第46話 ヤバい奴VS政府の犬
「———はぁ……面倒だな……」
「いやこれを面倒で済ます椿さんが凄いですね。もしかして分かってたんですか?」
俺は全く焦っていない椿さんの姿にジト目で見つめる。
しかし、椿さんは心底つまらなそうにローブ姿の秋原を見下ろしながらに言った。
「アイツは吉乃家の敵対勢力出身だ。そんな奴が、敵対している私にお前を取られて何もしないわけがない。僅かに賢明な判断をするかも……と思わなかったわけではないがな」
「なら準備とかしてなかったんですか?」
普通分かってるなら家が壊れないようにとか、侵入されないように護衛を増やすとか幾らでもやりようがあったはずだ。
それをやらないなんて椿さんらしくないと思うんだが……。
俺がそんなことを思っていると……椿さんが燃える家の方を見る。
気になって椿さんの視線を辿ると……其処にはまるで生きているかのように瓦礫が元の場所に戻って行く様子が飛び込んでくる。
そして炎も徐々に消えて行く。
「な、何なんですかアレ……?」
「私が攻略したダンジョンの攻略報酬だ。まだ地球にはない未知の物質で……まぁ簡単に言えば未知の形状記憶物質らしい。中の家具は吉乃家の傘下の会社が作った結界装置で守られている」
「何なんですかその未来の家みたいな」
あまりに現代とは掛け離れた高性能さに俺は若干引き気味に呟く。
てかそんな家なら俺が連れ出さなくても良かったような……。
「私からすれば、私を咄嗟に守ってくれたのは嬉しかったぞ」
「……何で考えてることが分かるんですか」
「お前の想像に任せる」
椿さんがニヤニヤと笑みを浮かべる。
本当に食えない人だ……。
———と、俺達に炎の塊が迫る。
「———【プロメテウス】!! この俺を無視するな!!」
「いや……アンタが途中から乱入して来たんじゃん」
面倒な奴だな……と思いながら魔力を纏った手で炎を上空に弾き飛ばす。
弾き飛ばされた炎の塊は上空で爆散。
「維斗、大丈夫か?」
「ん? うーん……まぁちょっと熱かったかなってくらい?」
「ば、馬鹿な……!? 俺のレベルは既に200を超えているんだぞ……!?」
相当自分の魔法に自信があったのか、秋原が驚愕に目を見開いてワナワナと震える。
へぇ……俺がいなくなっていた1ヶ月の間に随分とレベルが上がったもんだな。
コイツで200なら彰達はどれくらいになってんだろうな。
少し楽しみだ。
「な、何を笑っている!?」
「何でもねぇよ。ほら、さっさと倒してやっから掛かって来い」
俺は地面に降りて椿さんを降ろすと、フードを被った秋原と向かい合う。
秋原は俺が異様なほどに落ち着いていることに逆に恐ろしく感じているようで、顔を歪めて魔法を放つ。
「し、死ねッッ!! 【プロメテウス】!」
「それしか使えねぇのかよお前」
「ガッッ!?」
俺は巨大な炎球を掴むと、魔力で包んで握り潰す。
そして全ての炎球を破壊して一瞬で秋原の目の前に移動すると、首に手刀を当てて気絶させた。
「椿さん、コイツどうしますか?」
「……取り敢えず家に連れて行くぞ」
椿さんは少し考える素振りを見せた後、そう言って家の方に歩いて行く。
俺には何をしたいのかはさっぱり分からないが、取り敢えずついて行くことにした。
「———おい、良い加減に起きろ」
「おーい、椿さんがお怒りだぞー」
おかしいな……強く叩き過ぎたか?
俺は1時間経っても一向に起きない秋原を見ながら首を傾げる。
心臓も動いているし、首の骨も折れていないので死んでないはずだ。
現在俺達は地下室におり、秋原の座る拘束椅子と2つのめちゃくちゃ高そうな椅子が置いてある。
椿さんはその超高級な椅子に座って舌打ちをした。
「……チッ、コイツを嗾けた相手のことが知りたかったんだが……維斗、お前少々力強過ぎじゃないか? レベルは幾つだ?」
「18500」
「………………は?」
俺の言葉に椿さんが珍しくポカンと口を半開きにして声を漏らした。
その反応懐かしいなぁ……とか若干逃避気味に思っていると、椿さんが俺の手を握る。
「———結婚してくれ」
「早過ぎません?」
ついさっき結構真面目にお断りしたつもりなんだが……。
「余計お前を手放したくなくなった。お前がいればアメリカ……いや、世界をも余裕で相手取れる」
「世界と戦うなんて嫌ですよ。面倒だし」
「あくまで脅し文句として使うだけだ」
おっそろしいことを考えるなこの人……と引き気味な俺の耳にくぐもった呻き声が聞こえてくる。
秋原だ。
どうやら秋原がやっとこさ起きたようだ。
しかし秋原は起きがけ1番驚愕の声を漏らした。
「ぐっ……馬鹿な……18500だと……? そんなの人間の限界を超えている……!!」
「あ、聞いてたのかよお前。起きてるならもっと早く知らせろよな。まぁ丁度いいや」
俺は秋原に問い掛ける。
「今アメリカで1番レベルが高いプレイヤーは誰なんだ?」
「だ、誰がお前なんかに話すか! それは機密情報だ!」
「———706、だろう?」
「なっ!?」
椿さんの言葉に目を見張る秋原。
なるほど、706で確定か。
…………弱いな。
彰達がこのくらいなら少しお仕置きが必要かもしれない。
「ま、それは置いといて……椿さん、コイツ起きたことだし……」
「ああ、知ってることを洗いざらい話してもらうとしよう」
俺達は秋原に邪悪な笑みを浮かべた。
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