09


     *


 はあ。はあ。

 どこだ。雪ちゃんはどこにいる。

 バスターミナル方向へ、路地や倉庫の裏を覗きながら走っていた。

 曇り空の下を、むこうから知った顔がやって来る。アネゴだ。ボクに気づいた。

「雪子だろ。この先のコンビニで見た。もうじきターミナルに着く。走れ。行って抱きしめろ」

 アネゴの言葉に驚く。

「光治はオンナを見る目がある。お似合いだよ、アンタら」

 ボクはまた駆けだした。

 引っかかるものがあった。後ろ髪を引かれたけど、今は置き去りにした。  

 アネゴは泣いたような目をしていた。

 雪が降り始めていた。

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