第29話 ヤバい奴はゴリ押しが得意

「———マジか……俺ん家より深く作ってんじゃん……」

「まぁ政府が作ってんだからな。お前みたいな個人であの深さは頭おかしいんだよ」

「それは俺も思うわ」


 俺達は地下30階まで降りたにも関わらず未だに降下を続けるエレベーターの中で呟く。


 因みに今回は敢えて防犯カメラを稼働させており、今俺たちはスーツ姿で防犯カメラから微妙に顔が見えないくらいに立っている。

 別に防犯カメラを壊しても良いのだが、多分銃の威力が高すぎてエレベーターがぶっ壊れそうなのだ。


 そして35階に差し掛かった時、暇になったらしい彰が少し不安そうに言った。


「維斗、これ途中で止められないよな?」

「お前は何でそんなフラグ的なことをわざわざ言葉に出すんだ?」


 俺が呆れた様にツッコんだ瞬間———突然エレベーターの階層表示と中を照らす照明が切れる。

 そしてエレベーター特有の不思議な落ちる感覚が消え、エレベーターが稼働する音も消えてしまった。


 俺は沈黙を貫く彰の方に目を向ける。


「……な?」

「…………えー、ごめんなさい」

「まぁ良いや。行くぞ、彰」

「え、何処———ッ!?」


 俺は彰の襟を掴んで落ちない様にした後、エレベーターの床を踏み抜くと同時に天井にぶら下がる。

 派手な轟音を響かせながら床が綺麗に抜けた。


 突然の俺の奇行とも取れる行動に彰が瞠目して俺と無くなって真っ暗な下を何度も往復しながら叫んだ。


「何してんのお前!? 普通に死ぬぜ!? てかお前どうやって天井掴んでんの!?」

「え、握力」

「もう怖いよ……お前人間じゃねぇ」

「いやお前もな。お前今レベルなんぼだよ」

「え? えっと……347だけど?」


 それがどうした? と安定のお馬鹿具合を見せつけてくる彰。

 俺はそんな彰にも分かるように説明する。


「ならめちゃくちゃ単純に言うが、お前は常人の347倍の耐久力を手に入れてんだよ」

「ならお前は18500倍?」

「スキルなしでな」

「やっぱお前化け物だな」

「10年のアドバンテージ舐めんな」


 俺は目を瞑って体を縮こませる彰を掴んだまま天井を離して落下した。









「あ、あぁ……意外と何とも無いのが自分でも恐ろしい……」

「良かったな、彰。着々と俺側に足を踏み込んできてんじゃん」

「嫌だよ! 俺はまだ人間でありたい!」

「酷いなお前!? まるで俺がもう人間じゃないみたいに言うなよ」

「いや生物学的に人間でも、もう維斗は人間の枠外に居るでしょ」


 無傷で数百メートル下に着地した彰がシクシクと泣くので慰めたのに、何故かとんでもなく棘のある言葉が返ってきた。 

 ただダンジョンクリアしただけなのに。

 

「なぁ、維斗……あそこから行くのか?」 


 彰が指差す方に視線を向けると……ジャンプすれば届く高さにある排気口の様な人1人ギリギリ入りそうなくらいの穴があった。

 確かにあそこからでも行けそうだか……。


「彰……甘いな」

「何がだよ?」


 訝しげに俺を睨む彰へと……。



「こっからは———正面突破だ」



 エレベーターの扉をぶっ壊して告げた。


「撃てぇえええええ!!」


 ———ズダダダダダダダダダダッッ!!


 予め構えていたらしいスーツ姿の男達が俺の姿が現れると同時にマシンガンか何かをぶっ放してきた。

 しかも人が多くて広範囲なため、俺の視界を塞ぐ様にコンクリートの砂塵が舞う。


「うわっ、砂埃って目が痛くなるし嫌なんだよな……まぁ戦闘自体に問題はないけども」


 俺は常人離れした聴覚で弾丸の風切り音を聞き分け、その全てを掴む。

 流石にまだ心の準備が出来てなさそうな彰の下へと銃弾が行かないように1つ残らず全て食い止める。

 何百発も撃ち込まれるため、途中で弾丸が俺の手から零れ落ちて、中が空洞な金属の落ちる音が響き渡った。


「ゆ、維斗……?」

「ほら、お前は防犯カメラをまた破壊してくれよ。人間は俺が引き受けてやっから」


 俺は未だ呆けたままの彰に言葉を掛けながら黒塗りの仮面を被る。

 

「それじゃあ彰———頼んだぞ」


 俺は即座に銃弾の嵐の中を駆け抜ける。

 一応コンピュータに当たらないようにちゃんと銃弾は掴んでいる。

 すると、後ろから銃声が聞こえた。

 どうやら彰が動き始めた様だ。


「な、何なんだこれは……!?」

「本当にアイツは人間か……!?」

「安心しろ! これがある!」

「へぇ、どんなもんなんだ?」

「っ!?」


 辺りのスーツ姿の男達が俺を見て恐ろしげな目線を向けていたが……誰かの言葉と共に一気に士気が上がった。

 俺は何事かと思って中背中肉な体型の男の真ん前に移動し……彼が持つ20センチ程の精巧な時計の様な機械を見つめる。

 同時に数人が俺の方へ銃を……は?


「おいおい……仲間に銃を向けるどころかブッパしてどうするよ」

「黙れ侵入者! やるんだ岩井!」

「あ、は、はいっ!」


 俺が岩井と呼ばれた目の前の男に当たらないように銃弾を取っていると……岩井が時計の様な機械のネジを巻く。

 同時にオルゴールが流れ始めた。


 …………??


「ははははは!! どうだ侵入者よ! これは対覚醒者用の『不可時計』だ! これを聞いた覚醒者はスキルを使うことが……」

「何だよくだらねぇ」

「ガハッ!?」


 俺はスキルだけ使用不可にすると言う欠陥品をはたき落とし、楽しそうに笑って説明してくれた男の腹にデコピンを撃ち込んだ。

 全く……こちとら、スキル不可効果に加えてステータス均等&一時的に相手のスキルが使えるアイテムもあるっての。

 

「ば、馬鹿な……何故効かない……!?」

「いや聞いてるけど……スキルだけじゃ殆ど意味ないぞ」


 その証拠に、彰もスキルを使わずに短剣だけで相手を余裕で翻弄させている。


「さて……ちゃっちゃと終わらせようか」


 俺は軽く地を蹴った。


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