第14話 ヤバい奴、森の洗礼を受ける
「———これで……最後!!」
彰が、錬成で作り上げた剣で、最後の一体となった寄生草の心臓を貫く。
心臓を貫かれた寄生草は宿主の身体から何とか這い出ようとして……力尽きた。
全ての寄生草が死んだのを確認して顔の汗を袖で拭っている彰に、俺はポケットから取り出した水筒を彰に差し出す。
「お疲れさん、彰」
「おうよ。お前のお陰で簡単だったわ」
「まぁ寄生草は流石に相手が悪いからな。手伝わないとお前は速攻で死ぬ」
「やめて恐ろしいから。そんなことより見てみろよ、俺のステータスを!」
自慢げに【ステータス開示】と唱えた彰が自身のステータス画面をグイグイと見せつけてくる。
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種族【人間】
年齢【16】
Level【48】
基礎ステータス
体力【245】魔力【294】
攻撃【245】防御【245】
敏捷【392】
固定ステータス
知力【50】魅力【90】
スキル
【錬成☆2】【銃術☆1】
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「どうよ!」
「……はは、寄生草はレベリングに最適だもんな……」
「ど、どうした……?」
俺がステータスを見た瞬間に何処か遠い目をして諦めの笑みを浮かべると言う予想外の反応に、彰が困惑している。
だが、俺がこんな反応をするのも仕方ないと思うのだ。
俺が寄生草を倒すのに10日……それにレベル48まで上げるのだって2ヶ月近くも掛かったのに……。
それを僅か2時間かよ……。
簡単に言えば、圧倒的な皆んなの成長速度に、昔の自分の苦労や成長速度とを重ね合わせて少し落ち込んでいるのである。
しかし直ぐに思い直して頭を振った。
いや、レベルアップはどうせ1000からが大変なんだしな。
最初の内にポンポンレベルアップしてもらわないと困るわ。
「よし……」
「ごめん、何の『よし』ですか、それ?」
「いや、何でもない。それより絶対に気を抜くなよ」
俺が辺りに視線を巡らせて忠告する。
同時に気配感知で感知していた敵が動き出す。
敵は……———下。
「彰、口閉じろ」
俺は彰を掴んで素早く跳躍する。
少し遅れて地面が隆起し、地面の中から何本もの太い木の根が現れた。
地面から出てきた木の根は即座に俺を射抜かんと弾丸のようなスピードで一直線に向かってきた。
「プラントか……彰、お前面倒なモンスターに好かれてるな」
「モテる男は辛いぜ」
「そう言えるお前のメンタルがキモいな」
彰と軽口を叩き合いながら、別の木の根を足場にして軽々と根の攻撃を避ける。
———プラント。
見た目は木そのものだが意思を持ち、自身の根を自由自在に動かして生き物を捉えて養分にするモンスター。
俺のダンジョンでも70階層辺りで出現したモンスターで、レベルこそ大分低いが倒すには隠された核を破壊する必要があり、当時の俺とクロを酷く苦しめた。
「よくも昔は散々手こずらせやがったな」
俺は彰を脇に抱えたまま舞うように根の包囲網を抜け、その勢いのままに蹴りを放つ。
プラントも止めようと幾重にも根を重ねて防御体勢に入るが……蹴りを止めることは出来ずに風穴を開けられ、本体への接近を許した。
「彰、よく見てろよ。あれが本体だ」
俺は森の中を駆け抜けながら他の木に混じってそそり立っている一本の木を指差す。
その木は一見普通の木に見えるが、幹の割れ目から瞳が幾つも付いていた。
「キモっ」
「だろ? ただ、これからはお前も戦わないといけなくなるからな」
俺は一直線にプラントの本体へ駆ける。
その道中では再生した根が襲ってくるが……。
「邪魔すんな」
俺の身体から放出された白銀の魔力によってその動きを拘束される。
動きを止められたプラントの根を眺める彰が羨ましそうに言った。
「やっぱり良いな……それ。俺もやりたい」
「お前には無理だ。諦めろ」
「酷くない!?」
「そんなことより口閉じてろよ。舌噛むぞ」
「ふっ……もう遅い。さっき噛んだばっかりだぜ。超痛え」
彰は目尻に涙を浮かべる。
本来なら舌を噛みちぎってしまうが……彰はレベルアップによって身体が頑丈になっているので『痛い』の範疇に収まっているのだろう。
「相変わらず馬鹿だな、お前」
「五月蝿いよ。それよりさっさと倒して! 俺また酔っちゃう!」
それは面倒だな。
俺は加速し、木の幹を足場にして1秒と経たない内にプラントの目の前まで辿り着く。
拳を握り、プラントの眼前の地面をぶん殴った。
「何してるんだ、維斗?」
「まぁ見てろ」
砂埃が晴れると、土の中の根にぐるぐる巻きにされた核が現れた。
「あれが核……?」
「そうだ。それと……彰、これやるからお前が仕留めろ。因みにダブルアクションだ」
「え、ちょっ、ああもうやけっぱちだ!」
俺から唐突に青と黒のリボルバーを受け取った彰は、直様引き金を引く。
すると
———パァンッ!
音速を遥かに超えた弾丸が根に穴を開けて核を破壊した。
「ギュァァァァァァァ!?!?」
「え、木が何で喋るんだよ」
「それは俺も知らん」
核を破壊されたプラントは悶え苦しむ様に断末魔を上げて急速に萎れていく。
最後には握れるほどの太さになって動かなくなった。
「あ、レベルアップしたわ」
「いいぞ、彰。プラントのレベルは200前後だから沢山レベルアップ出来るぞ」
「……あと何回繰り返すんだ?」
彰は俺との長年の関わりのお陰か意図を理解し、恐る恐る問い掛けてくる。
そんな彰に、俺はケラケラ笑いながら無情にも告げた。
「———これをあと100回以上かな」
「俺は帰らせて貰おうかな」
「無理だ。ほら行くぞ」
俺は彰を脇に抱え、一瞬で本体の下へと移動した。
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