第2話 若いチカラ

 私は後藤 守ごとう まもる、前厄に足がかかった男である。

 勤め先では多数の部下を抱えた中間管理職、優秀な部下、活気溢れる職場…そして、課員の円滑な活動を支持するのが私の仕事。

 優秀なものは、ドンドン引き抜かれ、新たな新人が投入される…私の職場はそんな所だ。


 先日も短大卒のお嬢ちゃんが私の部署にやって来た。

 肩まで伸びた緑なす黒髪に大きなメガネ、前髪も顔にかかり何とも冴えない雰囲気の女性である。

 仕事ぶりに対する不満はどの部署でも上がってはいなかったようだが…総じて『コミュニケーションに難あり』という評価が付加されてきていた。


「…仕事…頑張ります。」

 小さな声で辿々しく話すお嬢ちゃん。

 そのままにしておく訳にもいかないので、取り敢えず私の助手になってもらった。


 彼女の名前は結城 萌ゆうき もえ、今年22歳になる入社二年目のヒヨッ子だ。

 さて、業務に従事してもらうと…確かに仕事の出来る娘だった。

(なるほど、コミュ障を何とか出来れば…という事か。)

 というわけで、モエの仕事は『人間関係構築』という事になった。


「んじゃ、これ宜しくね。」

 そう言って私は、課員の日報確認をお願いする事にした。

 ただの思い付きだったのだが…モエは私の思惑の遥か上を走っていく。


 課員の日報から傾向を読み取るのは勿論、日報の文面から問題の成否、課員へのサポート打診など、ケア面の充実も図られていく…。

 まったく、何処がコミュ障なのか理解に苦しむ。

 まぁ、内容が内容だけに、直接本人に話せるわけでもないし、上司が仲介する話ではあるし…どうやら頼んだ仕事を間違えてしまったらしい。


 とりあえず、課員の仕事はより円滑に回るようになり、モエもみんなから慕われる存在になってきた…のだけれど、どうやらモエは人見知りが激しいようで、打ち解けるにはもうしばらくの時間が必要なのかも知れない。

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