第13話 ヤバい奴、親友をレベルアップさせる

「———まず教えておくが……寄生草は草のくせに心臓がある」


 俺はビシッと動きを止めた元人間達を指差して語る。


「その心臓は物凄く小さいが……殆ど人間の心臓と大差ないと思ってくれて良い」

「何だそのトンデモ設定。もはやアニメの世界にもそんなのないぞ」

「いや、心臓なかったら本気で詰みだろ」

「……ごめん、全く意味分からん」


 イマイチ俺の言葉を消化しきれていないらしく、彰は頭の上に『?』を浮かべて首を傾げる。

 ……コイツ、やっぱり馬鹿だな。


「要は、心臓がないと弱点を見つけるのが難しいんだよ」

「うん、で?」

「はぁ……これだから国語の成績2は困る」

「数学の成績2の雑魚がほざいてます———ごめんなさい」


 頭に軽い拳骨を食らった彰が目に涙を浮かべて謝る。

 ふむ……俺的には相当手加減したつもりだったが……。


 まだ一般人レベルの彰には拳骨が相当応えたようで、涙目になっていた。


「弱点を見つけられなかったらどうなる?」

「えー……ジリ貧?」

「そう言うこと」

「なるほど、やっと理解した。つまり……心臓をぶっ刺せば良いんだな?」

「全然違うけど今回はそうだ。今回寄生してるのが人間だから……人間の心臓と同じ部分を刺せば恐らく死ぬはずだ」


 寄生草は寄生した宿主の心臓に寄生して全身を侵食していく。

 だから心臓はその生物の心臓部分にあることが多い。

 心臓がない場合は……まぁ大方脳か脊髄のどっちかだな。


 俺自身、47階層で寄生草と出会った時は物凄く苦戦した。

 最終的にその当時、偶々俺が寄生された猿型モンスターの心臓をぶっ刺した時に寄生草も一緒に死んだのを見て初めて気付いた。


 まぁ、結局クロの雷が効果抜群なのに気付いてからは雑魚も同然で、良い経験値稼ぎ要員だったけど。

 あの時ほど時間の無駄を感じたことはないね。


 ただ今回は彰に倒して貰わないと意味がないので、心臓部分を刺して殺す他に方法はなかった。


「さぁ、お前の勇気を———って初っ端から躊躇なさすぎだろお前!?」


 言葉の途中で駆け出した彰の全く躊躇する様子も見られない正確無比な心臓への一撃には、流石の俺も驚きに声を上げる。

 しかし当の本人である彰は不思議そうに首を傾げていた。


「え? だってもうこの人は死んでるし……いや、流石の俺も生きてる奴が相手だったらここまで躊躇なくやらないし! し、信じてくれよ維斗!」

「…………まぁこの世界ではお前の行動が正解だし何も言わん」

「あ、レベルアップした。どうやってお前に見せれんの?」

「えーっと……【ステータス開示】って言ってくれれば、俺にも見えるようになる」

「さんきゅー。———【ステータス開示】」


 因みに俺の場合は、自分に見せる意思がない限りこの言葉を唱えたところでステータスが表示されることはない。

 システムに頼んだからな。


「さてさて、彰のステータスは……」


—————————————

吉乃よしのあきら

種族【人間】

年齢【16】

Level【11】

基礎ステータス

体力【60】魔力【72】

攻撃【60】防御【60】

敏捷【96】

固定ステータス

知力【50】魅力【90】

スキル

【錬成☆1】【銃術☆1】

—————————————


 へぇ……中々良いじゃん。

 錬成と銃術は相性良いし……とりま銃術を☆5まで上げさせて【鷹の目ホークアイ】と【標的ロックオン】を覚えて貰えば相当強くなるぞこりゃあ。


 俺が珍しいスキルに少し興奮して眺めていると……彰が自身のステータスを見て唐突に愕然と地面に膝を付く。


「ち、知力低い……! やっぱり俺って生粋の馬鹿だったってこと!?」

「逆に今まで馬鹿だと思っていなかったお前がおかしい」


 知力の平均は55〜65の間。

 つまり……うん、そういうことだ。


「まぁそんな落ち込むな。銃術と錬成スキルの同時持ちは中々いないんだぞ(システムから聞いた)。それに……その2つの相性は抜群だ」

「……マ?」


 神妙な面持ちで尋ねる彰にノリを合わせた俺は、同じ表情を作って頷いた。


「……ああ、マジだ。これなら魔力が持つ限り無限撃ちが出来るようになるぞ」

「お、おぉぉぉぉぉ……!! よっしゃぁああああああ!!」

 

 何度も何度もガッツポーズをする彰。

 まぁコイツは家族から相当バカにされてたらしいし、逆転の兆しが見えたから嬉しくなっているのだろう。

 

 俺が嬉しそうな彰を眺めていると……彰の後ろに一体の寄生草に寄生されたオークが現れた。

 それも完全に定着して身体につるが巻き付いている。


 チッ……誰だよオークの死体をあんな綺麗に残した奴……。

 寄生草って寄生した宿主が強いほど強くなるから面倒なんだよな。


 チラッと彰を見てみるが……残念ながら未だ浮かれている様子で気付いていない。

 はぁ……仕方ねぇな。


 俺が小さくため息を吐き終わる頃には、既に寄生草の目の前にいた。


「じゃあな」


 俺はそっと掌をオークに当てると———。




 ———グシャ。




 体内に魔力を一気に流し込んで、オークに寄生した寄生草を宿主ごと完全に消し飛ばした。


「ん? なぁ、維斗、今何かやったか?」


 他の寄生草を相手にしていた彰が問い掛けてくるが、俺は肩をすくめて知らぬ振りをした。


「別に? てか余計なこと気にせずお前は早く目の前の敵を倒せよ」

「いややってるわ! 今必死に戦って———ひっ!? ゆ、維斗! な、何か変な種飛ばしてきたんだけど!」

「あぁ、寄生草の種だ。当たるなよ? 寄生されるぞ?」


 まぁ当たっても5秒以内に除去すれば大丈夫だけどな。

 

 ただ、そんなこと知らない彰は種を避けながら更に『ひぃ!』と情けない叫び声を上げた。


「ぜ、絶対もしもの時は俺を維斗が助けてくれよ!?」

「わーってるよ」


 俺は軽く手を振り、近くの地面に座って彰のレベルアップを見守った。


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 現在全て一人称視点に改稿しています。

 改稿したモノには(改)とつけますので、もし良ければ見てみてください。


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