第29話 洞窟探索(2)
玄関前のポーチでブチさんとタマさんがお茶を飲んでいた。この二人はいつものんびりしている。キャンパーとして、この生活態度は見習いたいものだ。
「どうしたアキト、また美味いものでも持って来てくれたかニャ?」
「ちがうよ、タマさん。こんど洞窟へ行くから、詳しい話を訊きに来たんだ」
「洞窟か! あそこに生えているケーブマッシュルームは最高ニャ、ぜひ採ってくるニャ。それからサーベルボアの肉はうまいニャ。強力な魔物だけど命懸けで獲ってくる価値はあるニャ。サーベルボアのソーセージがつくれるニャ! アキトたちにも食べさせてやるから頼むニャ!」
食べることとなるとタマさんは張り切る。洞窟へ行くと聞いて一気にまくし立ててきた。
「わかった、わかった。そういう情報もありがたいけど、どうせなら道順とかも教えてよ」
「道順? そんなものは知らないニャ。タマは賢いから迷わないニャ。迷子猫にはならないニャ」
本当かと疑っていたらブチさんがクックッと笑いを漏らしている。
「よく言うニャ。タマは先日も迷子になったニャ。もう少しで捜索隊が編成されるところだったニャン」
「ニャニャア! あれは違うニャ。タマは迷子にニャってニャい! 散歩をしていただけニャ!」
「わかったから爪を立てるニャ!」
ブチさんはタマさんをなだめてから俺たちに向き合った。
「洞窟は迷いやすいからあまり奥にはいかないことニャよ。入り口から遠くないところでもキノコや魔光石がとれる。どうしても狩りをしたかったら招き猫の先に行くニャ」
「招き猫?」
「洞窟の通路に置いてある目印の像だニャ。ここから先は危険という意味でおいてあるニャ。招き猫には番号が振ってあるから、それを頼りにするといいニャ。番号が大きくなるほど危険度も上がるニャ」
「わかったよ、ブチさん」
現存する番号は七番までだそうだ。
「それから、魔光石を見つけたら持って帰って来るニャン。珍しい食べ物や道具と交換してもらえるニャンよ」
魔光石無色透明、緑、青、赤、黄などがあり、ブルーがかった無色透明がいちばん珍重されるそうだ。
「そんなに簡単に見つかるものなの?」
「ここの洞窟は特別みたいで結構な確率で落ちているニャ。魔素が結晶化しやすいのかもれニャいニャンね」
他所ではそうはならないらしい。だからこそ、こんな絶海の孤島まで人間が船を出してやって来るのだ。
ミニャンたちは食料を得るために魔光石がどこでとれるのかは内緒にしているとのことだった。
「もしサーベルボアの肉が手に入ったら持って来ておくれニャ。ニャンでも好きなものと交換するからニャ」
「うん、見つけたら必ず分けてあげるからね」
タマさんとブチさんが紅茶を入れてくれたので、洞窟のことをいろいろ聞きながらご馳走になった。
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