第27話 ヤバい奴、ライセンス試験を行う

「———次どうぞ」

「は、はーい」


 遂に俺達の中で最初の人———彰が呼ばれた。

 彰は若干緊張した面持ちでステータス測定器の前に移動する。

 その道中、彰が俺に目を向けた。


「(本当に大丈夫なんだろうな!?)」

「(大丈夫……なはず。分からん、やったことないし)」

「(な、何と無責任な……俺がミスったらどうすんだよ!!)」

「(逃げる。お前が捕まったら……まぁ暇な時に助けてやるよ)」

「(薄情な奴め!!)」  

「どうぞ、ここに手を触れてください」

「あ、はい」


 俺と彰が言い合っていると、訝しげに彰を見たステータス測定器の管理人的な女性(美人)の言葉で彰が一気に大人しくなる。

 やっぱ美人がダメなのな、お前。

 

 彰が緊張でガチガチになりながら、そっとステータス測定器の水晶部分に触れる。

 

 ステータス測定器は、水晶部分から対象者の魔力を少量吸い取って水晶下部に付いているホースからホログラムを映し出す部分に向かうまでに測定する。

 だから理論上、ホース部分に一時的に干渉できればステータスを自由に変化させることは可能だ。

 そして皆んなに渡した指輪のアイテム……『干渉』なら、彰の魔力と一緒に自在に操作出来る魔力が一緒に流れ込む。 

 それを俺が着けている『操作』の指輪で映し出すステータスの数字を弄れば……。



「———吉井彰……レベルは34ですね」

「あ、はい、そうです! 吉井彰、レベル34です!」


 

 よし、上手く行った!

 ただな彰……お前はテンパり過ぎだ。

 逆に怪しくなるだろうが。


 ただ、一応成功はしたので俺は小さくガッツポーズをする。

 この調子なら2人も大丈夫なはずだ。


 俺はこの自信をバネに、草薙のステータスを変えるべく操作を始めた。

 









「———いやー、自分がやる時は自分で操作なんか出来んかったわ。よし、切り替えて次行こ次」

「行けるわけないだろお馬鹿! 何で偶にこう言うPONをしちゃうかな、アンタは!」


 俺は彰に絶賛怒られながら、次なるライセンス取得場へと向かっていた。

 そんな俺達の後ろでは、東京の様々な店に目を惹かれたアリサを草薙が必死に抑えている。

 お疲れ様です、草薙。


 因みに彰、草薙、アリサの3人は無事ライセンスを手に入れた。

 問題が起こったのはこの後———俺の番が来た時だ。


 普通に操作しようとしたら……片手を水晶にくっ付けて動かさないでくださいって言われていたせいで操作できなかったのである。

 

 そこからは速かった。

 俺は速攻で水晶から手を離して回れ右して外にダッシュ。

 何人かの覚醒者に追われたものの、普通にカーブを駆使して逃げ仰せた。


 その後は予めこう言ったことがあった時のために全員で打ち合わせをしていた場所で集合し……今に至る。


「てか俺からすればお前ら3人揃って『無関係です。あんな人知りません』って即答した時の方が驚いたわ」

「そうしろって言ったのは貴方じゃない」

「アレほどまでに綺麗な尻尾切りにあうとは思ってなかったんだよ」


 俺は近くのベンチに座り、空を見上げる。


「あー、マジでどうするよ……俺だけライセンス取れんとか」

「あの……維斗様がステータス測定器を持っているなら、ご自分でライセンスを作るのはどうでしょうか……?」

「「…………それだ」」


 俺と彰が同時に呟く。

 確かにそれならステータスも弄り放題だし周りの目を気にしなくていい。

 ただ問題があるとすれば……。


「どうやって俺のライセンスを登録させるかだな」

「そうね。私達のライセンスの情報は政府のコンピューターの中に入っているけれど、貴方のは政府を介さないから入らないものね」


 幾ら俺でも、政府のコンピューターをハッキングすることは不可能だ。

 俺にそんな高度なテクニックはない。

 

 あ、そう言えばシステムはどうなんだ?

 システムなら政府のフォルダにもアクセスできるのだろうか?

 まぁ流石に無理———。



《———可能。私の能力に耐えうるコンピュータであれば改竄可能です》

「お前本当に凄いのな」



 どうやらシステムなら出来るらしい。

 ただシステムの能力に耐えうるコンピューターってもはやスーパー量子コンピュータしかない気がするんだが……。


《地理を計測……完了。この東京の地下にスーパー量子コンピュータが2台稼働中。案内ルートを表示しますか?》

「あぁ、頼む」

 

 俺がそう言うと同時に目の前に俺にしか見えない矢印が現れた。

 少し違和感はあるが……まぁ殆ど気にならない。 


「よし、ライセンスを登録する目処が立ったぞ」

「……ほんとに大丈夫か? さっきミスった奴が言うと信憑性ないぜ?」

「なら普段からよくミスる彰の言葉に信憑性はないらしいな」

「前言撤回で」


 彰がゴマを擦りながらへらへらと笑って『ネタですやん』と擦り寄ってくるのでただ押しのけながら、アリサと草薙の方へ目を向ける。


「2人は……適当に東京を満喫しててくれてもいいぞ」

「分かったわ。アリサ、今から行きましょうか」

「本当ですか!? やったっ! 早く行きましょう! 維斗様、本当にいいんですか?」


 アメリカで10番目に強いとは思えない程の可愛さでコテンと首を傾げるアリサ。

 俺は何か保護者の様な気分になって頷く。

 するとアリサはキラキラと瞳を輝かせて草薙の手を引っ張って早速何処かに行った。


 そして2人プラス兎で取り残された中、彰が呟いた。


「え……俺は?」

「お前は手伝え。スナイパーは重要だぞ」

「マジ? でも俺も東京観……」

「後で奢ってやる」

「よし、すぐ行こう超速で行こう! 何処に行くのか知らんけど!」


 相変わらず手の平返しが上手い奴だな、と俺は苦笑しながら歩き始めた。


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