第10話 父さん
小次郎は大変怒っていた
朝起きたら店も家も跡形もなくなくなっていた
どういうことなんだ
全く
家も店もというか
家族もいなくなっている
ただ、庭に小次郎だけがいた
「あれ?西村さんちどこ行ったたんですか?」
家の前を通りかかった近所の酒屋のオヤジが大声を出した
「俺が知りたいよ・・・」
とりあえず庭の外に出てみた
妻も子供達も犬も一体どこに行ったのだろうか
向かいの文房具屋の店先に太った少年がいる
どこかで会ったような気がしないでもないが
今はかまっている暇はない
電話をしたいが家ごとどっかに行ってしまった
途方に暮れて駅前に出ると、不思議なことに人っこひとり見当たらない
自宅周辺には確か人はいた
酒屋のオヤジ、そして、文房具屋の前で泣いていた少年
あの少年はいったい
この辺の子供ではなさそうだったが
とりあえず文房具屋に戻ってみる
先ほどの少年はまだそこにいた
いたのだが
少年は、巨大化していた
文房具屋の建物よりさらに
声も出せずに少年を見上げる
「僕・・・なんでこんなことに・・・」
「君はどこから来たんだい・・・?」
「覚えてないんだ・・・」
巨大化した少年が流した涙はボトボトと音を立ててコンクリートの地面に落ちた
「自分の名前もわからない、どうしてここにいるのかも・・・」
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