第25話 ヤバい奴、紹介する

 ———組織の構成員達は1分も掛からずに全員気絶した。

 俺と草薙の周りには白目を剥いて気絶している構成員が何人もぶっ倒れている。


「はぁ……弱すぎるわ」


 草薙が手を払いながらため息を吐く。

 どうやら全く相手にならなさ過ぎて力を発揮出来なかった様だ。

 ただ、それもしょうがないことだろう。

 

「まぁコイツらレベル50程度しかないしな。あの沸点低い馬鹿も80くらいだし」

「え、アイツ80程度でイキってたん? うわぁ……恥ずっ。俺ならもう外歩けないよ」


 彰が共感性羞恥を感じたらしく、真っ赤になった顔を押さえて身体を震わせる。

 安心しろ彰……俺も同じ気持ちだから。


「あ、そうそう。2人に紹介しないといけない人がいるんだったわ」

「?? 誰だよ? また草薙さんみたいに変な拾い物をして来たのか?」

「吉乃君、少し彼方で話をしましょうか。私を変な拾い物を言ったその口黙らせてあげるわ」

「い、イテテテッ! わ、悪かったです! 訂正します! 維斗、草薙さんみたいな心強い助っ人でも見つけて来たのか!? こ、これで良いですか!?」


 草薙に真顔で耳を引っ張られて速攻根を上げた彰が言い直す。

 やっぱり彰は美人に弱いらしい。

 ただそれなら……。



「———は、初めまして! 私の名前はアリサ・エル・オルダーです! アメリカのプレイヤーです! この度は維斗様の弟子として同行させて頂きたく……」

「……こ、今度は外国人系の年下美少女だと……!?」


 

 アリサにも……弱そうだな。


 俺は即座に俺の背後に隠れる彰を見て相変わらずな親友の姿にため息を吐く。

 アリサは初対面なのに突然怖がられて戸惑っている様子だったが……草薙が俺や彰の代わりにアリサに話し掛けた。

 

「初めまして、アリサさん。私は草薙玲奈よ。日本語がとてもお上手なのね」

「は、初めまして……に、日本語は独学で学びました……。えっと……」

「私のことは玲奈で良いわ」

「あ、うん! 宜しく玲奈!」


 クールな微笑を浮かべる草薙と、年相応な笑みを浮かべるアリサが和やかな雰囲気で握手をする。

 うん、女の子同士で笑い合っている姿は大変眼福だ。


 しかしそんな雰囲気をぶち壊す様に草薙が笑顔で言った。


「あ、因みに赤崎君の1番弟子は私よ」

「え!?」

「いや、維斗の1番弟子はこの彰さんだから」

「えぇっ!?」


 2人に弄られて愕然とした様子で倒れそうになるアリサの肩を支えて、俺はジト目を2人に向けた。


「落ち着け、アリサ。お前らな……年下虐めて楽しいか?」

「え……? 私を揶揄っていたのですか?」


 驚いた様に目を見張るアリサが2人を見つめると、2人してスッと目を逸らした。

 ふむ……この3人は案外上手くやっていけそうだな。


 俺はそんなことを思いながら、ダンジョンボスの夫婦である鹿女王を倒して食後の睡眠を取るクロを撫でて3人の様子を眺めた。










「———と言うことで、今から俺対3人の練習試合を始めます。クロは観戦ね」

「きゅっ!」

「ちょっと待ったぁぁあああ!! 何でお前が戦うんだよ!? 俺ら3人でそれぞれ戦えば良いじゃん!」


 俺達は組織の奴らの増援が来ることを踏まえて学校から離れ……森から出る時に見つけた小屋に居候させて貰っていた。

 ま、誰もいないんだけどな。


 そしてシステムに、小屋の壁にダンジョンを作って貰った。

 何でも、システムが言うには、俺達が倒したモンスターから得られる魔力の塊———魔石があれば人間でもダンジョンを作り出せるとのこと。

 まぁ作っても何もない広い空間が出来上がるだけらしいが。


 その何もない空間に入った俺達は、お互いの実力を知るために練習試合を始めようとしたのだが……どうやら不満があるらしい。


「どうしたよ、彰?」

「いや、お前と戦って勝てるわけなくね?」

「だって見てるだけとか暇じゃん」

「うわ、やってるわコイツ」


 巫山戯んじゃねぇ! と憤慨する彰だったが……彰の横に立つ草薙が涼しい顔で口を開いた。


「———私は別に良いわよ」

「え?」

「わ、私も弟子になったからには維斗様に手解きをお願いしたいですっ!」

「アリサさんまで!?」


 ギョッとした様子で草薙とアリサの方を向く彰だったが……ガクッと肩を落とし、ヤケクソ気味に叫んだ。


「はぁ……やるよ。やれば良いんでしょ!」

「私、思い切りのある人好きよ」

「よし、今すぐやろう。この俺にが維斗をボッコボコ……には出来なくても1発くらい当ててやるから任せとけ!」


 それで良いのか彰……。


 俺は、少し口角を上げた草薙の『好き』の言葉に舞い上がって直ぐ調子に乗る彰に頭が痛くなるのを感じる。

 その内美人局でもされそうで怖い。


「まぁそれは後で考えるか……。じゃあス」

「おらスタートじゃコラァ!!」


 ———パァンッ!


 100パーセントフライングで放たれる弾丸。

 音速を軽く超えた弾丸は俺の眉間目掛けて突き進むが……俺のデコピンで威力を相殺されて地面に軽い音を立てて落ちる。


「えぇ……これでもダメなの……?」

「上手くなったな彰。それと……良い連携だな」


 俺は前方に草薙、後方にアリサの同時攻撃を軽く跳躍して避ける。

 すると、草薙の『鬼神剣・双角』、アリサの見たことない漆黒の短剣が、俺が元いた場所を通る。


「これならどうだ!」


 ———パァンッ、パァンッ!


 避けて空中にいる俺に、彰が2発の銃弾を撃ち込む。

 しかも数十メートルもない距離でリボルバーではなくまさかのスナイパーライフルで。


 少し驚いた俺に、先程よりも速く大きな銃弾が襲い掛かる。

 同時に草薙は俺より高く飛び上がり、剣を振り上げていた。


「———【鬼人化】———」

「おぉ、もう使えるのかよ……」

 

 俺は彰の銃弾を手刀ではたき落とし、紅いオーラを纏った草薙の双剣を片手ずつ受け止める。


「くっ……ビクともしない……」

「1日で良くこんな強くなったな、マジで」


 彰も然り、草薙も然り、どうしてこれ程までに成長スピードが速いのか。

 妬けるね、全く。

 

「私も忘れないで下さい! ———【炎剣】ッ!!」


 俺の死角から、いつの間にか伸びて槍なった元短剣の刀身に炎を纏わせたアリサが鋭い突きを放つ。

 その所作は洗練されており、相当実践経験があることが伺える。


「ぐっ……!!」

「戦闘技術はアリサが1番だな」

「えっ!? つ、掴んだ……!?」


 俺は空中で草薙を回し蹴りで吹き飛ばし、燃える槍を掴んで遠心力でアリサを槍ごと投げ飛ばす。

 投げ飛ばされたアリサは地面に槍を突き刺して止まり、草薙も空中で回転して地面に着地した。


「うん、結構いいな。ただ……まだまだ見せてくれるんだろ?」

「望むところよ」

「わ、私も全力を尽くします!」

「……維斗、お願いだから痛いのだけはやめてくんない?」


 取り敢えず彰には、1発痛いのをお見舞いしてやることに決めた。


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