第31話 ヤバい奴、現状の人々のレベルを知る
「———いいわね? 絶対に貴方とクーちゃんは戦っちゃダメよ。他人がいるダンジョンなんだから」
「あいあい」
「きゅっ……」
無事(?)ライセンスを取った俺達は東京のダンジョンに来ていた。
ダンジョンの等級は『E』。
俺達はライセンスを取ったばかりでレベルも30に改竄したせいでこれ以上のダンジョンに入れないせいだ。
そして今現在、東京のダンジョンにいるのだが……俺は草薙にしつこく釘を刺されていた。
しかし草薙の言葉にいい加減聞き飽きたので適当に返事をすると……この前の件で味をしめたのか草薙に耳を摘まれて凄まれる。
「分・か・っ・た・わ・ね?」
「分かった、分かったから耳を引っ張るのはやめろ。お前の力だとそこそこ痛いんだよ」
「そう言う割には全然痛そうじゃないわね」
つねっていた俺の耳を離してため息を吐きながら『本当に大丈夫かしら……?』と結構心外なことを呟く草薙。
いや流石に人のいるダンジョンで力は使わんやろ。
寧ろ俺は彰が心配だぞ。
そんな俺を考えを読み取ったかの様に草薙が答えた。
「安心して、赤崎君。吉乃君は全身特製の服を着て貰っているから。あと銃も奪っているわ」
「な、なぁ維斗……これ、何キロあると思う……?」
俺の横に来て訊いてくる彰。
一見普通そうな服を着る彰だが、物凄くキツそうな顔をしている。
「さぁ? お前のステータスでキツいなら1トンくらいは余裕であんじゃね?」
「うん、その2倍」
「わぁお。サイさん乗せてるな」
通りで口数少ないわけだ。
今の彰でも、元がムキムキではないからキツいに決まっている。
俺だと……うん、限界が分からん。
余計なことを考えるのはやめて、俺はクロを身体に隠しながら、先程から終始無言のアリサに尋ねる。
「アリサ、さっきからどうしたんだ?」
「い、いえ! 何でもないですっ! た、ただ……今まで力の加減なんてしている暇がなかったせいで……えっと、その……」
途中で言葉を止めて躊躇うように口をモゴモゴさせ、世界水泳並みに視線をに泳がせるアリサ。
その姿と会話から推測するに……。
「…………草薙、アリサもアウトだ。何なら近接戦闘に長けたアリサが彰よりヤバいかもしれん」
「そうね……取り敢えず何かデバフのアイテム持ってないかしら?」
「多分2時間で効果が切れる使い捨ての『ステータスダウン薬』があったはず……」
「だ、大丈夫ですっ! まず2人の戦いを見てから合わせますのでっ! なのでそのステータスダウン薬って言うアイテムは捨てて下さい!!」
俺と草薙がアリサに何かしようとすると焦ったように俺達の言葉を遮った。
更には早口で俺達へと説明と要求を言ってくる辺り、よほど嫌らしい。
「まぁ……アリサなら彰よりマシだろうしいいか」
「お、おい、聞き捨てならない言葉が聞こえて……ごめん、早く行こ」
よほど重たいらしく、遂にはツッコミも諦めた彰に同情の視線を向けながらダンジョンへと入った。
「……え、えぇ……」
「「「……」」」
俺達は、ダンジョンに入って僅か数分にも関わらず言葉も出ないほどに、目の前の光景に呆れを通り越して困惑していた。
此処は1階層目の
このレベルは昔の幼い俺でも1日目で攻略した場所。
その筈が……。
「ひ、ヒィッ!?」
「あ、ま、待て……!」
「オラっ! オラっ! な、何で当たらないんだよ……!?」
「む、無理……こんな可愛い生き物殺せないよ……」
ある男は角兎に体当たりされて悲鳴を上げ。
ある男は何故か角兎を見た瞬間固まって逃げられ。
ある男は攻撃するも、一度も当てられず。
ある女は角兎の見た目に騙されるだけに留まらず、武器すら抜かない。
こ、これは……地獄絵図か何かなのか?
俺があまりの驚きと困惑に言葉を失っていると……先程まで苦しそうにしていた彰が真顔で言った。
「なぁ……維斗」
「……何だ?」
「俺さ……この状態でもアイツらより数十倍マトモに動ける気がするわ」
「だろうな」
本当にその通りだと思うわ。
マジでコイツらやる気あんのかよ……。
そんな彰に続き、アリサまでもが、角兎を短剣を投げて仕留めながらドン引きした様子で呟いた。
「ひ、酷過ぎます……これはレベル以前の問題ですね……」
「本当な。同じ日本人として恥ずいわ……」
「い、いえ! 維斗様は彼らとは隔絶された別次元のお方ですからっ! あんな人達と一緒にしてはいけませんよ!」
おい、あんたら。
中学生にそこまで言われてんぞ。
恥ずかしくねぇの?
「……クーちゃんの方が断然可愛いわね」
「お前だけズレてんな」
「あんな人達どうせすぐ死ぬわ。他人なのだし気にするだけ無駄よ」
草薙はゴミを見る目で彼ら彼女らを一瞬見たかと思えば……直ぐに目を逸らして器用に力を加減して角兎を狩っていく。
非常にドライな考えだが……まぁ俺も彼女の意見に賛成だ。
こればかりは俺でも不可能。
自分達で何とかしてもらうしかない。
そう思うと……。
「……俺、結構人に恵まれてんのな……」
「きゅっ?」
「あぁ、アイツらは絶対護るよ。例え日本を敵に回しても、な」
「きゅっ、きゅっ!」
俺の服の中のクロが小さな前脚を元気よく上げる。
その愛くるしい姿に俺は小さく笑みを零すと……。
「頼りにしてるぜ———相棒」
「キュッ!」
先々進む3人の後ろ姿を追った。
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