第4話 キャンパー(3)
固有ジョブ キャンパー(レベル1)
保有ポイント 5
個人スキル 天賦の才:毎日4ポイントをプレゼント
キャンプの申し子:二日間キャンプをすればレベルが上がる。
キャンプアイテムの交換
スキルツリー【キャンパー・ベーシック】カッコ内の数字は習得に必要なポイント
基礎体力向上(1):基礎体力が向上する
↓
ベースキャンプの祝福(2):効果の低い結界。魔物の侵入をわずかに防ぐ。蚊などの有毒害虫の侵入も許さない
↓
キャンプ飯(3):料理の知識が得られる
↓
キャンプ道具の応用(4):斧、山刀、ハンマーから選ぶ。上手に使えるようになる。
↓
免疫力向上(6):ウィルスや病原菌に強い身体に
↓
移動魔法・初歩(10)半径五キロ以内であれば、ベースキャンプに戻れる。
↓
次元収納(小)(12):荷物を次元の狭間に収納できる。40リットル。
なんじゃこりゃ!?
突然のことに声も上げられない。俺はしばらくのあいだ物も言えずに、ひたすら自分のステータスを詳細に見つめた。
なんと言うか……キャンパーとはふざけたジョブだ。そもそもキャンプって仕事なのか? 限りなく趣味の領域にあるものだと思うんだけど……。
それに異世界転移といえば、勇者とか魔法使いなどがスタンダードなジョブだろう? ちょっと変わったところでも錬金術師とか鍛冶師だぞ。しいていえばゲームには遊び人という職業があったけど、キャンパーもそのカテゴリーだろうか? いまのところはわからない。
だが、そんなことを嘆いている場合じゃないか。
まず注目すべきはポイントだ。いま保有しているのは5ポイント。これを利用してスキルを習得していくようだ。スキルはツリー形式になっていて、順番に覚えていかなければならない。
しかもスキルツリーはキャンパー・ベーシックにとどまらない。習得すればツリーはさらに伸びるのだ。これは夢が広がる。
そしてポイントの利用法はそれだけじゃなかった。なんとポイントは自分の欲しいキャンプギアと交換もできるようだ。どれどれ……。
「おおぅ……」
ステータスボードのページをめくった俺は思わず喜びの声をあげてしまった。そこには数十ページにわたりキャンプギアの紹介が並んでいたのだ。まるでギアを特集しているカタログみたいだ。
お、これはずっと欲しかったツインバーナーじゃないか! こっちにはいろいろなテントの特集があるぞ。うはっ、タープやナイフの特集もある! これは見ているだけで楽しくなってくるな。
表示方法はカテゴリーごとじゃなく、交換可能ポイント順の切り替えもできるのか。ずいぶんと便利なステータスボードだ。どれ、切り替えてアイテムを見てみるか。
1ポイントアイテム
食料ガチャ
20リットルポリタンク(飲料水入り)
百円ライター
懐中電灯
軍手
薪
ポケットナイフ小 折り畳み
ヤカン(小)
シェラカップ
鍋
焼き網
ブルーシート
コンパス
コットンTシャツ
下着
歯ブラシ
2ポイントアイテム
食料ガチャ・ゴールド
アウトドアクッカー
パラコード50メートル
釣りセット
Ledソーラーパネル充電式ランタン
折り込みノコギリ
シャツ
パンツ
クーラーボックス(小)保冷剤付き
毛布
3ポイントアイテム
シングルコンロ
エアマット
4ポイントアイテム
ソロテント(防虫ネットつき)
精霊ラジオ
5ポイントアイテム
二人用テント
コット
ワンタッチタープ
アウトドアウォッチ
手斧
これはほんの一部で、ポイント交換できるものはまだまだある。こうしてみると当面生きるには困らないような気もしてくる。こんな場所で生きていくには当たりジョブを引き当てたのかもしれない。
「マチダさん、ご自分のジョブがわかりまして?」
顔を上げるとオリヴィアさんが屈託のない笑顔で俺を見つめていた。面と向かって言うには恥ずかしいが嘘をついても仕方がない。ここは正直に打ち明けてしまおう。
「私はキャンパーのようです」
「キャンパー? 聞いたことのないジョブですわ。どういったものなのですか?」
キャンパーが仕事だなんて、ふざけていると思われないかな? それっぽく言い繕えればいいんだけど……。
「え~、キャンプっていうのは野外活動を楽しもうっていう行為でして……」
「野外活動?」
「外で、料理をしたり宿泊したりして、自然と触れ合うという行為なのです。そういうことをわざわざやる人をキャンパーと言います」
「まあ、野趣に溢れる娯楽ですのね。聞いているだけでワクワクしますわ。私はお外で寝たことなんてございませんもの!」
オリヴィアさんは胸の前で指を組み、感心したような表情で頷いている。
「キャンプというのは雅な遊び人でございますのね」
「そこまで立派なモノじゃ……」
「謙遜なさらなくてもいいのです。遊び人は究めれば賢者になれると聞いたことがございますわ。マチダさんも
この世界にも遊び人っていうジョブがあるのか!
いや、そんなことはどうでもいい。それよりも、聖戦士の笑顔が俺のハートにクリティカルヒットだ!
クッ、かわいいじゃないか、惚れてしまいそうだぜ……。
いやいや、彼女は貴族のお嬢さんで、どこぞの王子へ嫁ぐと言っていたな。下手に恋愛感情を持つべきじゃない。そこら辺のところは弁えておこう……。
「それで、キャンパーはどういったスキルをお持ちなの?」
「まだスキルにポイントは振っていないのです。自分がキャンパーであることも知ったばかりですので……」
「これは失礼しました! そうですわね。ポイントの割り振りは人生を左右するとまで言われていますわ。慎重になさらないといけませんわね。スキルツリーは比較的簡単に手に入りますが、ポイントを得られるのはレベルが上がるときだけですもの」
そうなのか? 俺の場合は『天賦の才』とやらで毎日ポイントが4入るらしい。それに、三日間キャンプをすればレベルが上がるみたいだぞ。これはひょっとしてチートってやつじゃないのか?
「それでは、そろそろ参りましょうか」
「え?」
「他の生存者を探すのですよ」
「ああ、そうでした」
ここが島なのか大陸なのかもわからない。とりあえずは歩いてみるしかなかった。
オリヴィア 1
おかしな漂流者を見つけました。どうやら外国の方のようで「長いトンネルを抜けるとそこは異世界だった」などとおっしゃっています。違う船で漂着されたのかしら? わたくしにはよくわかりません。
言動におぼつかないところがございますが、身なりはきちんとしていらっしゃいますし、礼儀正しい人でもありますので、しばらく行動を共にすることにいたしました。
ジョブをお尋ねしたところキャンパーだということでした。自然の中で生活する自由人のことを指すようです。これまでの暮らしでは一切お目にかかったことのない珍しいジョブです。なんとなく自由な響きがして、ほのかな憧れのようなものを感じました。
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