1-5異世界転移学級日誌

あつかち

第1話 転移

藤桜高校1-5

それは、何も変哲もないクラスだ。


カーンコーンキーンコーン…


四限目終わりを知らせるチャイムが教室内に鳴り響く。先生はそれを合図に授業終わりの挨拶をした。


「やっべ腹減った~。早く食べよう」


「ねぇ、一緒にご飯食べよ」


「おーい、このボスの降臨始まったからマルチ回そうぜ」


クラスのみんなはそう言いながら一人で、または仲間たちとともに昼食を取り始めたり、ゲームを始めたりした。

ただ、どのものも共通してこの教室の中にいる。


「珍しいな。みんな教室でないなんて」


俺は無意識のうちに、小声でそう呟いていた。いつもだったら他クラスの人に会いに行くもの、お手洗いや購買に行くものなどが教室を出るのだが…


俺がそんなしょうもないことを考えてると


「なぁ春人。さっきの授業のノート見せてくれ!」


後ろから誰かが言った。

見てみると、クラスメートの安倍霊夜だった。

スマホゲームが大好きなのだが、やっているゲームが少し変わっていて、ネッ友としかできないのをよく愚痴っている。


「あ、うん。いいよ」


俺はそう言って机の上に開きっぱなしだったノートを霊夜にわたした。

霊夜と俺、暁春人は中学の時からの友人だ。俺が高校であまり周りとしゃべらないのを心配しているのか、霊夜は俺によく声をかけてくれる。あまりそのことについては気にしなくていいのだが、俺も正直クラスで友達といえるのが霊夜ぐらいなので向こうから話しかけてくれるのには感謝している。


「お、ありがとな。じゃあ」


そう言って霊夜は自分の席に戻った。


あ、そういえば部活のことで俺先生に用あるんだった。


そのことを思い出して俺は席を立ち、教室の扉の前に立った。そして、いつものように扉を開けた。


開いたらそこには見慣れた廊下が広がっている…はずだった。

目の前には廊下ではなくきれいに舗装された土と、その上を歩く人々。LEDの明かりではなく太陽の光が俺を照らしていた。


「は?なにこれ?」


俺は思わず声に出した。その言葉を聞いてかクラスメートも外の様子を見るなり


「なんじゃこりゃ?」


「なにごと?」


と驚きと困惑の声を上げ、何人かは俺を押しのけ外に数歩だけ出た。


「な、なんなんだこの建物は?」


「こんなところにこんな建物なかったぞ?」


「だ、誰だお前たちは?」


通行人も俺たちに気づいて驚き、俺たちを見るなり逃げて行った。


「春人、大丈夫か?」


押し飛ばされた俺を心配してか、霊夜が聞いてきた。


「ああ、大丈夫だ。それよりもこれ、なんなんだ?」


「わからん。でも、とんでもないことが起こってるってことだけはわかる」


すると、遠くから


パカラッパカラッパカラッパカラッ


馬のような足音が聞こえてきた。それも、一匹や二匹ではない。十匹は最低でもいるだろうと思われる。その音はだんだんと近づいているように感じた。


「なぁ、霊夜」


「俺も聞こえた。一体、何が来るんだ?」


「とりあえず出るか?」


「そうだな」


そう言って俺と霊夜は外に出た。外には俺たちも入れて、十人もいないだろうか、クラスのみんながいる。あとはみんな、教室から出てない。

外は一見何も変哲のない外の風景だが、そう思ったのは少しの間だけだった。

先ほども見たように地面は土であったり、建物にはどれも煙突がついていたり、どことなく長くはないが時代を感じる風景だった。

馬と思わしき足音はどんどんと大きくなっていく。そして…


「ヒヒーン!」


曲がり角から馬に乗った騎士のような人々が出てきた。その人たちは俺たちを発見するなり、逃げ場をなくすかのように囲ってきた。


「動くな!」


この集団のリーダーだろうか?一人だけ赤いマントを付けた大柄の男が言った。

相手は全員、槍を持っている。それに対してこっちは丸腰。人数有利とはいえ戦ったら負けるな。

俺はそう思い両手を挙げた。みんなも同じことを思ったのか、両手を挙げた。

その後俺たちは両手を後ろで縛られ、何も抵抗できない状況になった。


「よし、ついてこい」


そうリーダーらしき人が言うと、ゆっくりと馬で歩き出した。俺たちも後ろの騎士に押され、ついていった。

しばらく歩くと、目の前にはゲームなどによく出てくる典型的な洋風のお城が現れた。


「でかいな」


小声で霊夜が話しかけてきた。


「そうだな。で、俺たちどうする?」


「それ俺に聞くか?」


「ああ確かに。聞く相手違かったわごめん」


「それはそれでひどい」


そんなことを話していると


「そこ、何話している。黙ってろ」


騎士に注意された。


「すいません」


そう言って俺たちは言葉を交わすのをやめた。


そのまま俺たちは城の中に入り、ある場所まで連れてからた。

そこは、大きなシャンデリアが下がっており、壁のほとんどにステンドグラスの窓が貼り付けられ、床には細長い赤いカーペットが敷かれていた。見た目的に、王様がいる、ゲームとかでよく見るあの部屋だろう。


しばらくすると、足音が聞こえた。そして、見るからに王様ですって恰好をしたおじいさんが現れ、前にある豪華な椅子に座った。


「なに立ってるんだ」


いきなり騎士に上から押され、俺たちは膝をついた。

こっそりとあたりを見渡すと、騎士たちもひざまづいているのが分かった。


「そのものたちが突如現れた人たちか」


王様がゆっくりと、優しく、けど、どこか威厳のある不思議な声で言った。


「は、その通りでございます」


騎士のリーダーが返した。


「そうか。君たち、いったい何者かね?」


王様が言った。やっぱり声は優しいが、どことなく怖さもある、不思議な声だ。


そんなことより何者かって言われても…素直に藤桜高校1-5のものですって言っていい空気ではないしな…

みんなもそう思ってるのだろうか、誰一人として口を開かない。


「私たちは…」


声を出したのは学級委員の牧原紫音だった。


「私たちは学校の教室で昼休みをしていて、ふと誰かが教室の扉を開けた瞬間、あそこにいて、そのあとあなたたちが来ました」


「そうか…」


王様があきらか判断に困っていると、


どーん!


大きな爆発音がした。そしてそのあとすぐに廊下側から足音が聞こえてきた。


「し、失礼します!」


一人の騎士が慌てて中に入ってきた。その騎士は、ぼろぼろの装備を身にまとい、血を流していた。


「我が国に、何者かが襲撃してきました。防衛に回っている小隊もいますが、かなり押されており、この調子だとあと五分ほどでこちらまで来てしまいます!」


「なに?わかった。軍を送る。お前たち、早くいけ!」


「はっ」


そういうと騎士たちは急いで外に行き、王様もどこかに行ってしまった。


「全員行ったな」


「だな」


「早く出ようぜ」


「でも、手結ばれてるけどどうするの?」


そうだ。俺たちは今手を結ばれてるんだ。

俺たちがどうしようか悩んでいると、


「ふっ、どうやらお困りのようだな」


誰かの声がした。そのほうを向くと、入口のほうで壁に寄りかかっている人を見つけた。そいつがだれなのか、それはみんなすぐにわかった。


「忍田!お前結ばれなかったのか?」


うちのクラスの忍田陽炎だった。彼は世にいう中二病ってやつで、さすがにアニメとかで見るほどの奴ではないが、常に包帯を巻いているだけでおかしいのはすぐにわかる。


「ああ、お前たちが騎士たちにつかまってる間、俺はこっそりと抜け出した。そしたら俺の隠れる技術が高かったのだろう。あいつら気づかなくてな。その後あとを追って今ここにいるってわけだ」


「ちょ、とりあえず助けてくれ!」


「ああ、任せろ」


そういうと忍田はぽっけからナイフを取り出して、俺たちの手を縛っている紐を切っていった。いつもはなんかあったとき用にとか言って持っているナイフが少し怖かったが、今はほんとになんかあるときってあるんだなと思わず感心してしまった。


忍田が全員分の紐を切り終わった。


「で、お前たち。これからどうする?」


忍田が聞いた。


「どうするって…どうする?」


「とりあえず、逃げようよ」


「でも、ちょっと戦ってるところ見てみたくない?」


誰かが言った戦い見に行こう発言に、みんな口が止まった。


「お、いいね。せっかくだし行こう」


「いやいやいや、危ないしやめとこう?」


行く派といかない派手別れた。まぁ、当たり前か。


「じゃあ、俺たち行くからお前たちどっか逃げてろよ」


池田裕也が言った。こいつはクラスの男子のやんちゃ組の一人で、頭はそこまでで、授業をまじめに受けないので先生からも嫌われてるが、運動神経がいい。


「え?でもそれじゃあ心配だし…俺も行く」


「私も行く」


結局みんな見に行く組が心配なので、行くことになった。正直、俺だけでも逃げたいな…みんな人良すぎだろふつうおいて逃げるだろ。


そんなことを思いながらお城を俺たちは出て、爆発音のした方に行った。

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