第26話 ヤバい奴、東京に行く

「———おい起きろー維斗ー! 朝だぞー」

「……あ、あと1時間……」

「1時間!? そこはあと5分がセオリーなんじゃないの!?」


 五月蝿いよ彰……俺は寝るのが大好きなんだよ……。


「あ、おい維斗! お前起き———え?」


 あ、静かになった。

 これでまた寝れる———ぐほっ!?


「グエッ!? だからクロ、それは本当にやめてって言ったよね!?」

「きゅっ!」


 俺はクロに腹の上に飛び乗られ、鳩尾にクロの脚が直撃。

 腹を押さえて悶絶する俺を見ながら、クロは早く起きろと急かしてくる。


 こ、このヤロー……人の痛みも知らないで……。

 でもクロも甘いな……この状態からでもまだ俺は寝れるぞ……!


「赤崎君、朝が弱いのね」

「んぇ? あ、草薙じゃん……おはよ……」

「おはようって言いながら寝ようとしない」


 俺が再び小屋のソファーで寝ようと試みたが、草薙に阻止され無理矢理立たされてしまった。

 チッ、流石にもう寝れんか……。


「ふわぁ……皆んな早いな。まだ8時だぞ? 普段の俺ならあと4時間は寝てる」

「お前は寝過ぎだよ」

「彰だって大概だろうが」

「寝坊の回数の次元が違いますぅ!」

「確かに赤崎君はよく遅れて来るわよね」


 草薙、余計なことは言わないの。

 ほら、アリサはまだ俺が朝弱いの知らないんだから。


 俺はチラッとアリサに目を向けると、アリサは純粋な笑みを浮かべて言った。


「私、朝弱くてもいいと思います! 私も寝るの大好きですよ」

「だよな、よく分かってるじゃんアリサ。コイツらがおかしいんだよ」

「そんなわけないから。それにアリサもちゃんと起きてるわよ。起きてなかったのは貴方だけ」


 呆れた様に言って来る草薙から目を逸らして手で耳を塞ぐ。

 聴きたくないよ、そんな正論。


「で、今日はどこ行くんだ?」

「ん? あー、取り敢えず……」


 彰の質問に、俺はクロにこちょこちょのお仕置きをしながら言った。


「———東京行くぞ」


 







「———ひ、人が多い……でもTVでみた東京駅に来れたのはマジで感動」

「それな。もはやここに来ただけで東京を満喫したと言っても過言じゃないよな」

「過言でしょ」


 馬鹿なことを言い合う俺と彰に、呆れた様な目を向ける草薙。

 因みにアリサはと言うと……。


「ラーメン! ラーメンがあります! 私ラーメン食べたことないんです!」


 ラーメンの店を見てキラキラと目を輝かせていた。

 まぁ日本人じゃないし、興奮するのも分かるが……ラーメンくらいならアメリカにもありそうだけどな。


「それで……来たはいいけど、これからどうするのかしら? まさか観光とか言わないわよね?」

「えー、別に観光でも良くね? あ、ごめんなさい」

「私も観光した———ごめんなさい」


 ひと睨みで2人を黙らせた草薙は、再びその鋭く極寒の瞳を俺に向ける。


「まさか……貴方まで言わないわよね?」

「いや、全然違うから。あの組織にいちゃもんつけられるの面倒だし、ライセンス? って言うのを取ろうと思ってな」


 1週間前くらいに政府が発表した声明の中に、ステータスを覚醒させた覚醒者(プレイヤーとも言う)又は、覚醒者になりたい者はライセンスを手に入れないとダンジョンに入れない、と言う決まりが出来たのだ。

 あ、この前のは政府が管理してないダンジョンだからセーフだよ、セーフ。


「へぇ……赤崎君は取らないと思ったわ」

「いや、ほんとは面倒だしやだよ? でも……まぁ、必要になったんだよ」


 俺がチラッとアリサを見ると、アリサは不思議そうに首を傾げた。

 

 彼女は一応アメリカ政府の人間だ。

 流石に彼女に俺のダンジョンを使わせるわけにはいかない。

 そもそも草薙にも言ってないしな。


「ま、そう言うことだから、取り敢えずライセンスを取りに行くぞ」

「ら、ラーメン……」

「ラーメンは後で買ってあげるから我慢しなさい」

「……はーい……」


 草薙に諭されてすこしょんぼりしながら物欲しそうにラーメン屋を見つめるアリサ。


 やはり幾ら強いとは言え、まだまだ中学生というわけか。

 まぁこんな小さな子でも強くなれるんだから、政府はライセンスを持ってる人しか覚醒者にさせたくはないわな。

 犯罪者がなったら終わりだし。


「俺もラーメン食いたかった……」

「お前には奢らんぞ」


 お前は自分の金で食え。

 







 ———ライセンス。

 覚醒者の身分証明をする物であり、ダンジョンへ入る資格でもある。

 何でも強さと素質ごとにランク分けがされるらしい。


 そしてそんなライセンスを取得するべく俺達はライセンス取得場と呼ばれる場所に来ていた。

 しかしその中で……。


「———維斗、どうすんだ? これだと俺達絶対目立つよ?」

「……そうだな」


 俺は目の前の見覚えのあるステータス測定器とか言う代物を見て呟く彰に、内心焦り散らかしながら相槌を打つ。

 

 まっずいぞこれは……。


 俺は冷や汗をかく。

 何とか態度には出さないでいるが……未来を考えれば考えるほど焦りが大きくなっていく。


 俺の中では戦闘試験とかがあるのかと思っていた。

 何故なら、ステータス測定器的な物がダンジョンでも相当貴重な物だからだ。

 俺ですら2個しか持ってないのに……何で俺が持っているのと同じ物が目の前に置かれているんだよ、ふざけんな。


「ねぇ、そんなに拙いのかしら?」

「……とんでもなく拙い。普通に俺達のレベルがバレたら政府に囲まれるはずだ。そして多分———政府は組織と繋がっている」


 俺がそう言うと、草薙は一瞬物凄い怒気を発するが、ギリッと歯を食いしばって何とか抑え込んだ。


「……確かに拙いわね。でもどうするの?」

「まぁ方法がないわけじゃないけど……こればっかりは運だな」


 そう前置きを置きながら、俺は3人に説明をしてとあるアイテムを渡した。


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