第47話 殴り込みが定番だろ
「———コイツももう用済みだな」
「うわ……椿さん、相当エグいですね……」
「おい、こんなになったのは維斗のせいじゃないか。お前が『気絶しないギリギリの殺気を当ててみます』とか言った結果だろう? 人のせいにするな」
俺と椿さんは、白目を剥いて口から涎を垂らし、ビクビク痙攣しながら糞尿を垂れ流す秋原を眺めながら、お互いに罪をなすりつけ合う。
「そもそも尋問するって言ったのは椿さんじゃないですか」
「ほう……なら、案外乗り気だったのはどこの誰なんだろうな?」
「そりゃあ……いきなり攻撃されて少し腹が立ちましたし、椿さんには危険だと思ったらつい怒りが———むぐっ!?」
俺が目を逸らしながら話していると、気付けば俺の顔は椿さんの豊満な胸に飛び込んでいた。
突然のことに俺は驚いて固まる。
おいおい……全く反応出来なかったぞ。
てかこの状況は普通にキツい……。
こちとら華の高校男児。
俺にもちゃんと性欲はあるわけで……正直この状態は非常にいけない。
具体的に言えば、ゴリゴリと理性が削られている気がする。
「つ、つばきさん……く、くるし……」
「嘘だな。分かっているぞ? 維斗のレベルなら数十分息をしなくても一般人程度の動きなら余裕だろう? ふっ、私の胸に絆されそうにでもなったか?」
「そ、そんなわけない……ですよ?」
「ふっ、分かりやすい奴だな」
俺が嘘をついていることをあっさりと見抜いた椿さんは、そう余裕そうな笑みを浮かべながら離してくれる。
椿さんに常識があって良かった……とホッと安堵しながら、問い掛ける。
「それで、政府の極一部が関わってるって分かりましたけど……このあとはどうするんですか? どうせ椿さんのことですし、このまま何もなしなんてありえないでしょう?」
「よく分かっているじゃないか。勿論このままやられっぱなしではいない」
椿さんは壮年の執事に秋原をどこかに連れて行かせると、ニヤリとこちらを向いて笑みを浮かべる。
……何か嫌な予感がするな……。
俺の予感はバッチリ当たった。
「———ホワイトハウスを襲撃するぞ」
「やっぱりとんでもないですね、貴女は!!」
俺と秋原を担いだ壮年の執事は思わずため息を吐いた。
「———ふふっ、維斗に抱っこされるのもいいものだな」
「……喜ぶより先に道案内を頼みますよ」
俺は現在、椿さんをお姫様抱っこしながら空を擬似的に飛んでいた。
原理で言えば、空気を音速以上の速度で蹴っているだけだ。
まぁ……レベルが5000にもなれば身体強化込みで出来るようになるくらいか。
ただ、2人だとレベルはそれ以上必要だし、操作もムズい。
「プライベートジェットで行けばよかったのに……」
「すまないな。それは燃えた」
そう、当初はプライベートジェットでホワイトハウスを襲撃するつもりだったのだが……秋原の魔法のせいでドロドロに溶けてしまっていた。
流石にこれは椿さんにとっても少し予想外だったらしく、柄にもなくちょっと落ち込んでいたほどだ。
「それで……本当にホワイトハウスを襲撃するんですか? アメリカを多分敵に回しますよ?」
俺が尋ねれば、椿さんは吐き捨てるように言った。
「知ったことか。元々非はあっちにある。証拠の映像もあるし……何よりお前がいるから絶対に敵に回らん」
椿さんは自信たっぷりに俺を交渉材料に入れているが、果たして俺にそこまでの価値があるかは甚だ疑問である。
まぁ椿さんが言うならそうなんだろう……多分。
俺はそこで考えるのをやめて前方から接近してくる飛行物体に目を向ける。
「……椿さん、ミサイルです」
「撃ち落とせ」
「そんな軽く……まぁいいですけどね」
ほんと逆らえないな……と俺は小さくため息を吐くと、一時的に椿さんを片手で抱くて空いた拳で虚空を穿ち、拳圧でミサイルを破壊する。
ついでに破片が飛んでこないように一気に上昇し、破片が全て落ちていっていることを確認した。
よし、これで大丈夫……まぁ一発なわけないよな。
「椿さん、前方に5発同じのが来ました。ついでに戦闘機が何機か」
「チッ……流石に戦闘機は駄目だ。死人が出たら交渉が決裂になる可能性が高い。維斗……戦闘機に追いつかれずにホワイトハウスまで突っ切れるか?」
相変わらずとんでもない指示をしてくる人だな……。
まぁ今回は流石に無理だと思っているのかもしれないが……あんまり舐めないでもらいたいね。
俺は白銀のオーラに身を包みながら、呆気にとられたように俺を見る椿さんに笑いかけた。
「———余裕ですよ」
俺は全身に身体強化を纏う。
倍率は5倍。
俺が使う身体強化では1番低い倍率だが……この程度ならこれで十分だ。
「椿さん、しっかりと掴まっていてくださいね」
俺はギュッと抱き締めてくる感触を感じると、先程の5倍の速度、力で空を蹴る。
同時に先ほどとは比べ物にならない程の爆発音が鳴り響き、俺の身体が一瞬にして前方のミサイルも、戦闘機も全て追い抜かす。
しかし俺は速度を緩めず、更にその差を広げていった。
「椿さん! ホワイトハウスがありました!」
目まぐるしく景色が変わる中で俺は遂に、テレビでしか見たこと無いホワイトハウスを視界に捉える。
それを伝えると、椿さんが叫ぶ。
「———突っ込め!!」
その指示に従い———俺達はホワイトハウスの庭に墜落した。
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お久しぶりです。
これからはもう少し更新頻度を上げます。
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