第10話 ヤバい奴、親友と再会する(改)

 ———世界にダンジョンが現れてから2週間。

 順調に家族のレベルアップが進み……絵梨達のレベルが遂に200を超えたことで、俺は自分が居なくても大丈夫だと判断し、家から出ていた。


「意外と政府の行動って早いんだな」

「きゅっ」


 周りに柵が建てられ、何人かの黒いバトルスーツの者達が護っているダンジョンの光景を見て、俺は零す。

 この光景を見るのは既に3回目だった。


「こらそこの君! 直ぐに家か避難所に戻りなさい。まだ子供だろう? 君、名前———あ、待ちなさい!」


 このやりとりをするのも。


「全く……この世界では子供も大人も関係ないっての」

「きゅっ、きゅっ!」

「あぁ、子供は大人と違って精神が未発達だからなんじゃないか? 知らんけど。それより……中々引っ掛からないな、あの馬鹿」


 俺は先程から一向に気配感知に親友の反応がないことに少しずつ焦る。


 人の気配は沢山ある……でもアイツの気配だけが感知出来ないんだよな……。

 一体どこにいんだよ……。


「うーん……さてはアイツ、旅行にでも行ってんのか? 金持ちだしあり得るか?」

「きゅう?」

「あぁ、クロは会ったことないもんな。まぁ面白い奴だよ」


 なんて言いながら、俺が少しずつ本気で他所にいるのではと思い始めていた頃———遂に気配感知に引っ掛かった。

 しかし、1つ文句を言わせて欲しい。


 

「———アイツ、幾ら金持ちだからって自宅の地下に潜るのは狡いだろ!?」



 それも、俺でさえ近づかなければ気付かない程の地下深くだった。

 後で必ず苦情を訴えてやる。


 俺は憤慨しながら親友が隠れる地下の真上に到着する。

 しかし、巨大な邸宅が完全に倒壊しているせいか、どれだけ探してみても下に降りるエレベーターや階段的なモノが見当たらなかった。


「……電話に出るかな?」


 てか気配感知で探すよりスマホでL◯NEか電話した方が早かったくね?


 今更ながらに人類の技術の結晶たるスマホの存在を思い出した俺は、素早く指紋認証を通して親友に電話を掛ける。

 

『プルプル……プルルル……プルルル……』


 2コール目、応答なし。

 まだ余裕の笑み。


『プルルル……プルルル……プルルル……』


 5コール目、応答なし。

 真顔に早変わり。


『プルルル……プルルル……プルルル……』


 8コール目、応答なし。

 スマホからミシミシとなってはいけない音が鳴り始める。


『プルルル……プルルル…………あ、は、ハロー……げ、元気か親友……?』

「おう、めっちゃ元気だぞ。この溢れんばかりの怒りを除いたらな。今さ、お前の家にいるんだけど……助け、いらないよな」

『…………あ、あの……本当に誠に申し訳ございません、直ぐ様助けに来て下さい。絶賛閉じ込められてて、食料も尽きたし……地獄か天国行き列車の発車カウントダウンがとんでもないスピードで爆走してるんです!!』


 音割れ気味に聞こえる親友の切羽詰まったような声と後半の意味不明な言葉に、俺は露骨に顔を顰めてスマホを耳を離す。

 

「うるさっ……因みにどんな方法でもいいのか?」

『?? 俺を助けてくれるならどんな方法でも良いけど……』

「じゃあそこで頑丈な鉄の机かなんかの下に隠れてろよ」

『は?』


 電話越しに困惑の声が聞こえてくるが、その時には既に俺は振りかぶっていた。

 そして———。



「はッ!!」



 そこそこの力で振り抜いた拳が地下室の真上の地面に衝突。

 『ドゴンッ!』と言う轟音と大量の土が舞い上がり、地面に深さ10メートル以上のクレーターが出来る。


『な、何だ!?』

「待ってろ、直ぐに行くからな」

『……あ、やっぱり自分で———』


 何か言い掛けた親友との電話を切り、俺は再び地面を殴り始めた。









「———おっす、彰」

「いやいやいやいやいや……え、人間お辞めになられました?」

「元からだよ、気にすんな」

「もっととんでもない単語が聞こえた気がする」


 拳のみで地下の部屋に辿り着いた俺にイヤイヤbotとなった親友改め吉乃よしのあきら

 地毛の薄い茶髪の彰は、その整った顔で渾身の間抜け顔を晒していた。


「いや、どうやって来たん?」

「拳で」

「21歳ちゃうやろ。てか嘘つけ!! 拳でこんなこと出来るかッ!!」


 ただ、彰がそう叫ぶのも当たり前で、広さ30畳程あるだろう地下室の天井部分にポッカリと穴が空いていた。

 その穴に空から降り注ぐ冬特有の穏やかな太陽の光が差し込み、俺の片耳に付いたピアスがキラリと光る。

 因みにクロは外で留守番している。


「……まぁさ、取り敢えず良い加減そこから出てこいよ」


 俺は呆れながら未だに鉄製のテーブルの下に隠れている彰を指摘する。

 彰は指摘されてやっと思い出したかのように、恥ずかしそうに咳払いをしてテーブルから這い出てきた。


「べ、別に怖くて隠れてたんじゃないから。あくまで自分の命のことを思って仕方なく隠れただけだから」

「つまり死にそうで怖かったから隠れてたんだな、お疲れさん。てかそんなのどうでも良いけど……幾ら地下室っつっても深くに作り過ぎだろ」


 標高マイナス1000メートルとか嘗めとんのかコイツ。

 俺がプレイヤーじゃなかったら逆に高山病なってるわ。


 そう、何と彰の隠れていた地下室は地上から約1キロ程下に作られていたのだ。

 正気の沙汰とは思えないな。


 俺は一先ず脱出する為に彰をお姫様抱っこする。

 すると、一瞬間を置いて自分と俺を指差した彰が真顔で口を開いた。


「どういう状況なのかしら、維斗君?」

「乙女口調やめろ吐く」

「待て。女の子のリバースならまだギリギリ許せるけど、男のリバースは許せないからな!? ほら、吐くなら降ろして!」

「なら今からお前を降ろして、掘った土をお前の上にリバースしてやるよ」

「生意気言ってごめんなさい」

「よし、上に行くぞ」

「だからどうやっ———てぇえええええええええええええええ!?!?」


 彰の驚愕の絶叫を聞きながら、巨大な穴の側面を軽快なステップで駆け上がった。


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