第19話 ヤバい奴、ゴーレムと戦う
「嗚呼……何て清々しい気分なんだ……今までのストレスが一気に流れていったぜ……」
「赤崎君、私、彼にリボルバーを与えたのが失敗に思えるのだけれど」
「…………ごめん、ここまでヤバい奴になるとは思ってなかったんだ……」
俺と草薙は、『ミッションクリア』と言う半透明の巨大なボードを見ながら、まるで憑き物が取れたかのように清々しい顔をした彰を見て言い合う。
第2ステージは校舎内でハウンド(レベル70程度)の群れから逃げる、と言う内容だった。
そのため始めは逃げていたのだが……銃ならハウンドを攻撃しても問題ないと分かった途端に鬼と逃げる側の立場が逆転して、最終的には彰がハウンドを追い掛けると言う謎の構図が生まれた。
そして今が丁度クリアした直後である。
ただ、ハウンドを殺し尽くしてあんな顔をする今の彰は完全に俺を超えた『ヤバい奴』だった。
……どうやら俺はとんでもない化け物を生み出したのかもしれん。
「ま、クロには逆らえないし、一般的な常識もあるんだから大丈夫だろ」
「もしもの時は私が容赦なくぶった斬ってあげるわ」
「お前ら全部聞こえてるんだからな!?」
何で俺だけこんな目に……と教室の隅でメソメソ泣く彰。
いや、今回はお前が百悪いだろ。
「ところで次のミッションはまだかしら? 私もレベルアップしたいわ」
「今のレベルは? スキルはどうなった?」
「見て貰った方が早いわ」
草薙はそう言うと、俺達にも見える様にステータスを表示させる。
—————————————
種族【人間】
年齢【16】
Level【60】
基礎ステータス
体力【549】魔力【610】
攻撃【549】防御【488】
敏捷【488】
固定ステータス
知力【90】魅力【95】
スキル
【???☆0】【魔力操作☆1】
【気配感知☆1】【武術☆4】
—————————————
草薙のステータスを見た俺達は、何とも言えない複雑な表情になる。
「この頃の俺より超絶高いの何か複雑な気分なんだけど……」
「彰……それは俺も同じだ。でもしょうがないだろ……初期ステータスが異常に高かったんだから」
俺達のステータスは、初期ステータス分上昇していく。
俺と彰の場合『6・7・8』しか無かったのだが……草薙は『8・9・10』と異常に初期ステータスが高かった。
そのため俺や彰よりもレベルが上がる度に増えるステータスが多い。
しかも何やらまだ解放されていないスキルもあるらしいしな。
正しく才能の塊と言える。
「まぁ貴方には一生追い付けそうにないけれど」
草薙は悔しそうに俺を見て言う。
だがその瞬間、窓の外から見える空に最後のミッションが表示された。
俺達は話を中断して窓に近付くと……ミッションを読んだ彰が『はぁ?』と声を漏らす。
「《スクールゴーレムを倒せ》ってどういうことだよ?」
しかし、そんな疑問も直ぐに解消される。
「「!?」」
「転移か……」
「きゅっ!」
突然目の前の景色が変わり、教室からいつの間にか元通りとなったグラウンドに転移していた。
同時に常人では立っていられない程の揺れが俺達を襲う。
そして俺達の目線の先には———。
「キュォオオオオオオオオオッッ!!」
数分前まだ校舎だったモノが、人型に変形して立っていた。
その大きさは裕に100メートルを超える。
「おいおいおいおい……これは嘘だろ……」
「……っ、これはマズいわね……」
これにはそれぞれリボルバーと剣を構えた2人も驚愕と焦燥を露わにする。
確かに何方の武器もあのゴーレムを倒すには大きさと威力が足りない。
しかし俺達の敵はそれだけではなかった。
「レベル120程度のアイアンゴーレムが50体か……」
「よし、俺と草薙さんであっちの小さい鉄の塊をやる。維斗は校舎を頼んだ!」
彰はそう言って体長4メートル程の人型の鉄塊に銃弾を撃ち込む。
銃弾は音速を超えて空中を駆けてゴーレムに着弾すると同時に大爆発を巻き起こす。
そして爆煙が晴れると……バラバラになって地面に転がるゴーレムだったモノが姿を現した。
「どうよ、維斗! 俺の【錬成】で作った『真・爆発弾』の威力は!」
ドヤ顔で此方を向く彰。
今回は素直に賞賛を贈るとしよう。
「凄いじゃん。ゴーレムも核を破壊しないといけないが……彰には意味なさそうだな」
「おうよ! プラントで散々爆発弾は撃ってきたし余裕だぜ」
「彰は心配なさそうだな……草薙、25匹倒せるか?」
俺はアイアンゴーレムを睨みながら剣を鞘から抜く草薙に訊く。
すると———返事の代わりとばかりにアイアンゴーレムに接近して胴体を真っ二つに斬り飛ばした。
「核は身体の真ん中にあるのね」
「……草薙も心配なさそうだな」
俺はアイアンゴーレムの断面を見て考察する草薙を見て苦笑する。
全く……2人とも随分と頼もしくなってきたじゃないか。
「クロ、2人の援護を頼んだ」
「きゅっ!」
クロが元気な返事と共に俺の肩から降りて2人の援護に向かう。
俺はそれを見送ると……スクールゴーレムに向き直った。
「さて……俺も仕事を果たすとするか」
「キュォオオオオオオオオオ!!」
「———五月蝿え」
俺は跳躍して刹那の間にスクールゴーレムの顔面へと移動し……拳を振り抜く。
しかし巨体に似合わぬ速度で腕を滑り込まされ……。
———パァァァァン!!
俺の拳の威力に耐えられなかったスクールゴーレムの腕が弾け飛んだ。
しかし核が傷付いていないゴーレムは再び再生する。
「オ、オォォォォォォォォォォ……!!」
「何だ? この程度かよ」
俺は振り抜かれた直径10メートル程のゴーレムの拳を片手で受け止め、ニヤリと嗤う。
「2人がゴーレム倒すまでは……せめて気張れよ」
「キュォオオオオオオオオオ!!」
俺の拳とゴーレムの拳がぶつかり合った。
———維斗達が戦っていた頃。
「見つかったか!?」
「いえ、死体以外見つかりません!」
「くそ……蓮香様の命令で来てみたが……誰も居ないじゃないか……!」
黒いバトルスーツに身を包んだ眼鏡の男が部下の報告を聞いて歯軋りしながら呻く。
しかし直ぐに男の下へ、別の部下がやって来たが……何やら慌てている。
「た、隊長、大変です!!」
「どうした?」
「に、西を探索していたのですが———」
部下の言葉が言い終わる前に———部下も男も周りにいた者達も全て、一条の深緑の光線によって命を散らした。
「ヴォォ……」
光線を放った主は
縄張りを荒らされて怒り狂う王が、生命力を見通す瞳を動かし……街に向かって動き出した。
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