第12話 騎士と模擬戦

 ―― あらすじ ――


 騎士団の拠点に行きました。


 ―――――――――


 マリエスタ先生との話を終えると整列するように言われた。


「それじゃあ、そちら側から順番にいきましょうか。これは皆さんの実力を知るための試合です。全力を見せてください…あぁ、それなりの実力の騎士が相手を勤めますので全力でも問題は無いと伝えておきます。」

「ははは…マリエスタ隊長の補佐のメアトールだ。よろしく」


 対戦相手は過酷な弱肉強食の都市外で活躍している経験豊富な騎士だ。学校を卒業したての子供では軽くあしらわれて終わりだろうな。

 実際に俺達より先に対戦した訓練生達との戦いを見るとかなり余裕がありそうだ。


「次、トトキ・デルワイス!」

「はい!…よろしくお願いします!」

(トトキも今の時点では他の訓練生より善戦する程度だろうな…)



 名前を呼ばれて移動したトトキは対戦相手と向かい合うように立ち、訓練用の剣を構えた。

 トトキは俺と一緒に昔から鍛えていたから能力はかなり高いのだが、都市の外には出る事ができない為に実戦の経験はない…この試合で経験の差は非常に大きく出るだろうな。

 相手の騎士は基本的に相手に先手を譲るようにしているようで、最初に仕掛けたのはトトキの方だった。


「はぁ!」

「ぉ!魔法の発動は丁寧で早いし、動きもいいな。基礎鍛錬はしっかりやってるみたいだな!」

(褒められてはいるが、動きを読まれて軽くいなされてるな…)


 最初は魔法を使い大きな火の玉を騎士に向かって飛ばし、火の玉に身を隠しつつ素早く回り込んで剣を繰り出したが、火は魔法障壁で消され剣は振り向いて受け止められてしまった。

 その後も色々と試しているようだったが全て見破られ、余裕を持って対処されている。

 それどころか甘くなった攻撃は受け流されバランスを崩される場面もあり、持ち前の反射神経でなんとかしてはいるようだが…そのうち崩れるだろうな。


「せいっ!やぁ!」

「だんだん動きが良くなってきているな。だが、そろそろ時間切れのようだ」


 この短時間の模擬戦の中で動きが目に見えて良くなっていたのは…さすが勇者とでもいうべきか。

 それに前世と違って幼い頃から鍛錬をしてきたからな、経験を積めば前世よりも強くなることは間違いないと思う。


「よく鍛えられていて動きはよかった。ただわかりやすい動きだったから、相手に読まれていたな?まぁこれは経験を積めば良くなっていくだろう。これからもがんばれよ」

「はい!ありがとうござました!」


 模擬戦を終えてこちらに戻ってきたトトキは…ちょっと笑っていた。


「おつかれ。どうだった?」

「ありがと。ん~全然だった…普段より動けていたとは思うんだけどなぁ」

「動きはよかったぞ?魔法の方もミスは無かったみたいだし」

「そもそもの地力が違うってやつ…かな?」

「それもあるが…一番は経験の差だろうな」

「そっかぁ…」

「それでは次なのですが…ここから別の騎士に交代となります」


 トトキの模擬戦が終わると対戦相手の交代を告げられる。

 まぁ連戦だったからな…正確に実力を測るためにも早めに交代するのだろう。


「次からは私が相手を務めさせていただきます」

「私の隊の副隊長のオイティーです。さっきまで相手をしていたメアトールより強いですよ?」


 見たところ同じ魔装士でも剣が得意そうだったメアトールさんと違い、オイティーさんは魔法が得意そうな感じがする…だが、魔装士である以上は剣もそれなりに使えるはず。

 対戦相手の観察をしていると名前を呼ばれた。


「よろしくお願いします」

「はい、よろしくお願いします。君はまるで実戦経験があるような雰囲気ですね…?しかも歴戦の勇士のような…」

「俺に実戦経験はありませんよ。ついこの間まで学校に通ってたんですから」

「ふふっ…存じておりますよ。ただ歩き方や立ち姿、構えからそんな印象を受けたものですから」


 特に隠そうとは思っていなかったがまずかったか…?

 まぁ隠そうとしても模擬戦が始まればボロが出るだろうから無意味だろうな…。


「それでは…はじめッ!」

「行きます」

「っ!やっぱり実戦経験のない者の動きじゃないですよ…!」

「…シミュレーターのおかげです」

「他の子達も同じはずなんですがねぇ…!」


 初手はトトキと同じように火の魔法を飛ばし陰に隠れて接近するが、回り込むと勘違いさせるために影を魔法で動かして相手の横を通過させる。


「くっ…フェイントか!」


 見破られてしまい回避されてしまったので、すぐに地面に魔力を流し相手の周囲の土で移動ルートを制限するように棘付きの壁を作り上げる。


「土壁…でも、あま…硬くないかコレ!?」


 壁が無い移動先には罠があると判断し壁を魔法で破壊しようとしたものの破壊できなかったため、騎士が驚いた声を上げる。

 壁には魔力を乱し魔法を弱める効果を練りこんであり、魔法を使う魔物相手にも通用する土壁なのだ…まぁ学校卒業したての子供が使うようなものじゃないけど。


「どの魔法も剣も実戦向きで経験者のような動きだなっ!」

「色んな人にアドバイスをもらって頑張りましたからっ」


 すぐに相手も手加減をやめて割と本気を出してきた。そうなると地力の差でこちらが押され始める。

 いくら前世の記憶があるといっても体は子供なため、どうあがいても力では押し負けるのだ。

 魔法の出力を上げて肉体を今以上に強化してもいいが…まだ子供の身体では反動が大きくて後が怖いからなぁ。

 その後、剣では押し負けると考え魔法を主軸に戦ってみたが俺の手が痺れ始め、隙をついて切りかかろうとした時に剣を取り落としてしまい、その隙に剣を突き付けられて決着がついた。


「いやぁ、危なかった!」

「その割に、まだ余裕がありそうでしたけど…」

「さすがに騎士として活動してきたからね?体力とかで負けることは無いはずですよ。それに君も余裕はあったんじゃないですか?」

「あれ以上にやると後がひどいので余裕があったわけじゃないです…。」


 勝てるとは思っていなかったものの、もう少し善戦になるとは思っていたが…思ったよりも差は大きかったようだ。

 将来、勇者と並び立つためにも騎士団での活動でもっと鍛えないといけないかもしれないと思った。

 …負けてちょっと悔しかったのは内緒だ。

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