第42話 洞窟(4)
朝食をすますと俺は再びステータスボードに向き合った。残っているポイントはちょうど30ある。これを使ってスキルを習得していこう。
基本的には体力系をコンプリートしたいんだけど、ベーシックスキルの最後である「次元収納」も気になっている。
より正確に言うと「次元収納」を習得した後にベーシックスキルがどう伸びていくかが気になるのだ。
体力系コンプリートに加えて次元収納を習得するなら、必要ポイントは29になる。残り一ポイントでは夕飯のおかずが心配だ。
昨日みたいに大ムカデとケーブマッシュルームを見つけられれば問題ないけど、いつでも食料を発見できるとは限らない。
考え抜いた末、レンジャークラス(5)は後日習得することにして、持久力アップ(2)、パワーアップ(3)、瞬発力アップ(4)と次元収納(12)を覚えることにした。これで必要ポイントは21で9ポイントのあまりができる。
次元収納から伸びるツリーはこんな感じだった。
収納60リットル(10)冷蔵と冷凍が可能になる
→ 収納100リットル(12) → 収納2㎥(15)状態保存魔法
→ 収納8㎥(20) → 収納極大(25)
「よし、これでいいだろう」
ステータスボードから顔を上げるとぼんやりと俺を見つめるオリヴィアさんと目が合った。
「ごめん、待たせた?」
「い、いえ、そんなことはないです。ただちょっと見ていただけで……。どうぞ存分になさってください」
観察でもされていたかな?
「もう終わったよ。それじゃあ洞窟へ向かおうか」
自分のアックスを掴んで驚いた。昨日よりもずっと軽く感じたのだ。体力系を獲得したのがこんなに効いているのか!
ビュンビュンと振り回してみたけどあまり負荷はかかっていないようで、思い通りに斧が動く。
「まあ、また逞しくなられましたわね」
「これなら洞窟の奥でもやれそうだね。それと、今回から荷物は俺が全部持つからね」
「どういうことでしょうか?」
「次元収納のスキルを獲得したんだ」
「はあっ!? 三万人に一人の超レアスキルですよ!? どうしてアキトさんが……」
「キャンパーだからじゃない?」
よくわからないけど。
「キャンパーというのはいったい……。ちょっと驚きすぎて言葉が出てまいりませんわ」
「でもそんなにたくさんの荷物を収納できるわけじゃないんだ。せいぜい四十リットルまでみたい」
「それでもすごいと思いますが……」
これでパワーアップは完了だ。魔物が出てきてもある程度は戦えるだろう。
「じゃあ、移動魔法を使うから手を出して」
「は、はい……」
手をつなぐのは三回目だったと思うけど、いまだに抵抗があるんだなあ。軽くつないだ指先がいつもより熱く感じるんだけど、気のせいか?
俺たちは移動魔法で洞窟の入口まで飛んだ。
オリヴィア 8
わたくしは愚かです。別れのときは近いというのにベルテントでアキトさんと暮らすことを夢想してしまいました。
もう日記の中でくらいは自分の気持ちに正直にいたいと存じます。わたくしはアキトさんに心惹かれています。いけないとはわかっていても感情が抑えられません。
はたしてアキトさんはわたくしのことをどう思っていらっしゃるのでしょう。
もうすぐ島を去るわたくしにも、アキトさんは無償で優しくしてくださいます。そのたびに申し訳ない気持ちと、このまま甘えてしまいたい気持ちが折り重なって襲い掛かるのです。
ようやくわたくしも物語の中で読んだ文章の意味を実感できるようになりました。甘い悲しみとはこういうことなのでしょうね。
今日のアキトさんは逞しく、洞窟内でも危なげなく魔物と戦っていました。初陣とは思えない活躍ぶりに目を瞠ったものです。
魔光石は少ししか見つからなかったけど、二人で探検するのは本当に楽しかったです。ですが、それももう終わりです。
船が参りました……。
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