第3話 面会交流
日曜日の朝。
今日は月に1度の面会交流の日。
1ヶ月ぶりに父親の貴司と会う日だ。
美咲は外出の準備を進めて居間へ行く。
葉子もすでに外出の準備が出来ていた。
面会交流はいつも美咲、葉子、貴司の3人で行う。
時間は1時間程度。
カフェかファミリーレストランでお茶をするのみ。
美咲と葉子は今日の待ち合わせ場所のカフェに、時間より少し早めに到着した。
2人でメニュー表を見ていると、貴司も到着した。
「学校はどうだ?」「勉強は順調か?」「部活はどうだ?」…。
貴司が美咲に聞いてくるのは、いつも大体このような質問だった。
「学校はどうだ?」
貴司が気まずそうに問いかけてきた。
話題が少ない分、質問に答える美咲が長々と話さなければ間が持たなくなる。
美咲はここ1ヶ月以内に学校であった出来事をあれこれ話す。
貴司は黙って聞きながらコーヒーをすすっている。
時々腕組みをして眉間にシワを寄せてうつむいたりもする。
一生懸命に話している美咲に相槌を打ってくれるのは葉子だけだ。
美咲も葉子も、貴司の冷めた態度に負けじと会話を広げる。
“お父さんの態度にはいつも悲しくなる”
美咲はもう昔のように、普通の親子のような会話をする事は出来ないのだと悟っていた。
面会開始から40分程が経過した頃、葉子がトイレに行くため席を外した。
葉子の姿が見えなくなったのを見計らって、貴司は美咲にこう言った。
「どうだ美咲。お前ももう高2なんだし、そろそろお父さんと会うのが嫌なんじゃないのか?…いや、別にお父さんは嫌じゃないんだぞ。ただもし美咲が会いたくないと思っているのなら、無理して会う必要もないんじゃないかと…。もし美咲が会いたくないんだったら、お母さんにちゃんと言いなさい。」
美咲は分かっていた。
“お父さんはもう私達には会いたくないんだ”と。
“自分から「会いたくない」とは言えないから、私に言わせようとしているんだ”と。
美咲の目からは大粒の涙が出てきた。
「お父さんって本当にズルいよね…。」
美咲の言葉を聞いて、貴司はバツの悪そうな表現を浮かべた。
「私、まだお父さんに会いたいよ。」
美咲は泣きながらそう呟いた。
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