第48話 

「———椿さん……これって完全にやらかしてないですか?」

「失敬だな、君は。勿論想定内に決まってるじゃないか。それに……今の時代はこれくらいやってもどうせ一瞬で直る」


 椿さんはそう言うけど……一般人の俺からしたら十分なやらかしなんだよな。


 俺は、俺達が墜落した衝撃で地面が抉られ、ホワイトハウスの建物も半壊した様子を眺めながらため息を吐く。

 これで賠償金を請求なんてされた日には、社会的に俺の立場は終わりそうだな。


「———な、何だ!?」

「空から人が振ってきたぞ!」

「プレイヤーか!?」

「プレイヤーに決まってんだろ! あんな銀色のオーラを纏って、地面に墜落しても無傷なのはプレイヤー以外に有り得んだろ!!」


 当たり前だが、一般市民から物凄くと注目を浴びている。

 俺は慣れていないので若干気圧されるが……椿さんはにこやかな笑みを浮かべて手を振っていた。

 ははっ……肝が座りすぎだろ……。


 何て俺が苦笑いをしていると……ぞろぞろとスーツを着た、如何にも偉い人っぽい見た目の人達がやってくる。

 その中には俺でも見たことがある人が何人かいたが……まぁ当たり前に皆んなが皆んな俺達を睨んでくる。


「……何の用だ、吉乃家」


 そう険しい顔で言うのは現大統領の……何だったっけ?

 ヤバい……海外のこと興味が無さ過ぎて大統領の名前忘れた……。


 俺が自分の不甲斐なさに少し落ち込んでいる横で、椿さんが余裕そうな笑みを絶やさず大統領に向かってタメ口で話し始める。


「何。少しお宅の部下が私の家を燃やしてきたから一部の奴らに報復に来ただけだ」

「椿さん? 相手は大統領ですけど?」

「だからどうした? 私の家を燃やしたのはアイツの部下だろう? こっちは被害者だ。被害者が加害者に敬語なんか使うわけ無いじゃないか」

「ええ……」


 俺が椿さんのメンタルの強さにドン引きしていると、大統領が眉を顰めて重々しく口を開く。


「……こんなことが許されると思っているのか? 幾ら天下の吉乃家といえど、アメリカを敵に回すことなど出来ないはずだ。大人しく身を引けば———」

「———断る」

「…………は?」


 椿さんは、キッパリと、少しも迷うことなく断言した。

 流石にまさか提案が蹴られるとは思っていなかったらしく、大統領が間抜けた表情を晒した。


「吉乃家当主……その言葉は真か? 今なら撤回の———」

「そんなもの要らん。敵に回るなら勝手にしろ」


 ……やっぱり天才は頭のネジが数本ぶっ飛んでいるらしい。

 馬鹿と天才は紙一重というが……きっとこの言葉を考えた人は超絶天才と超絶馬鹿を併せ持った頭のぶっ飛んだ人なんだろうな。


 俺がそんなことを思っていると、俺達の周りを数十人のプレイヤーが囲む。

 それぞれ剣や杖、拳銃など様々な武器を構えている。

 そんなプレイヤー達をチラッと横目で見た椿さんが鼻を鳴らし、憮然な顔をして言った。


「私と話していたのはプレイヤーが到着する時間を稼ぐためだったか」

「その通りだ。貴様を説得するなど……そこの少年以外無理だろう? 始めまして、少年。君のことは聞いているよ。当主就任のパーティーで日本の二大財閥に喧嘩を売った護衛だろう? 今日もそこのイカれた女の護衛か?」


 ……何で知ってんのよ。

 

 まさか自分のことが知られているとは思わず、俺は少したじろぐ。

 そんな俺の隙を狙って———プレイヤー達が一斉に襲い掛かってきた。



 まぁ———無意味だけど。



 俺は剣を振り下ろされた男の剣を掴むと、もう片方の手で首根っこを押さえた。


「がっ!?!? ば、馬鹿な……確実に隙が生まれていたはず……!?」

「確かに隙が生じたのは事実だけど……お前らじゃ遅すぎなんだよ。もっともっと強くなって出直してきな」


 俺は男を投げ飛ばすと、次々と飛び掛かってくるプレイヤーに殺気と敵意を混ぜた睨みを効かせる。

 すると……次々とまるで糸の切れた人形のようにプレイヤー達が意識を失って倒れ出す。


「ふぅ……まぁこんなもんかな」

「良くやった維斗」

「馬鹿な……少なくとも全員レベルは100を超えているんだぞ……」


 大統領がそう言って呻くが……ごめん、俺からすればレベル100とかレベル1とさして変わらないんだわ。

 さて、これから椿さんは何をする———っ!


 突然ホワイトハウスの建物の中に5人程のプレイヤーの気配が出現する。

 全員今倒したプレイヤー達とはレベルが違う。

 まぁそうは言っても俺的には強さに大した差は無いが……1人だけ、5人の中でずば抜けて強い気配を纏っている。

 これがアメリカ最強のプレイヤーかもしれないな。


「椿さん、プレイヤーの気配が突然現れましたよ」

「……大方転移使いが連れてきたんだろうな。まぁ私には維斗がいるから全く脅威じゃないな」


 それはそう。

 今来たプレイヤーを倒すなら多分1秒と掛からない。

 ただ、流石にそんなイカれた奴みたないなことはしないけどな。


 強い気配を纏っているプレイヤー達は一瞬でこの場所にたどり着く。

 その5人の中でもぶっちぎりで1番強い気配を纏った20代後半くらいの精悍な顔付きの男が椿さんなど眼中に無いかのように俺ばかりを警戒しながら口を開く。


「……貴様らか? こんなにめちゃくちゃにしたのは……」

「ごめん。俺的にはこんなことになるなんて思ってなかったんだ」

「はぁ? そんなの謝ったってムダムダ! 調子に乗った子供は大人が躾けてあげないと———ぐはっ!?!?」


 チャラそうな男が俺に近付いて見下した態度を取るが……俺のデコピンに反応すら出来ずに吹き飛んだ。

 男はホワイトハウスに激突し、ホワイトハウスが更に崩れた。


 突然の出来事に驚きを隠せない様子の大統領を始めとした首脳陣とプレイヤー達に俺は小首をかしげて尋ねた。




「うーん……アメリカの最高戦力はこんな程度なのか? これなら多分一瞬でアメリカ滅びるぞ?」




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 お久しぶりです。

 これからはもう少し更新頻度を上げます。

 頑張ります。


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