第30話 ヤバい奴、怒られる
———突入から5分。
全員の警備員(推測)を気絶させた俺達はスーパー量子コンピュータの前で駄弁っていた。
「なぁ……まだ終わんねぇの? 正直追っ手が来ないか心配でソワソワする」
「知らん。あと追っ手は……エレベーター壊れてるし来れないだろ」
「あ、確かに。でももしかしたら他のルートがあるかもしれんじゃん」
心配性な彰がまだ5分しか経ってないのにブツブツと最悪の可能性を考えながら巨大なコンピュータの前を、落ち着かない、と言った様子でウロウロとする。
……お前は好きな人を屋上で待つ男子か。
俺は小さくため息を吐いてどんな原理か知らないが、コンピュータを動かすシステムに問い掛ける。
「システム、あとどれくらい掛かるんだ?」
《およそ3分です》
「あと3分だってよ」
「長っ!? そんな掛んのかよ!?」
いや、国家のセキュリティー突破しようとしてんだから当たり前だろ……。
彰のあまりの無知さに涙が止まらない。
「てかよ、こいつらどうすんだ?」
「ん? …………どうしようか」
俺達は後ろに1つに束ねた気絶中の男達に視線を遣る。
この地下室は様々な電子機器と超巨大ディスプレイが備わっており、警備員らしきスーツの男達だけでなく、研究者や技術エンジニアみたいな者達もいた。
勿論皆んな気絶させたけど。
「ほんとにどうしよう」
「記憶消せるアイテムとか持ってねぇの?」
「……任意の記憶が消せるモノは3個しかないんだよな……。あとは完全に全ての記憶を消すアイテムしかないわ。俺達仲良く指名手配仲間だな」
「な、何て嫌な仲間の部類なんだ……!」
何て俺達が言っていると———ふと、時速100キロ以上で移動するナニカの気配を感知。
何だこれ……バイクか?
バイクが7台で……上に2人ずつか。
「すまん彰。お前の考えが当たった。バイクがこっちに近づいてきてるわ」
「ほらっ、だから言ったじゃん! 早く此処から出ようって! バイクに突っ込まれたら流石に……何ともなさそうだな」
始めは大慌てしていた彰だったが、先程のエレベーターでの出来事を思い出したらしく急に冷静になった。
それと同時に、システムから《完了》との合図が出る。
「よし、彰! これから上に登るぞ!」
「どこから!?」
「エレベーターの壁をな!」
「やっぱり頭おかしいよお前!」
そう叫ぶ彰だったが、後ろから聞こえるバイクの走行音を聞いて俺より先に走り出す。
「これ以上目撃情報を残してたまるか!」
「……50人くらいに見られてるし無駄だと思うが……まぁそれで彰がやる気を出せるならいっか」
俺は肩をすくめ、アイテム『感電煙幕』をバイクへと投げて彰を追いかけた。
「———で、これはどう言うことかしら?」
「「…………返す言葉もないです」」
朝、俺達2人はホテルの一室にて、怒りに眉と口角をヒクつかせる草薙の前で正座をしていた。
正座は勿論自主的に、だ。
憤怒を宿した草薙の手には覚醒者協会(政府が作った覚醒者達を管理する部署。ライセンスの発行も此処が行なっている)の新聞が握られている。
その新聞に載った政府関係者への攻撃を行ったスーツの身に纏って仮面を被る2人組の写真と記事を見せながら言った。
「ねぇ、何のために夜を選んだの? 何でこれほど派手に新聞に載ってるのか私に教えて貰えないかしら?」
「「……コイツのせい———あ、お前!」」
息ぴったりでお互いのことを指差す俺達が取っ組み合いの喧嘩を繰り広げようと……する前に草薙のジト目の圧に負けてサッと元の正座に戻る。
こ、怖えぇぇ……!
因みにクロとアリサは仲良く別の部屋のベッドで寝ている。
どうやらクロとアリサは気が合うらしい。
「赤崎君、貴方が居ながらどうしてこうなったのかしら?」
「いや、俺は全知全能の神でも某ドラマみたいに『私失敗しないので』とか豪語する医者でもないから」
「軽口を叩くのはこの口かしら」
「ん、おんおんおんおんおん(ほ、本当に申し訳ありませんでした)」
俺が草薙に口を摘まれながら謝る横で、彰は『ざまぁ!』と言わんばかりの満面の笑みを浮かべていた。
取り敢えずお前も怒られろ。
「貴方も同罪よ、吉乃君」
「何でぇ!? 全部維斗の指示だったけど!?」
「吉乃君……貴方は連帯責任って知ってるかしら?」
「酷くね!? そ、そもそも草薙さんならバレなかったって言い切れるのかよ!?」
珍しく美人相手に言い返した彰に俺は多少関心すると共に便乗する。
「彰の言う通りだ。草薙だったらバレなかったのか?」
「そうね……私ならまず建物を調べて、防犯カメラの映像が変わらない様にハッキングしてから……窓とかがあったら無色透明、無味無臭の睡眠ガスを撒くわ。仮に無くても防犯カメラが使えなければ多少の戦闘も問題ないはずよ。そのあとはエレベーターの上に乗って下に降り……換気口があったらしいからそこから侵入ね。換気口が使われているなら此処にも催眠ガスを撒き、使われてないなら換気口から中に出る場所を見つけて、煙幕と共に催涙ガスも使って視覚を奪ったあと、自分も中に入って1人ずつ確実に気絶させるわ」
「「……」」
「赤崎君、睡眠ガスも催涙ガスも煙幕も持っているのよね?」
「……あぁ……」
「ならこの方法の方が時間は掛かるけど、のちのことを考えたらまだ安全な気がするわ」
……確かにこれが上手くいくかは別としても、間違いなく今回みたいに総当たりになることはないかもしれん。
てか、人選間違えたわ。
俺達は完全に言い返すのを諦めて、ただただ謝ったのだった。
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今日はもう1話上げられんかもしれません。
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