第35話 ヤバい奴VS始祖モンスター

 ———久し振りにこんなに動くな……!


 俺は無数に迫り来るオリジンバッドの鼻っ柱に拳を叩き込みながら思う。


 【身体強化】を使ったのはこの前の似非王モンスターに使ったっきりだ。

 しかもその時は一瞬で解除したしな。


「おっと、そいつはお触り禁止だ」

「ギユィ!?」

「そおれ、返してやるよ」


 俺はレインを襲おうと背後から強襲してきたオリジンバッドの頭を掴んで、次々と来るモンスターに投げ飛ばす。

 弾丸の如く吹き飛んだオリジンバットは仲間達を次々と巻き込んで壁に激突して命を散らした。


「「「「ギュィイイイイイイ!!」」」」

「ギャーギャー喚くな」


 俺は虚空に向かって拳を打ち込む。

 すると———オーラの篭った拳圧が何十ものオリジンバッドを消し飛ばした。

 しかしまだまだ数が……面倒臭え……。


「きゅっ」

「あぁ、分かってる」


 俺はレインの護りながら、上空のオリジンバッドの群れの中間にいる一体の灰色のコウモリ———オリジンバッドジェネラルに殺気を向ける。


「おいお前。手下ばっか使わずにお前が掛かってこいよ。それともビビってんのか?」

「ギィィィィ……」


 俺の挑発にまんまと乗ったオリジンバッドジェネラルは、不協和音を奏でながらゆっくりと此方に滑空して来る。

 そんなジェネラルに道を開けるようにオリジンバッド達は攻撃をやめて俺とジェネラルから離れた。


「ゆ、維斗……そんな煽っては……」

「でもアイツを倒さない限りオリジンバッドは死ぬまで襲い続けるぞ」


 ぶるぶると身体を震わせて声を絞り出すレイン。

 ただ、幼い彼女には悪いが……もう少し耐えて貰うことになりそうだ。



「さぁ———来いよ、王の駒」

「ギィィィィィィィッッ!!」



 通常種とは比べ物にならない速度で滑空しながら俺に超高威力の音波を放つ。

 ……これを受けたら俺でも鼓膜が破れそうだな。


 俺は空間の振動を気配感知で感じ取りながら拳を握り———現段階の全力で空間を殴った。

 同時に音速を遥かに超えた拳が空間を打ち付けたことによって発生する拳圧とソニックムーブにより、ジェネラルの放った音波を相殺される。


「っ!?」

「おいおい……この程度で驚いてたんじゃキリねぇぞ?」


 俺は更に数回虚空に拳を打ち付ける。

 白銀のオーラが拳圧に乗って、まるで龍の如くジェネラルを喰らう。


「ギィィィィァァァァァァ!?!?」


 両翼と足を消し飛ばされたジェネラルは悲鳴を上げて落ちる。

 しかし……俺の最後の1発によって地面に落ちることなくその身体を消滅させた。


 これには流石のオリジンバッド達も怯む。

 俺はそんな奴らに舌を出して中指を突き立てた。



「さっさと掛かってこいよ、雑魚共!!」










「———す、すごい、ですわ……」


 私は、本当に目の前でその場から一歩も動かず私に来る攻撃も自身に来る攻撃も全て受け切って攻撃する維斗の姿に思わず呟く。 

 速すぎて殆ど何をしているのか分からないけど、維斗が有利なことだけは分かる。


 そもそも維斗程の強さを持った者を私は見たことがない。

 我が家の最強の者でも、維斗なら小指で勝てそうですわね……。


 しかし、そんな維斗は何故か先程から一向に表情を明るくしない。

 それどころか、寧ろ苦々しく顔を歪めていた。


 ど、どうしたのかしら……?

 

「ゆ、維斗……?」

「あー、いやね? ジェネラル倒せばコイツらの特攻も減ると思ったんだけど……どうやらキングかクイーンがいるらしいんだよ」

「キング……ですの?」


 私はその言葉を聞いて、アメリカのダンジョンブレイクで出てきたモンスターがオーガキングだったことを思い出す。

 キングは通常の個体とはもはや別種と言われるほどに強いらしい。

 まぁ私は会ったことないのですけれど。


「あー、チッ……また来やがったか……クソッタレ」

「……ごめんなさい……」

「ん?」


 私は今更ながらに謝る。

 自分の不注意で起きたことなのに、全て彼に任せっきりなことも含めて。


 私は常に自分が上だと思っていた。

 自分がその気になれば何でも出来ると。


 しかし———そんな自信は呆気なく崩れ去った。


 今目の前で起きていることに私は何も出来ていないどころか足手纏いになっている。

 だが、何かしようにも私の力ではどうにも出来ない。


 そう痛感すると、視界が滲み、私の目から涙が零れ落ちる。


「本当に……ごめんなさい……」 

「まぁ分かってるなら別にいい」

「……え……?」


 私は思わず顔を上げて維斗を見る。

 維斗は此方を向いて、片手間と言わんばかりにモンスターを捌きながら言った。


「お前はまだまだ子供だしな。俺だって間違えるのに俺より年下の子が間違えないわけがない。次から気をつけてくれるなら……まぁ今回はそれでいいや」

「……はい……」

「え、お、おい、泣くなって……」


 私が維斗の言葉に再び涙を流すと、維斗が少し焦った様子で声を掛けてくれる。

 あんな怖くて強いモンスターを前に全く動じないのに、私の涙を見ただけで焦るのはどうかと思うが……それほど維斗が優しいと言う証拠なのかもしれませんわね。

 

「維斗……私は絶対に強くなりますわ。こんな気持ち悪いモンスター、私がいつか蹴散らして差し上げますの!!」

「はっ、それはいいね。ただ———悪いけど最悪な事態に陥ったわ」


 維斗はオリジンバッド達の猛攻が止まったため動きを静止させるも……露骨に表情を歪めながら上空を見上げた。

 私も維斗の視線を追ってみると……。




「ギィァァァ……」

「キィィィィ……」




 他のモンスターの二回り以上も巨大で真っ白な図体の2体のモンスターが居た。


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