ホームレスK

高校生の内輪ノリ

ホームレスK

教育格差が原因で生まれる貧困。貧困の連鎖。かつての私はそちら側にいた。だが今は違う。

そうあれは雨の日の事だった……

私は路頭に迷い…ホームレスとして橋の下で惨めに生きていた。

毎日毎日、乞食をし、缶拾いをし、ゴミを漁る。人としての尊厳すらなくなりそうな生活。私を見た人は皆哀れみの目を向けるが何をする訳でもなく早々と立ち去る。珍しく足を止めた人がいると思えば石を投げられ、暴言を吐かれる。そんな生活をしていたある日の事…とても寒く雨の降る日だった。家のない私にはその寒さはとても辛く、死が近づいて来るのを感じた。そんな時だった、どこからか現れた一人の男が私に喋りかけた。

「大丈夫かい?Are you okay?」

「家は無いのかい?」

その男は私を心配したのか傘を貸してくれた。自分がずぶ濡れになることを気にせずに。

その後彼は私を近くのカフェに連れて行き暖かい飲み物を頼んだ。

「君、名前は何て言うの?」

「Kです。」

「そうか。私はD。今は高校の校長をしている。」

先生だったのか…。怪しくは無さそうだ。私は問いかけた。

「なぜ私なんかを助けたんですか?」

「それはね……」

彼は自分が校長をしている渋谷区某国際高校の話をし始めた。また、それと同時に教師が足りなくて探していると言う話もした。

「それとこれとなんの関係があるんです?」

彼は熱いコーヒーをすすり、それを置いたあとこう言った。

「教師にならないか?」

教師……?私が?この男は何を言っているのかと困惑した。だが男は気にせず話を続けた。

「私はね、自らをトップとする帝国を作りたいんだ。

君はホームレスだろう?このままいけば君はろくな人生をあゆむことが出来ないだろう。だがもしうちの高校で教師として働くというのならば、君の生活の安定を約束しよう。」

確かにこのままいけば私はろくな死に方をしないだろう。だがこんな私が教師になれるのか?

「でも私は…」

「問題ないよ。うちの高校は金を集めるために存在している。学力なんかどうでもいい。君は教科書を読んでそれを生徒に復唱し、私の指示に従ってくれればいい。」

本当にそんなのでいいのか?だが…このまま野垂れ死ぬくらいならやるべきかもしれない。この男は私にやり直すチャンスをくれたのだ。なら…

「やります。」

教師になってやる。私は新しい自分に生まれ変わる。

「そうか…ならばこれからは私の事をD様と呼びなさい。そして…ようこそ、「渋谷区某国際高校」へ」


こうして私は教師になった。そして20年後の今も、私は此処で教師をしている。あの男、Dのために…

そして私は今日もD様に忠誠を誓う……「ごきげんよう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ホームレスK 高校生の内輪ノリ @kanto_negacan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る