第32話 ヤバい奴、絡まれる

「———アレは何でしょう……?」


 のんびりとダンジョンを攻略していた俺達一行だったが……アリサが目を凝らしながら言った。

 そんなアリサの視線を追うと……数キロ先に明らかに場違い感満載の強大な気配を纏った男2人に守られた少年と少女が見えた。

 少年と少女は男2人が首根っこを掴んだゴブリンに剣を突き立てて殺している。


 そんな彼らに、彰が羨ましそうに零した。

 

「何か俺達の維斗をめっちゃ温くしたようなやり方だな……俺もあんな方法がいい」

「絶対ダメに決まってんだろ。あんな雑魚相手にアレでレベル上げて意味あると思ってんのか?」

「いや、お前は鬼畜過ぎるだろ!? 誰がレベルアップした途端にレベル200越えのモンスターと戦わせる奴がいるんだよ!!」

「俺」

「あぁ、あの2人が羨ましい……!」


 彰が悔しそうに地団駄を踏む。

 ふっ、残念だったな彰。

 お前には一生あんなヌルゲーなんてさせないからな。


 俺の悪どい笑みに後ずさりする彰。

 しかし草薙が俺の肩を叩いたことで、俺達の会話は終了した。


「赤崎君」

「あぁ、近づいて来てんな。逃げちゃダメかな?」

「……100%面倒臭いことになるわよ」

「……だよなぁ」

 

 俺は草薙と肩をすくめ合って此方へ向かってくる4人を待った。

 







「———貴方達ね!? 私達を無礼にも遠目から眺めていたのは!」

「姉様、絶対に赦したらいけないよね」

「当たり前ですわ! コイツらはこのエノテーカ家の私とユミルを見たのですから!」


 キャラ濃いなおい。


 やって来た12歳くらいの金髪赤眼の少年と少女は……何か異世界ファンタジーの貴族みたいな口調と態度で俺達を指差しながぺちゃくちゃ話していた。


 因みにエノテーカ家とか言う家は……そこそこ大きな家だ。

 彰の家の3分の1くらい。


 これを聞くと小さく聞こえるが……彰の家がデカすぎるだけで、実際は俺達庶民とは比べ物にならない家系なのは確かだ。


 ……で、そんな家系の子息子女に俺達は絡まれているらしい。


「維斗……俺が1発ぶちかまそうか? 今のエノテーカ家の当主って俺ん家が所有する子会社の社長だしな。規模的にそこまで大きくないし、多分俺でも何とかなるぞ」


 彰が小声で言ってくるが……お前、吉乃家ってバレたら面倒なんじゃない?

 主に姉貴にバレたらさ。

 まぁ……俺も彰の姉貴達に合ったことあるけど……彰が1番恐れる1番上の姉貴はちゃんと彰を想っていた様に見えたけど。

 その他はちょっと投げ飛ばしそうにはなったな。


 ……一先ず相手のノリに合わせてみるか。


「えー遠目で眺めたとは? すいません、私達庶民が貴女方みたいな高貴なお方を見るなどありえま———ちょっとすいません、御二方」


 俺は2人から向けられる『マジかよこんな礼儀正しく出来んのか』的な目線にイラッと来たため、少年と少女に頭を下げて断りを入れる。

 すると、少女が腰に手を立てながら胸を張って言った。


「いいですわよ、許してあげるから話しなさい!」

「ありがとうございます。……おい、お前らの目は何だ? どうした、言ってみろよ」

「い、いや……ぷっ、ギャハハハハハヒィー苦しい……! あの維斗が敬語使って頭下げてるなんて愉快な姿見て笑わない奴いるかよ! やべぇ、笑い死———ぐえっ」

「よし、今からお前を窒息死させてやる。大丈夫、笑い死ぬのと大して変わらん」

「や、やめ……ブハッ! あ、ごめんなさ」


 俺は一思いに彰を気絶させる。

 まぁこの馬鹿が吉乃家だとバラしてしまうくらいならこれでいい。


 俺は気絶した彰を脇に抱え、若干引いた様子のエノテーカ家の2人の方へ向き直る。


「すいませんね。コイツ物凄いアホなもので

立場を弁えないんですよね」

「姉様! コイツヤバい奴ですよ! 仲間を躊躇なく殺した!」

「いえ、殺してませんよ。ただ気絶させただけです」

「だとしてもお前がヤバい奴には変わりないんだよ!」


 姉と呼ぶ少女を護るように前に立って俺を睨む少年。

 ……何か悪い奴らじゃない気がして来た。

 面倒なのは変わらないけど。


「レイン様、ユミル様。私どもの後ろへ。彼ら……特に彼は危険です」


 黒服の男達が俺に殺気を向けてくる。

 酷い奴らだな……何もしてないのに。


 俺が若干悲しくなっていると、少女改めレインが2人の黒服を押し除け、2人にビシッと指を差した。


「五月蝿いですわ貴方達! 私は相手が誰であろうと隠れませんことよ! それと貴方、名を名乗りなさい、ですわ!」

「……初めまして、赤崎維斗と申します」


 俺はもう完全に黒服の2人には名前を聞かれているので仕方がなく本名を名乗る。

 まぁもしもの時は……その時考えよう。


「赤崎維斗ですわね……覚えましたわ! それと維斗! 貴方は強いのかしら?」

「……まぁこのダンジョンくらいなら攻略出来ますね」


 何が目的なのかちょっと分からなくなって来たので慎重に言葉を述べる。


 因みに草薙とアリサを俺が意図的に黙らせているのは、全ての矛先を向けられるなら俺が1番やりやすいからだ。 

 そんなことを考える俺に、レインが言い放った。




「———維斗に仕事を与えますわよ! 貴方はこのダンジョン内で私とユミルを護りなさい! ちゃんと報酬はあるのですわ!」




 うーん……選択ミスったな、これ。


 俺はポリポリ頭をかきながら、返答を考えた。


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