第17話 ヤバい奴、ダンジョンへ入る

「———悪い、彰。変なことに首突っ込んでしまった」

「そうだろうね! 道理で帰りが遅いと思ったよ! 一体何をし———え、草薙さん?」


 俺が草薙と共に彰の下へ戻ると、攻める様にジト目で見てくるが……草薙の姿を確認して素で驚く。

 そして俺の肩を掴み、草薙に断りを入れて少し離れた所まで誘導された。


「……維斗、これはどう言うことだ? 我が校一の美少女が居るなんて聞いてないぞ!」

「その変なことが彼女絡みなんだよ」

「……因みにどんな?」


 恐る恐る、しかしどうしても興味が惹かれると言った様子で彰が問い掛けてくる。

 そんな彰に俺は、特に隠すこともないのでそのままを伝えた。


「何か『異能連合』とかいう超大きな組織にお姉さんが洗脳されてて、殺されそうになってたから助けた」

「良くやった維斗。君は全男子の英雄だ」

「———何の話をしているのかしら?」

「な、何でもないですだす!」


 草薙に話し掛けられた彰が緊張で上擦った変な声を上げて飛び退く。

 ほんと、イケメンなのに何で女性耐性がないのかね。

 

「た、助けてくれ維斗……び、美人は怖いんだぞ……ウチの姉なんて……あ、考えたら体の震えが止まら無くなってきた」


 全身をガクガクと震わせながら乾いた笑い声を上げる彰があまりにも憐れすぎる。

 どうか幸せになってほしいものだ。


「ねぇ、赤崎君」

「何だ?」

「さっき貴方が言ってたけど……どうやって私を強くしてくれるのかしら?」

「まぁ待て。取り敢えず此処から逃げるぞ」

「え、何でだ?」


 いつの間にか復活していた彰が不思議そうに首を傾げた。

 俺はそんな彰に説明する前に、問わねばならぬことが1つある。


「彰、お前は俺に付いてくるか? 多分もう安全な日常は当分送れないかもしれん」


 まだ彰は組織とやらに知られていない。

 此処で離脱すれば、彰に魔の手が及ぶことはないだろう。


 そんな意味で言ったのだが……。



「———ふざけんなよ維斗……! 俺がお前を見捨てて1人で逃げる訳ないだろうが! 俺はどんなことがあろうが維斗について行くぞ!」



 彰が俺の襟元を掴んで言い放った。

 その真っ直ぐな思いに、俺は驚くと共に彰がどう言う人間かを再確認する。


「……ふっ、愚問だったか。いやぁ悪かったな彰」

「良いってことよ。だって維斗とクロ先輩の近くがこの世界の何処よりも安全だしな!」

「最後の言葉が無ければ感動したのにな」


 ま、そういうところも彰ってことか。


 因みにクロは絵梨の時と同様、草薙に大変愛でられていた。

 今も草薙の胸にダイブする様な形で抱き締められている。


「「……」」

「維斗……」

「やめろ言うな。俺らもその内見つけよう」


 俺達はお互いに慰め合いながら、森を出るべく歩を進めた。

 そんな俺達の姿を草薙とクロは不思議そうに眺めていたが。









「———さ、流石に多分此処まで来れば大丈夫だよな……?」

「多分大丈夫な……はず。結構飛ばして走ったから10分も掛からず森から出れたしな」


 俺達はあれから僅か10分という圧倒的速度で森から抜けて街へと戻ってきた。

 案内はシステムに任せて、最短ルートで案内してもらったが。


 何とか上手くいったか……と安堵している俺の胸の辺りから声がして視線を下げると。


「…………下ろして……っ!」

「あ、あぁ、すまん。直ぐ下ろす」


 俺にお姫様抱っこされたからか、顔を真っ赤に染めて縮こまった草薙が涙目で此方を睨んでいた。

 どうやら俺が相当嫌だったらしい。


「悪い。最悪な気持ちだったと思うが……逃げるには必要なことだったんだ」

「わ、分かってるわよ……。そ、それに……別に最悪って訳でも無かったし……」


 それなら良かった。


 降りながら未だ頬を朱色に染め、視線を逸らして呟く草薙に、一先ず嫌われていないようで安心する。

 

「……狡いぞ、維斗。軽々しく草薙さんに触れるなんて……」

「はぁ、お前な……そんなことよりも聞くことがあるだろ」


 俺が呆れながら言うと、彰が腕を組んで言った。


「いや無いね! 何で学校に来たかは多少気になるけどそんなことよりよっぽど草薙さんの体のかん———」

「馬鹿は休み休み言え大馬鹿野郎」


 俺は彰の頭を叩いた後で説明を始める。


「これからは約束通り草薙を強くするぞ。ただ……他のダンジョンには警察とかがいるから入れん。なら———今から出現するダンジョンに入ろうってわけだ」


 それが俺達が通う学校と言うわけだ。


 因みに見た目は何処にでもある普通の高等学校である。

 私立ではないので綺麗なわけでも設備が充実しているわけでもない。

 本当に誰もが高校と言えばこんな感じ、と言うのを体現したような高校だ。


「でも、ダンジョンの現れる場所なんか分からないわよ」

「まぁ普通はな。でも……俺にはそれが出来るんだな」

 

 正確には、システムが出現の約1時間前までなら教えてくれるのだ。

 それ以外はシステムでも不明らしい。

 

「じゃあそれはいつなのかしら?」


 俺は学校を背に告げる。



「今から」

 


 ———ズズッ……!! 


 俺の言葉と同時に、学校の校庭に先の見えない穴———ダンジョンが出現した。


「「……」」

「ほら、2人とも行くぞ」

「きゅっ、きゅっ!」


 呆然と新しく出来たダンジョンを眺める2人を連れて、俺はダンジョンへと向かった。


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