第52話 質問責め
「———で、これからどうすんだ?」
椿さんがいなくなって数分。
いつの間にか蘇生したらしい彰が思い出したかのように問い掛けてきた。
「どうするとは?」
「いや、俺達もレベル800くらいに到達……」
「———800程度でレベリングをやめると?」
「ですよねー、分かったよ!!」
彰が悔しそうに地団駄を踏む。
相当俺のレベリングが嫌らしい。
他の2人は文句言わずこなすのにな。
「なぁ、草薙とアリサもコイツに1発ガツンと何とか……」
「「……」」
俺は2人の方を振り向いて……途中で言葉を止める。
彰も言葉を止めた俺を不思議そうに見た後で2人を見て……同じく固まる。
そこには———涙目で頬をリスのように膨らませるアリサと、ひたすらにジト目を向けてくる草薙の姿があった。
「……私、知りませんでした……維斗様に恋人がいらっしゃるなんて……」
「ふーん……こっちは大変な思いをして、必死にレベル上げしてたのに、アンタは呑気に恋人と遊んでたのね……?」
「い、いや……そんなわけじゃ……。そもそも椿さんは恋人じゃないし……」
な、何なんだこれ……。
今まで感じたモノとは違う意味で恐ろしい有無を言わせぬ威圧感に、俺は若干気圧される。
俺の懐にいたクロは、驚いたように目を覚まして状況を確認したあと……そっと俺から降りて彰のところに避難して行った。
咄嗟に俺はクロを捕まえようとするも、2人が迫ってきてそれどころではなかった。
「維斗様っ、恋人ではないと言うなら一体どう言う関係なんですかっ!? さ、さっき、キ、キキキキスしましたよねっ!?」
「いやあれは……」
「してないとは言わせないわよ? ちゃんとこの目で見たんだから。それも随分……見せつけるようにしてくれたわね? 吉乃君のお姉さんは赤崎君を未来の夫とまで言っていたけれど……それはどう説明するのかしら?」
「……」
椿さん……貴女、とんでもない爆弾を置いていきましたね。
今度絶対やり返してやりますからね。
俺は、今頃この状況を予想して高笑いしているであろう椿さんを恨みながら、2人の機嫌取りに全力を注いだ。
「———ニヤニヤ、ニヤニヤ」
「おい彰。お前はどうやら殺されたいらしいな」
「ま、待て……タイム! ちょっと待ってえええええええええええええ!!」
俺は、わざわざ口に出してニヤニヤと言う、うざったらしい笑みを浮かべた彰の頭を鷲掴みにして力を込める。
辺りに彰の絶叫が響き渡る。
「会わない内に随分と調子に乗るようになったぁ……彰」
「ごめん! 本当に出来心だったんです! 珍しく維斗が何も言い返せずにタジタジになってるのを見て、『あ、今なら俺が何言っても大丈夫なんじゃね?』と思ってしまったんです! 謝るから許してええええええええ!! 頭が爆発するぅぅぅぅぅぅぅぅぅ———ッッ!!」
はぁ……。
俺は大きなため息を吐いて彰の頭を離す。
離された彰は、頭を押さえて痛みに悶えていた。
そんな彰の様子を眺めながら……草薙が呟く。
「……自業自得過ぎて何も言えないわね」
「酷くない!?」
「でも調子に乗った吉乃君が100%悪いじゃない」
「そうだけども! 確かにそうなんだけれども!!」
彰はアリサに目を向けるも……スッと目を逸らされ、最後にはクロに慰められる始末。
お前はそれで良いのか、彰よ。
「維斗様、維斗様」
「ん、アリサか……どうした?」
俺がクロに慰められている彰を可哀想なモノを見る目で見つめていると、アリサが控えめに袖を引っ張ってきた。
何事かと思ってアリサを見ると……何やらスマホを此方に向けてくる。
「ど、どうした……? 何で何も映ってないスマホを向けてくるんだ?」
「え? あっ……ちょ、ちょっと待ってくださいっ! はい、これですっ!」
俺の指摘に頬を赤くしてスマホを操作した後、再び俺にスマホの画面を見せてきた。
そこには———。
『ホワイトハウスに何者かが襲撃! 犯人は世界的に有名な吉乃家の当主か』
とか、
『アメリカ最強プレイヤーを一瞬で沈めた青年の正体が、日本人プレイヤーであることが判明!』
などなど……俺と椿さんに関するニュースが大量にあった。
それも、バッチリ俺と椿さんの顔が映った写真や、何なら動画まである。
……まぁ、そりゃあるよな。
逆にアレが記事になってない方がおかしいわ。
「維斗様、アメリカで一体何をしていたのですか?」
やはり、椿さんには今度仕返しをしようと思う。
俺はそう、心に誓った。
—————————————————————————
ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
モチベで執筆スピード変わるので、続きが読みたいと思って下さったら、是非☆☆☆とフォロー宜しくお願いします!
先行ダンジョン攻略〜世界にダンジョンが現れる約10年前から最難関ダンジョンでレベルアップしてたヤバい奴〜 あおぞら@『無限再生』9月13日頃発売! @Aozora-31
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。先行ダンジョン攻略〜世界にダンジョンが現れる約10年前から最難関ダンジョンでレベルアップしてたヤバい奴〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます