第6話 実力試験を終えて

 ―― あらすじ ――


 なんか知らんもんが増えてた。


 ―――――――――


 筆記試験・技術試験を順調(?)に終えて、昼休憩を挟んだら最後の試験となる。


 昼休憩中は各々好きな場所で行動している。そんな中で俺たちは弁当をもって学校の食堂へと来ていた。今日は試験があるうちのクラスしかいないうえに、ほとんどの生徒は日当たりの良い場所で食べているのか食堂は貸し切りに近い状態だ。一応、弁当を持ってきていない生徒用に注文も受け付けているが利用者は片手で数えても指が余る程度だ。


「リフ君、おかず交換しよ~?」

「いいけど、どれを交換するんだ?」

「これと…それ!」


 トトキが交換したがったのはアスパラスの肉巻きとトマティスのチーズ乗せだ。


「相変わらずアスパラスが苦手なんだな?」

「だってたまにだけど繊維が歯に挟まるんだもん…。」

「まぁわからないこともないけどな。とはいえ少しは食べろよ?」

「わかってるって。味は別に嫌いじゃないから平気だし。」


 弁当を食べ終わりのんびりとした時間を過ごした後に待っているのは最後の試験でである魔力試験だ。

 まず魔力試験は3つの項目に分かれている。一つは保有量だ。これは肉体側の素質で体内に保有できる魔力量を計測する。これについては鍛えれば増やすことができるので体力試験のように現時点の数値を調べる目的のものだ。

 次に操作。体内を巡らせることから始まり手に持ったものなどの物質に巡らせたり表面を覆ったり…と様々なことができる。これをどこまで自在に行えるかを魔力を視認できるようになる機械を使って調べられる。

 最後に変化。これは魔力を変化させ様々な効果を発揮させるための技量のことだ。ただ魔力を付与しただけでも一定の効果は出るが変化させることによってより強い効果を得るだけでなく付与しただけでは得られない効果を生み出すことができる。それだけではなく魔法を使う際にも効果を高めたり形状や性質を変えたりもできる。これは測定器を使い表示された課題をこなす過程で評価が付けられる。


 俺とトトキは小さい時から共に鍛えてきたので3つともかなりの高評価を得られるはずだ。特に俺は操作と変化を前世で死なないために必死で鍛えたし、死線を越える度にも鍛えられた。故に加減しないと異常な評価になってしまうだろう。さすがにこの時点で目立ち過ぎるのは良くない…。そうだ、トトキには技術試験の時のことも含めて加減していることに気付いても指摘しないように言っておかないとな。あとは姉と妹にも言っておかないと…。


「俺とトトキは同じくらいの量だったか。」


 さすが勇者というべきか?俺よりも後から鍛え始めたにもかかわらず同じくらいの魔力量とは…。

 魔力量については操作の訓練で体内を巡らせていると肉体が魔力と馴染んで体内に保持できる量が増えるのだ。とある研究者は細胞内に保持するための袋があり魔力を巡らせることにより鍛えられているという説を唱えていたな…。立証できずに真偽不明扱いになったんだったか…。


「量だけはね~?操作も変化もまだまだリフ君には敵わないよ。」

「先に鍛え始めたからな。負けるわけにはいかないさ。」


 操作と変化の試験については自分の前にトトキがいたので、それを参考に同程度になるよう加減した。それでも同年代の中で断トツだったために少し目立ってしまったが一人だけ頭抜けていた場合よりはマシか。

 試験が終わった者にはすぐに移動するよう指示が出るためあまり他の生徒の実力を見ることはできなかった。素質がありそうな子がいたら仲良くなっておけば、将来トトキの助けになったんだが…今後に期待…かな。


 教室へと戻ってきた俺たちは教師から少し話を聞き解散となった。結果は次の登校日に生徒手帳代わりの端末に入力された状態で渡される。この生徒手帳は防犯グッズの役目も持っており緊急時には学校と付近の騎士と騎士団の支部に同時に救難信号が送られる機能がついている。他にも防御魔法を内部のバッテリー又は登録された所有者が魔力を送り込むことで展開・維持ができるようになっていたりもする。


 それはそれとして試験後の休日である。日課の鍛錬を済ませた後、姉と勇者を連れて近くの商店街に来ていた。


「試験が終わってなんだか少し落ち着いた気がするよ~。」

「問題ないとわかっていても緊張はするからな…。」

「2人共お疲れ様だね。今日はのんびり過ごしましょう?」

「お姉さん、ありがとう~。…お腹すいたから屋台から見ていこ~。」


 今日は鍛錬の後に汗を流してそのまま出かけたので空腹だった。


「鍛錬の後だから肉系のものが食べたい欲求が…。」

「それならミートマのタレ串が食べたいかも!」

「串の店ね!あそこ、おいしいよねぇ。」

「なら、ミートマに向かうか。」


 商店街には名物の様なものはないもののおいしい店がいくつもあり学生も帰りに寄ることも多い。今回はミーとマーダステの店…略してミートマと呼ばれている串をメインに販売している店に行くことになった。店の中に入ると香ばしい匂いが襲いかかってくる。


「空腹にはつらい香りだな…。」

「はやく買って食べよう~」

「お姉ちゃんはいつものでいいからね?」


 俺が代表してまとめて注文し受け取ると店の奥にあるテーブルのあるスペースに移動する。


「飲み物のこと忘れてたな…。」

「ぁ~…。」

「言われてみたら…セルフのお水でいいかしら?」

「ん、取ってくる。」


 飲み物を買い忘れるアクシデントはあったりはしたものの腹ごしらえを済ませた後は買い物の時間だ。買いたいものがあるわけではないのでウィンドウショッピングだが…。


「リーくんとトトくん。お姉ちゃんとおそろいのキーホルダーとかつけてみない?」

「いくつかついてるけど…どれのこと~?」

「どれでも?二人が良いなってやつ?」

「俺は邪魔に感じそうだから…」

「えー!お姉ちゃんとおそろいの付けてほしいな~?」


 あんまり鞄の類には装飾を付けたくないんだけどな…。厳しい環境に長く居た影響で邪魔になりそうなものがついてたりすると落ち着かないんだよな…。だけど姉はおそろいで付けてほしそうだ…一つくらいならいいか…つけていれば案外…慣れるかもしれないしな…。


「トトキはどれがいい?俺は邪魔になりにくそうなものが良いと思うんだが。」

「僕はこの白いモフモフのが良いと思ってるけど、どうかな?」

「いいね!お姉ちゃんもこれ、お気に入りなのよ~。」

「まぁ…邪魔になりにくい形だしいいと思う。」


 トトキが選んだのは先端が少し黒い白色の尻尾の様なアクセだった。少し触らせてもらったが触り心地も良く悪くない選択だと思う。…本当に触り心地いいな、これ。


 こうしておそろいのアクセを付けることになり上機嫌の姉と親友との買い物を日が暮れるまで楽しんで帰路に着いた。妹も学校に通う時に鞄に付けられるように同じアクセを買っておいたし、お土産も忘れずに買ったしご機嫌取りはバッチリだ。


 明日は試験の結果が発表され正式にクラスが決まる日だ。どんな人たちがいるのか少し楽しみだな。

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