第11話 ヤバい奴、飲み込まれる(改)

「うっぷ……やべ……気持ち悪い……」

「すまん、お前が酔いやすいの忘れてた」

「ぶっ殺すぞお前……ちょ、ちょっとあそこの茂みで吐いてくるわ……うぷっ……」


 僅か1分弱で地上に戻ってこれたのだが……あまりのアクロバティックな動きに彰が完全に酔ってしまっていた。

 彰が口元を押さえ、ふらふらと近くの雑草の茂った草むらに吸い込まれるように歩いて行く。

 しかし———。


「ギャァアアアアア———ッッ!!」

「っ、ど、どうした彰!?」


 少し経った頃、唐突に彰が本気の悲鳴を上げるではないか。

 そのあまりの事件性のある声に、俺は本気で焦燥に駆られて彰の下へと走り出す。

 だが追いついてみれば……キョトンとしたクロと、そんなクロを指差して震える彰を見て安堵のため息を吐く。

 しかしそのため息を彰は呆れられたと捉えたらしい。


「な、何でため息吐くんだよ! 見ろよ、額に角が生えてる兎だぞ!? 絶対モンスターじゃないか! あぁ、俺を殺さないで下さいお願いしますぅぅぅ!!」


 始めは俺への追求だったのに、いつの間にか命乞いをする彰。

 ……何か悪いことしたな。

  

「あー……彰、その兎は大丈夫だ。俺の相棒だから」

「は? モンスターが相棒……?」


 彰は呆けた顔でクロと俺を見比べる。

 そんな彰を他所に、クロがやっぱり此処が1番とばかりに俺の頭の上に乗った。

 

「おう。名前はクロだ。クロ、コイツが俺の親友の彰。仲良くしてやってくれ」

「きゅっ!」

「あ、俺が仲良くされる方なんだ」

「コイツ、めちゃくちゃ強いぞ。オークとかコンマ秒で消滅させられるから」

「これから宜しくお願いしますクロ先輩!」


 鮮やかな動きでクロへと全力土下座を行う彰の姿に、クロはドン引きして俺の後ろに隠れる。

 何やってんだか。


 俺はクロを掴んで前に戻し、土下座をする彰の頭を叩く。


「アホ。クロがビビってるだろ」

「だって蟻が人間に絶対勝てないのと一緒で俺がクロ先輩に勝てないんだから、取り入るしかないだろ!」

「だからって土下座はすんな。ほら、コイツ結構おかしな奴だけど良い奴だから。あんま嫌わないであげてな、クロ?」


 本当にいい奴だからさ。

 馬鹿だけど。


「きゅっ!」


 クロは俺の気持ちが伝わったのか、てくてくと彰の前まで歩いて行き、ひとっ飛びで頭の上に乗った。


「お、気に入って貰えたらしいぞ。よかったな」

「マジで!? これで命が繋がる……!」


 わちゃわちゃしている俺達の前に、巡回中と思われる警察官が現れて声を上げた。


「君達! そこで何をしているんだ! まさか……さっきの大きな音も君達か!? 少し話———あ、待ちなさい! 少し話を聞かせてくれ!」


 俺と彰は目配せして一瞬で互いの考えを読み取ると———警官が話している最中に背を向けて逃げ出した。









「———な、何だよここ……」

「大方死体置き場だろうな。あれだけ死んだんじゃ処理し切れないだろ」


 警察官から逃げている途中に見覚えのない倉庫の様な建物を見つけた俺達は、人がいないのを確認して隠れるべく侵入した。

 しかし何と、建物の中にはシートを被せられた大量の死体が放置してあった。

 まぁ不幸中の幸いとも言うべきか……意外にも死臭や蝿の発生などはない。


「うわっ……まだ外に警官いるじゃん」

「まぁ直ぐ居なくなるだろ」


 俺は彰が見ていない間に緑のシートをめくって死体を確認し……瞠目する。


 ……はぁ? 

 何で死体の腐敗が全く見られないんだ? 

 流石におかしいだろ……どうやって死体の腐敗を防いでるんだよ。


 俺が顎に手を当てて考え込んでいた所を彰が肩を叩く。


「維斗……あれなんだ?」

「あれ?」


 彰の指差した方向には……床に床下収納の様な扉が設置されていた。

 しかし俺から見える範囲では鍵が掛かっているわけでもなく、それが逆に怪しさを倍増させていた。


「……行くか?」

「行くっきゃないだろ。ここに居たら頭おかしくなるわ!」


 俺の問い掛けに即答した彰は、ズンズンと扉に向かって行き……。


「頼む、開けてくれない?」

「……」

「そ、そんな睨むなよ……へへっ、頼みますぜ、兄貴達」

「はぁ……ったく」


 三下ムーブが上手いな、お前は。


 俺はため息を吐いて彰の代わりに扉を開けようとするが……少し引っ掛かりがあったせいで扉ごと綺麗に外れてしまった。


「おまっ、壊して……」

「……壊してない。いいか、彰。扉は断じて壊れてないんだ。あーゆーおーけー?」

「きゅう?」


 指摘した彰は、掛けられる俺とクロの両方向からの圧力に……。


「……うん、壊れてないよな!」


 あっさりと白旗を上げ、逃げる様に真っ暗な穴の中を覗き込んだ。

 覗き込む彰を支えながら、俺は尋ねる。


「どうだ? 何かあるか?」

「いや、特に何もな———」



 ———カチッ。



 彰の言葉を遮る様に、何かのスイッチを押した音が静かな部屋に響き渡ると同時に、突然部屋の床全体を飲み込む様に空間の歪みが現れ———。



「流石俺。数多の罠を見抜く力を手に入れていた様だ……」

「取り敢えずお前は後で殴る」

「いやごめんってぇえええええええ!!」



 俺達は他の死体共々空間の歪み———転移門に飲み込まれた。



———————————————————————

 もう少し……もう少しで戦闘シーンくるから待ってて……。


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