第30話 洞窟探索(3)
洞窟へ向かう日になった。ポイントは持ち越し分3に加えて天賦の才が5でトータル8になっている。
問題はポイントルーレットだったけど、こちらは24を出すことができた。
「トータルで32ポイントか、悪くない」
まずはカタログを開いて絶対に必要だと思ったこのギアを手に入れた。
ヘッドランプ
輝度:最大で三万五千ルーメン、照射距離:最大約五百メートル。
連続使用時間はおよそ五時間。完全防水。魔力充填式。
必要ポイント:4
こちらのアイテムは二つ手に入れた。8ポイントも使ってしまったけど、光源を確保したまま両手を自由にするにはこれしかない。
道具はひとまずこれでよしとして、残りの24ポイントはスキルに振っていくとしよう。
ひょっとしたら食材を確保できないかもしれないけど、最悪でもパンと水はある。多少の空腹を心配するより、生き延びられるようにする方が大切だ。
すぐ役に立ちそうなのは「ベースキャンプの祝福」から派生する防御系と「キャンプ道具の応用から派生する攻撃系のスキルだ。
防御系は、
「マジックシールド小」(3)から始まって「マジックシールド大」(4)「マジックウォール」(6)と繋がっていく。
一方攻撃系は、
「バトルアックスの基礎」(2)から「パワーショット」(3)、アックスファイター(5)となる。
まずは攻撃系を「アックスファイター」まで究めてしまうか。全部習得しても必要ポイントは10だから問題はなさそうだ。
ステータスボードのボタンを連打して攻撃系をすべて習得した。アックスファイターまで究めたところでツリーがまたもや枝を伸ばす。
「トマホークブーメラン」(5)→ 「ダブルトマホークブーメラン」(7)→
「斬岩戦斧」(12) すべてレベル10以上で習得可能。
今度出てきたのは斧を使った技のようだ。どれもトマホーク(手斧)を投げつける技である。
魔力を使って威力を上げたり、命中補正もされたりするようだ。すぐに習得したいけど、学べるのはレベル10以上になっている。
残りポイントは14あるので、次は防御系を身につけていこう。防御系を全部習得するにしても必要なポイントは13で足りている。
ただ、移動魔法・初級(5)も気になるんだよね。初級を習得すれば屋内で使えないという制限がなくなり、移動距離も半径十キロに延びる。いざというときは魔法で脱出も可能だ。
よし、防御系はマジックシールド小(3)とマジックシールド大(4)だけ習得して、移動魔法・初級にポイントを振ろう。
これでトータル必要ポイントは12で1ポイントあまるぞ。こちらは何かあったときのために取っておけばいい。
俺なりに考えてポイントを割り振った。さっそく習得したスキルを試してみるか。まずは攻撃系の「バトルアックスの基礎」と「パワーショット」、「アックスファイター」だ。
手持ちのアックスを持って素振りをしてみた。
ビュンッ! ビュンッ!
俺の動きに合わせて重いアックスが唸りを上げる。これがヒットすればかなりの打撃になるだろう。体とアックスが円の動きを取り入れて加速していく。
「あら、アキトさんはいつの間にそのような技を?」
「さっき、スキルを習得したんだ」
「すごい、まるで昔から鍛錬に励んでいたような動きですわ」
そうだよなぁ……、はっきり言ってチートスキルだと思う。
「少し手合わせしてみましょうか?」
「オリヴィアさんと?」
「いくら動きを習得したとしても、いきなり実戦というのは危険ですよ。訓練で実際の距離感を確認するのは大切ですわ」
戦闘のプロだったオリヴィアさんが言うのだ、素直に言うことを聞いておこう。
「じゃあ、よろしくお願いします」
「どうぞお好きに撃ちこんできてください」
オリヴィアさんの目がすっと細くなり、片手に持った枝が中断の辺りにあげられた。
「うっ……」
好きに撃ちこんでこいと言われたけど、隙なんてどこにもないじゃないか! さすがは聖戦士のジョブ持ちだけはある……。と、オリヴィアさんの持つ枝の切っ先が僅かに下がった。
わざと隙を作ってくれたのだろう。だけど、俺が持っているのは金属製の鋭いアックスだ。本当に斬りかかって大丈夫か?
「心配はいりません。存分に打ち込んでください」
そこまで言われたらやるしかないか。オリヴィアさんを信じてみよう。俺はアックスを振り上げ、先端が弧を描くように振り下ろした。
「フンスッ!」
聞きなれたお嬢の気合と共にアックスの側面を枝で叩かれた。軌道が逸れてアックスは大地にめり込みそうになる。
だけど「アックスファイター」のスキルは伊達じゃない。俺はそこから足を踏み出し、軌道を円循環させて連撃に持っていく。
「フンッ!」
さすがはお嬢、この連撃も軽く避けるか! だけど、俺のターンはまだ終わらないぞ。
「うりゃあっ!」
側面に回り込み、俺は更なる攻撃を仕掛ける。だけどお嬢はそれもわかっていて、俺が攻撃しやすい位置に敢えて足を運んでくれた。そうやって正しい踏み込み方をレクチャーしてくれているのだ。
楽しい!
それが正直な感想だった。オリヴィアさんは目線、呼吸、動きを使って、俺に最適な足捌きを教えてくれているのだ。
例えるのなら、それはダンスのレッスンを受けているみたいな感覚だった。
二人の呼吸がピタリと合い、動きがシンクロしていく。
「そこまでっ!」
一連の足さばきを終えると、オリヴィアさんは稽古をいったん止めた。
「なかなかのものですわ。こんなスキルをいきなり身につけられるだなんて、キャンパーというスキルは本当に万能なのですね」
そうかもしれないなぁ。
「オリヴィアさん、もう少し稽古をつけてもらってもいいかな? なんだか楽しくなってきちゃって」
お願いするとオリヴィアさんは輝くような笑顔になった。
「こんなことでよければいくらでもお付き合いいたしますわよっ!」
お嬢のドリルがイキイキと跳ねていた。
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