第36話 ヤバい奴VS王級始祖モンスター

 ———おいおいほんと勘弁してくれ……。


 俺は内心ため息を吐く。

 俺の視線の先にはキングとクイーンが俺を殺気立った瞳で舐め付けていた。


「いやぁ……これは少し参ったな」


 後頭部をかきながら困ったように笑う。


 キングとクイーン2体は、今の弱体化した俺では少しキツイ。

 勿論周りのことを気にせず本気を出せば余裕なのだが……如何せん後ろにレインがいるので本気も出せない。

 あれ……これって結構拙い状況では?


 今更ながらに危機感を抱く俺に、服の中のクロが呆れた様に小さくため息を吐いた。

 いや……俺の服の中で寝てた奴が何言ってんだか。


「クロ、レインに結界を張ってくれ。最硬度のヤツで頼む」

「きゅっ」


 俺が小声で指示を出すと、即座にクロの角が光ってレインの周りに半透明の結界が張られる。

 突然のことにレインが驚いた声を上げた。


「な、何ですのこれ!」

「結界だよ。その中ならどんな攻撃を食らっても無傷だから安心して」

「本当なんですの!? そんな魔法見たことなくてよ! 勿論信じますけれど! 頑張ってくださいまし、維斗!」

「あいよ」


 レイン……お前絶対根はいい奴だろ。

 多分庶民として生まれてたらその高飛車なところも無くなってモテそうな気がする。 

 

「ま、応援して貰ったことだし……取り敢えず頑張ってみますか」


 俺はキングとクイーンを見据え———地面を蹴る。

 さながら瞬間移動の様に一瞬で2体の眼前に姿を現し、後ろで『バキッ!』と地面が割れる音が響く。


「まずはこれでも食らってろ!」

「ギィッ!?」


 速度の乗った拳をキングの顔面に叩き付ける。

 短い悲鳴を上げて身体をくるくる回転させながら吹き飛ぶキングを他所に、拳を振り抜いた状態の俺へとクイーンが口を開いて爆音を発した。


「ぐっ……鼓膜が……ガハッ!?」


 俺は鼓膜が破れないよう咄嗟に耳を手で押さえると、ガラ空きの腹に足蹴りを叩き込まれた。

 スーパーボールの様に、身体をくの字にさせて弾き飛ばされる。

 そのまま俺は壁へと激突した。


「い、痛え……古代の建造物は硬すぎなんだよな———うわっ!?」


 俺はパラパラと小さな破片が降って来る中で愚痴っていると……気付けば眼前に風の刃が迫っていた。

 咄嗟に身体を回転させて回避し、直様反撃に出る。


「よくもやってくれたなこの野郎!」

「ギィィィィ!!」


 俺の拳とクイーンの脚が衝突、クイーンが力負けして吹き飛ぶ。

 しかし横から復帰したキングに蹴られた俺も同様に吹き飛ばされた。

 に、2体なの超ウゼェ……。


 俺は空中で身体を捻って地面に着地。

 口内に溜まった血を吐き出す。


「ペッ……あー、2体の連携ガチでウザいな……てか、空中戦は苦手なんだが……」


 俺はスキルによって外傷と内傷が治ったのを確認した後、どうやって倒そうか考えながら再び飛び上がった。









「———ごほっ……うーん、マジで怠い」


 俺は壁に大の字で埋もれながら呟く。

 戦って既に5分程経過したが……大分劣勢に追い込まれていた。


 いやまぁ俺のステータス下がってるし、相手のレベルにおけるステータスが高いから仕方ないんだけどさ……。


 因みに人間の初期ステータスが1〜10なのに対して、鹿王が25〜30、オリジンバッドは確か50〜70くらいだったはずだ。

 そしてキングは全部65、クイーンが60のはずなので……単純計算でキングは全ステータス325,000、クイーンは270,000。

 弱体化した俺がスキルを使って互角なのも頷ける。


「ごほっごほっ……はぁ……ステータス」


 俺は相手が勝ちを確信したらしく攻撃してこないのを良いことに、ステータスを開く。

 

—————————————

赤崎あかさき維斗ゆいと

状態

【身体強化(10倍)】

【呪い(ステータス3分の1)】

【裂傷・内傷・打撲・骨折】

【自己治癒】

種族【人間】

年齢【16】

Level【18,500】

基礎ステータス

体力【37,000】魔力【43,167】

攻撃【308,333】防御【308,333】

敏捷【308,333】

固定ステータス

知力【73】魅力【75】

スキル

【身体強化★10】【気配感知★7】

【自己治癒★6】【魔力眼★1】【武術★3】【集中☆7】【冷静☆5】

魂の契約

漆黒の角兎帝ブラックホーンラビットエンペラー?(レベル・17,900)】

—————————————


「……ステータス低過ぎだろ。10倍使ってこのざまなのマジでウケるわ……」


 ほんと自分で自分の首絞めてんな。

 いやぁ……まさかこんな早くに始祖モンスターと戦うとは思ってなかったよ。


「……クロ、アイツらに勝てるよな?」

「きゅっ? きゅう!」


 俺の問い掛けに力強く頷くクロ。

 やっぱクロ様最強ですわ。


 ただ……こんなことになったのは全部俺の責任だ。

 自分の失敗は自分で挽回しないとな。


「クロ……レインを護ってやってくれ」

「きゅ……?」


 俺の言葉にクロが『本当にいいの?』と聞き返して来るので、小さく頷く。

 それと同時にクロが俺の服の中から飛び出し……今の俺と同じくらいの速度でレインの所に着地した。


 遠目からも分かるくらいレインが戸惑っているが……まぁクロなら何とかするだろ。


「さてと……クロも動かしたことだし、こっちもだらだらしてられんな……」


 俺は壁から這い上がり、舐め腐った表情と態度のキングとクイーンに向かって嗤う。

 

「そんな態度を取れるのも今の内だぞ……馬鹿共……」


 全身がミシミシと悲鳴を上げると同時にスキルによって治る。

 そんな状態を繰り返しながら俺は呟いた。



「———【フェーズ・2】———」



 全身がより強大で光輝な輝かしい白銀のオーラに包み込まれた。


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