第16話 魔物の群との戦い
―― あらすじ ――
賊を捕まえたら魔物が集まってきました。
―――――――――
賊の捕縛が終わり帰路に着こうとしたところ大量の魔物に囲まれ迎撃をすることになった。
実のところ、魔物の習性についてはよくわかっていない部分も多く…はっきりしているのは負の力に激しく反応をすることくらいだ。
「指揮官、都市の騎士団との連絡はつきましたが…距離もある為、到着までには時間がかかるかと」
「そうか。群の規模のほうはどうだ?」
「小型がメインに少数の中型が混じって二千ほど…ですが、まだ離れた位置から集まってきているようです」
「騎士の数が普段よりも多い分、可能性はある。と思えば少しはマシだろうか」
「訓練生もシミュレーターでは良い動きを見せていましたから…さらに、でしょうか」
最初に姿を見せた狼型の魔物は注意深くこちらの様子を窺っているが、その後方からドスドスと激しい足音が聞こえる事からすぐに状況は変わるだろう。
徐々に足音が大きくなり目の前にいた魔物の横を大柄な魔物が走り抜けてくる。
飛び出してきた魔物は緑色の肌を持ち足が三本あり、左右で長さや太さの違う腕、顔には大きく不気味な一つ目と左右で大きさの違う牙のある口…体長が3mもあり異形の奇形種に分類されるゴーガルと呼ばれる魔物だな。
ゴーガルが飛び出した影響で均衡が崩れたのか、草木に隠れたりして様子を見ていた他の魔物達も一斉に飛び出してくる。
「一瞬で乱戦状態だな…!」
「倒しても倒しても森から魔物が出てきてキリが無い…」
洞窟入り口から中型兵装に乗った騎士が大型の兵器を使い、森から出てくる魔物を攻撃して数を減らしたりもしているが…それでも雪崩のような勢いで魔物達が襲い掛かってきている。
訓練生ということで前衛の先輩騎士達よりも後方に配置されていた俺達だが…すぐに最前列にいる先輩達と同様に大量の魔物に囲まれてしまう。
「トトキ、大丈夫か?」
「囲まれた場合の訓練はやったけど…いまいちな評価しかもらったことないよ…」
「そんなこと言える余裕があるなら大丈夫そうだな」
といったものの、実際は非常に良くない状況だ。
初めは密集した陣形で魔物の群を受け止めるはずが…中型の魔物の突進に合わせて雪崩れ込んできたことにより、いくつかに分断された上に囲まれてしまった。
さらに入り口から射撃をしている騎士の兵装は森から出てくる魔物相手で手いっぱいとなっており、援護は期待できそうにない。
それからなんとかして洞窟入り口まで徐々に後退してきたものの、長い時間戦ったわけではないにもかかわらず騎士達は傷だらけとなり中には戦闘に支障が出るほどの傷を受けて洞窟内に下がった者もおり…その中にはトトキもいた。
洞窟の入り口まで後退した際に少しの油断からできた隙を突かれて大けがを負ってしまった。
この場での応急処置では足りず、すぐに危険とはならないもののあまり時間をかけていられなく…都市の治療施設に連れて行かなくてはいけない。
そして今は再び密集陣形を取ることができ、なんとか魔物の群を押しとどめているが…これ以上に離脱する者が出ると陣形の維持ができずに崩壊してしまうギリギリの状況が続いている。
(全員、疲労で限界が近そうだ…まだ何とかなってはいるが…ところどころ危ない場面がある。それに兵装の弾薬と魔力の残量がだいぶ減っているようだ…)
森から飛び出してくる魔物の数はそれなりに減ってきたが…未だにギリギリなこの状況で兵装での援護が無くなったら待っているのは全滅だ。
なんとか打開策を見つけられないかと必死に考えていると、洞窟の奥から複数の騎士達が走り出てくる。
「っ!? お前たち怪我はどうした!?」
「申し訳ありません!賊からの押収品を使いました!」
「状況が状況だ、問題はない!限界が近いやつらの援護を最優先だ!行け!」
「とぉぉぉぁぁぁああ!!」
「トトキ…!?」
ついでに少し遅れて良く知った顔のやつが白く光りながら走ってきた。
白い光…この土壇場で勇者として覚醒をしたようだが…覚醒時に傷が癒えることは無いし、賊の押収品の中にあった回復薬では治しきれないほどの傷を負っていたはずだ。
「リフ!考え事は後だよ!」
「っ…すまない。…光が?」
何があったのかを考えていると注意され肩を叩かれた。
すると俺もトトキほどではないにしろ白く光り始める。
それは勇者のサポートを行う者に与えられる女神達からの加護が目覚めた証でもあった。
(そうか…勇者が覚醒したから俺に与えられた女神の加護も目覚めたのか…だけど…以前にはなかった何かがあるような…?)
勇者の覚醒と同時に女神の加護も発動するのは前世でもあったことなのだが…当時は色々と騒ぎになってしまい少し忘れていた。
ただ思い出した記憶には無かった感覚があり…それが何なのかわからなかった。
「押し返すぞ…!」
「よっし!久々に群の退治といきますか~!あれ…久々に?」
「ん…?トトキお前…いや、今は目の前の魔物の群に集中しろ」
「そ、そうだね…うん。頑張って切り抜けよう」
(まさかとは思うが覚醒と同時に記憶も戻って…いや、完全に思い出したって感じではなさそうだったか…)
怪我の治った騎士が復帰したことや、覚醒した勇者であるトトキと女神の加護の目覚めた俺が加わったことにより魔物の群を徐々に押し返すことができ…最終的にけが人は多数いるものの死者を出すことなく、すべての魔物を討伐することができた。
その後は都市から応援が到着し大量の魔物の屍骸に驚かれたりしつつも都市にある騎士団の拠点まで戻ってくることができた。
移動中も任務の報告の後も俺達が白く光っていた事や獅子奮迅の活躍をした事が騎士団で話題になり…みんなからもみくちゃにされてしまい、その日はトトキに何があったのか聞きそびれてしまった。
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