第15話 ヤバい奴、美少女と出会う
「———維斗ぉおおおおおお!!」
「おぉ……ハイプラントじゃん。そんな厄介な奴をよく連れて来たな」
「俺は木じゃなくて女の子に好かれたいよぉおおおおおおお!!」
彰が叫びながら通常のプラントの2回りほど大きいハイプラントに銃弾を撃ち込む。
しかし、放たれた銃弾は通常よりも遥かに太くて硬い根の半ばで動きを止めた。
「き、効かない……? このリボルバーって弱いのか?」
彰が驚愕に表情を歪めて自身の手にある青と黒のリボルバーを眺めていたので、俺はプラントを核ごと破壊しながら答えた。
「一応レベル700相当のダメージ量と貫通力を誇るリボルバーだぞ。俺の持ってる銃の中でもそこそこ強い方だ」
「なら何で効かないんだよ? アイツの方がレベル高いの?」
自身の下に迫り来る根に対して、牽制代わりに発砲する彰は、全く効いていないのを確認して直ぐ様逃げに転じる。
絶体絶命、窮地の状態である彰の隣で俺は首を横に振る。
「ハイプラントのレベルは高い奴でも350ちょいだ。お前の銃弾の食い込みを見るに……まぁ300前後ってとこかな」
「クロ先輩、やっちゃってくだせぇ!」
彰に煽てられたクロが一瞬俺の方を見る。
どうやらやって良いのか俺の指示を待っているらしい。
俺が小さく頷くと、クロは彰の頭の上から飛び降りる。
音もなく地面に着地したクロは、禍々しい青白い亀裂の入った漆黒の角と瞳を緑色に光らせた。
「キュッ!!」
クロが鳴くと、突如地面からプラントの根の様なモノが現れる。
それもハイプラントに比肩する程の強度と大きさの根。
「キュッ、キュッ!!」
クロの角と瞳が一際輝く。
更に地面から数本の根が突き出し、ハイプラントの根を縛り上げる。
「す、すげぇ……これがクロ先輩の力……」
「クロにしてみればお遊戯レベルの弱い魔法だけどな」
「わぁお、クロ先輩強すぎですぜ」
後ろをチラチラと振り返りながらクロをキラキラと瞳を輝かせて見る彰だったが、俺が銃弾を渡したことでスンッと顔を真顔に変える。
「何だよこれ」
「お前が倒すための特別な銃弾。クロはあくまでお前がハイプラントの懐に入るための足止め係だからな?」
「やっぱりそうなるんだね」
彰は諦めた様に6発の銃弾を受け取り、素早くシリンダーに装填する。
そして身を翻し、ハイプラントの下へと走り出した。
「ブォォァォァ!!」
「キモい声だなコラ! 植物が声帯ないのに喋んなよ!」
彰はクロを追い抜かすと、クロから逃れた根が格好の獲物とばかりに襲い掛かる。
すかさず彰は発砲。
———パァン!
放たれた銃弾は音速を超えてハイプラントの根を穿ち———時間差で爆発を巻き起こして根を破裂させる。
「おぉ、凄いじゃん! 爆発弾か!」
「ギュァァァァァ———!!」
ハイプラントは悲鳴を上げ、格好の獲物から殺すべき敵へと認識を変えたらしい。
しかし、認識を変えるには……あまりにも遅かった。
「お前の急所は見抜いてんだよ」
彰は片手でリボルバーを持ち、狙いを定め、
シリンダーが回り、装填された新たな銃弾が撃鉄によって打ち出され、銃身の電磁力によって加速して発射。
———パァンッ!
銃弾は根の僅かな隙間を縫う様に一直線に進み、ハイプラントのすぐ下の地面へ着弾、からの爆発。
爆発によって地面が抉られ、弱点の核が露出する。
彰は即座に3発を発射。
更に追随して残りの1発を撃つ。
同じ速度で放たれた3発は後から来る1発を護るように根を穿ち、爆発。
その爆風を諸共せず、残りの1発は寸分違わず核へと吸い込まれる様に着弾し、爆発によって粉々に砕いた。
「ギュルァァァァァァァ———」
ハイプラントは通常のプラントと同じく萎れて絶命する。
彰は息を切らしてその場に尻餅を付いた。
「はぁ……はぁ……勝った……」
「お疲れさん、彰。随分と集中してたみたいだな」
「いや……マジで死ぬかと思ったわ……」
「でも倒せたじゃん」
「まぁな。俺ならこの程度どうって事ないんだよ」
そう強気で言いながらも、彰の顔には疲労が見える。
俺は相変わらず変な所で強がりな彰に苦笑しながら、彰の体力が回復するのを待った。
「———どうよ、俺の銃捌き! あのプラントが瞬殺だぜ!」
「そりゃ良かったな」
「ふっ……今ならクロ先輩と多少なりとも戦えそうな気がする……」
数十分が経ち、彰の体力が完全に回復した様で俺達は森の中を歩いていた。
その道中でも何体かのプラントに出くわしたのだが……意外にも彰が一人で全て余裕で倒した。
ただそのせいで調子に乗り始めたが……。
「きゅっ」
「ぐえっ……ちょっ……死ぬって……」
クロに腹目掛けてタックルされて一瞬で撃沈していた。
「……調子乗って申し訳ございません……」
「きゅっ、きゅっ!」
「維斗、通訳宜しく」
「調子に乗る奴程すぐ死ぬってさ」
「これからは謙虚に生きます」
クロの忠告に身体をブルッと震わせた彰はコクコク何度も頷く。
これである程度の期間は調子に乗らないだろう……多分。
「てか一体いつになったらここから出れるんだよ……」
「俺の気配感知には…………何もいないな」
「ちぇ、どうせならモンスターがいればレベルアップできるのに」
彰は文句を垂れながらリボルバーを俺があげたホルスターに入れて立ち上がる。
だがここで、俺はそんな彰の肩に手を置いて言う。
「彰……少し此処で待っててくれ」
「え、どうしたんだ?」
「……ちょっと気になるモノを見つけてな」
俺はクロに彰を見張っておく様にお願いして鬱蒼とした森の中を駆ける。
実は先程、気配感知でモンスターの気配を探っていると……このモンスターの巣窟となった森の中に見知った気配を感知したのだ。
しかも何やら交戦中らしい。
「流石に無視するのは目覚めが悪いからな」
それも知っている人となると特に。
俺が感知した人間の名前は、
腰まで伸びる深淵のように黒い髪。
見れば吸い込まれそうな漆黒の瞳。
芸能界にもいない程に恐ろしく整ったクール系の顔立ちとプロポーション。
俺達が通う学校で超有名な美少女であり俺のクラスメイトでもある彼女。
そんな彼女が———。
「———くっ……ごほっごほっ……」
「玲奈、良い加減にしなさい。私と共に『異能連合』に入れと言っているのです。何故抵抗するのですか?」
全身傷だらけで咳き込み、顔立ちがとても良く似た女性に刃を向けられていた。
———————————————————————
面白い、続きが気になるなどと思って下さった方は、是非とも☆☆☆やフォロー宜しくお願いします!
また極力お返しするので、応援コメントも待ってます!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます