて重過ぎる体を起こし、何とか授業を受けて、やっと今昼休みになったところだ。


「ひかぁ!めしぃ!!」


ほんとうるさいわ。お前はルフィかよ。


絶対うるさいって思ってるでしょ!って顔して笑いながら、俺の前で弁当広げて食べ出した。


せめて、俺が弁当を広げるまでは待てよ。


また、心の中で突っ込んで、俺も弁当食べ始めた。


基本的に、俺らの会話は、京介の一方通行だ。


俺は、うん、へぇ、とかばかりしか話してない。


そして、8割以上は、俺の知らないアニメの話だ。


知らないアニメの話をされてうん、と、へぇ、以外の返しをどうすればいいのか誰かほんとに教えて欲しい。


「そろそろこのアニメ見たくなってきたでしょ?」


今日もまたそう言われたから、しっかりと否定しておいた。


「…………あれ?もう食べないの?」


「うん、もう食べれない。」


「相変わらず少食だなぁ」


「……ねぇ、あとこれ食べて。」


「え!いいの!?」


「うん。」


残して帰ると、はるくんが悲しい顔するから


「食べ終わったらカバン中入れといて」


「うん!どこか行くの?」


「…………保健室行ってくる」


「え、大丈夫…?」


「…うん。じゃ。」



そう言って1人で保健室に向かった。





ガラガラガラ……


「おう、どうした?」


うちの高校の保健室の先生は、珍しく男の人だ。

この人の名前は、清水先生。


爽やかすぎる顔面と高身長に加えて、優しい優しい保健室の先生とは、手に入れるものは全部手に入れたんじゃないかと思うほどだ。

もちろん、女子からの人気は凄まじい。


「めし中だった?」


「そうだけど、大丈夫、どうした?」


「……そこで寝ていい…?」


俺がベッドを指差すと、少し先生の顔つきが変わった。



「……しんどいの?」


「まぁ…少しだけ…?」


「お父さんにれんら、」


「ちょ、やめて、連絡しないで、大丈夫だから。」


「……」


「寝たら治る、お願い、連絡しないで、」


「……ん―今どんな状態か教えてくれるなら、」


「……ちょっと息苦しいだけ。昨日、夜中に発作が起きて眠れなかったから、ねむいの。ほんとにそれだけだから。」


「どれぐらいの発作?」


「小さいのだよ。薬飲めば治るやつ」


「発作があった事は、お父さん知ってるの?」


「いや、わざわざ起こすほどの事でもない軽いやつだよ。だから知らない」


「軽くても重くても、ちゃんと発作があった事は言わないと。」


「……」


「今日学校帰って、ちゃんと昨日の夜の発作の事、お父さんかお兄ちゃんか樹くんに話すって約束できるのなら、ここで寝ていいよ、」


「、、、」


「それでも隠すって言うんだったら、俺が今から電話してお父さんに迎えに来てもらう。」


「あ、、だめ。言うから……」


完全に劣勢だと思った俺は渋々その条件を飲んでしまった。


すると先生は少し笑ってベッドを用意してくれた。


お世辞でも快適だと言えないベッドではあるけど、教室で顔を伏せて寝るよりかは体がマシになった。


先生はできるだけ暗くしてくれて、俺が寝れるように配慮してくれた。


時々、先生目当てに来た女子たちが騒いでたけど、今日は体調が悪い子がいるからって追い返してくれた。


優しいなぁと思ってると、俺はいつの間にか寝ていた。

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