第2話 反逆時間
爆発の起こったところまで行く途中、誰かがこんなことを言った。
「でも、本当に何が起こったんだろう?」
確かに、いきなり扉開いたら知らない世界にいた。異変が起きてることはあからさまだ。誰もパニックになってないだけでもかなりすごい。
「世にいう、異世界転移ってやつだったり…」
誰かが小さな声で言った。こんな小さな声で話す奴、このクラスには一人しかいない。
薄木来矢。典型的なオタクで、誰とも話さない、友達いない、いつも一人という俺よりもひどい三連コンボを決めている。
「異世界転移?なんだそりゃ」
誰かが聞いた。確かに、異世界転生なら最近よく聞くが、異世界転移となると聞きなじみがない。
「異世界転移っていうのは…」
薄木が一つ間を開けたかと思ったら
「簡単にいうと生きたまんま異世界に行くことって感じなんだけど、なんか特別な扉開いたとか異世界の人に召喚されたとか、理由はいろいろとあるんだけどそんな感じで異世界に行くんだ。異世界転生とは違って死なないで転生できるから僕個人としては異世界転生よりも異世界転移のほうがいいなって思ったり。あ、でも異世界転生もなかなかいいんだよね~」
オタク特有の早口ってやつをかましてきた。本人もそのことに気づいたのか、いきなり顔を赤くして黙り始めた。
するといきなり
ドカーン!
目の前で爆発が起こった。
幸いにもその爆発に巻き込まれた人はいなかったが、もし巻き込まれていたら一撃で死んでただろう。そう思うと背筋がぞっとした。
俺を含めた全員が爆発に驚き動けなくなっていると、爆発で起きた土埃が晴れてきた。そして、その中に一人の影が見えた。
土埃が晴れるにつれ、だんだんと姿があらわになっていった。
腕の筋肉は俺の太ももほど大きく、それを強調するかのようなノースリーブの服を着ている。それを見た瞬間、俺はすべてを察した。
爆発の正体、こいつだ。
なんでそう思ったのかはわからない。でも、俺の体が、こいつは危険だと言っている。
「あ?だれだてめぇら?ここの国のもんじゃないな?」
男が言った。ドスのの効いた声で、威圧的な怖さを感じる。
「まぁ、どうでもいいか。どうせ俺がすべて破壊するしなぁ!」
「は?破壊?どういうことだ?」
池田がけんか腰に聞いた。
「てめぇ、生意気だな」
男が喋ったと同時に、空気がひりついた。おそらく池田が逆鱗にでも触れたんだろう。沸点浅いなあいつ。いや、今はそれどころじゃない。
「じゃあ、お前からやってやる」
男がゆっくりと池田に近づいて行った。
「は?来るなら来いよ。相手してやるぜ?」
池田、本当にお前やめとけ。
何人かが池田に逃げろと言っているが、池田はそんなのは気にも留めてないようだ。
「お?どうした?俺と喧嘩でもすんのか?」
やる気まんまんだ。まぁでも、あいつ運動神経いいし、大丈夫か。
男がとうとう池田の目の前まで来た。
その瞬間
爆破
小声だが、男がそう言ったのが聞こえた。そして俺は、その言葉を聞いた瞬間、体が無意識のうちに動いた。走って池田のところまで行き、池田を押し飛ばした。次の瞬間
ドーン!
爆発が俺の足元、池田がさっきまでいた場所で爆発が起こった。先ほどの寄りは小規模だが、人を吹き飛ばすには十分だった。俺は後ろに吹き飛ばされ、建物の壁に激突した。体中が痛い。あちこちから血が流れている。痛み的に、頭からも流れてるだろう。
「あ?まだ生きてるか。手加減しすぎたか。次で確実に仕留める」
男はゆっくりと、こっちに近づいてきた。一応立てるが、体中が痛いし、そもそも運動苦手な俺が勝てるわけない。おまけに相手は爆発起こす特殊能力的なものを持っているときた。もうおしまいだな。
クラスのみんなは隠れたり、腰を抜かして動けなかったりしている。あんな人の領域超えたようなこと見せられたんだ。当たり前だ。
ああ、俺の人生ここで終わりか。何とも言えない微妙な人生だったな。やりたいことをやれたわけではない。でも、やり残したことがあるわけではない。でも、やっぱり死ぬのは怖いな。
そう思った次の瞬間
俺の流した血が青く燃え始めた。最初は驚いたが、その火が燃え移らないことや、その火が熱くはあるものの、命の危機を感じるほどではなかったことに気づいた。そして、脳内に覚えのない記憶が流れた。それは、何者かと戦ってる俺だった。そして、驚くことにその俺は特別な力を使っていた。そして、それと同時に俺のすべてがこう言ってるような気がした。
戦え
「ったく、なんなんだよこれ。でも、せっかくだ。戦ってやる!」
そう言って俺は炎を振り払った。
「お前、まさか…」
男は驚いたように言った。
「悪いが今の俺は何が起こったのかよくわかってないから聞いてもなんも答えられねぇ。あ、でも一つだけわかることがあるわ
今の俺なら、お前をボコせるってことがな」
脳内の俺が使ってた能力。多分、俺自身が使えるな。
すると、俺の体が途端に軽くなったような気がした。筋力も増した気がする。これなら…
俺は地面を強くけり、男との距離を一気に縮め、拳をぶつけた。すると、男はさっきの俺ぐらいの距離まで吹っ飛んだ。
「くそっ、まさかこんなガキがブラッドだとは…」
「だれがガキだって?」
俺は男の後ろに回り、そういった。速すぎて俺が声を発するまで気づかなかったのだろう。男は驚いた顔をしてこっちを見た。そして、俺はその男の顔に今度は蹴りを入れた。
男はそのまま吹っ飛んだ。そして、気を失ったのだろうか、動かなくなった。
「ふぅ、これで終わりか。なんか、あっけなかったな」
すると、俺のさっきまでの体の軽さや、筋力は消えていった。
「いったい何だったんだあれは?」
そう思ったその時、いきなりめまいがした。頭がくらくらする。爆発くらったのに無理やり動いたからだな。無理しすぎた。
そのまま俺は、気を失った。
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