第2話 ドムの村を越えて


 セトとロゼは走っていた。追っ手は既に彼らを見失ったようだ。


「姉さん、あれがドムの……」

「セト、村が、村が燃えている……」


 セトらは足を止めたが、未だに状況を理解できていなかった。


「ドム神父は……!」


 走り出そうとするセトをロゼは止めた。


「セト! 村は危険よ!」

「姉さんっ!」

「仕方ないわ! 諦めましょう! ドムの村を迂回してカザック城を目指しましょう!」

「カザック城…… わ、分かったよ。姉さん」


 ロゼはカザック城のカザック王に保護を求めるつもりであった。

 セトもそのつもりで足を進めた。



 長い時間、二人は歩いた。

 暗い森を抜けると、カザック城が目に映る。


「姉さん、カザック城だ。しかしすんなりと中に入らせてくれるだろうか」

「…… その時は交渉ね」

「……」



【カザック城 正門前】


 一人の兵が立ち、こちらを睨む。


「何者だ」

「私たちはガルド人。故郷が焼かれて逃げてきた。中に入れてほしい」

「…… 証拠を見せよ」


 セトは少し狼狽えたが、ロゼはその兵を真っ直ぐに見つめていた。

 少し間が空くとロゼはセトの知らない言葉を口にした。

 門番とその知らない言葉で話し続ける。


「セト、許可が下りたわ。王に謁見する」

「! 姉さん、俺たちは一時的に保護され、状況が許せばドム神父に――」

「セト、〝カザック軍の戦士になる〟という条件を提示されたわ。王に保護を求めるにはそれが必須よ」

「俺たちはガルド人。カザック人とは少し違う」

「祖先は同じよ。戦場に駆り出されることになるけど、ガルドの地は侵さない、と」

「そんなうまい話……」

「今は一択しかないわ。受け入れましょう」

「姉さん……」


 セトとロゼは城門をくぐると王の間に向かった。



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ゼトランタ戦記 とろり。 @towanosakura

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