07
*
市内には高校が二つある。A高とK高。
ボクはA高だが、一方のK高はあまり評判が良くない。てか、かなり悪い。おかげてA高は、フツーの公立高にもかかわらず、進学校と呼ばれるしまつだ。
K高で番を張るのは坂石という三年生。本校のアネゴ──金子 流美にご執心だが、相手にされない。それでも、あきらめきれずにいるらしい。
その坂石が、あろうことか、ボクの前に立ちふさがっていた。
コートのボタンをはずし両手をポケットに入れ、細く剃った眉を上げてボクを睨む。
「よお。オマエが金子のカレシだって?」
「それは誤解なんだ」
説明しようとするが、話は通じそうにない。
「金子を裏切って
なんと……
女子の口の軽さは驚異だ。もうK高に届いているとは。噂バナシの伝播速度は光速を超える。アインシュタイン真っ青。
「金子に代わってオレが制裁してやる」デカイ躰が迫った。
田舎道に通行人は期待できない。
坂石の単純な思考が読めた。制裁を手土産にアネゴに再アタックってか。くだらねえ――
いきなり腹を殴られた。
ぐうっ、と呻いて膝から崩れる。雪と土が混じるシャーベットの路面に顔から突っ込んだ。
「今日はこれで許してやる。もう金子に近づくなよ」真上から言葉が落ちてくる。「フリンの代償は高いんだ。相手の女もお仕置きされてるぜ、今頃」
驚いて顔を上げた。「なんで? あの子は関係ない。やめろ。あの子の分ならボクを殴れ」
「知らねえなあ。女子部がやってることだし」鼻で笑いながら行ってしまった。
くそ。
泥まみれで起き上がる。
雪ちゃん!
みぞおちの痛みをおさえ、彼女が使うバスターミナルめがけて駆け出した。
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